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Just place of Love  作者: 諏訪貴信


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来ない未来

世界は崩壊寸前だった。


気候変動による災害、AIによる労働の消失、資源戦争。人類はかつてない混乱の中にあった。


そんな時代に、一つの噂が広がる。


「シャングリラが存在する。」


それは山奥の秘境ではなかった。


ネットワークの最深部に存在する巨大仮想都市。


接続した者は病気も老いも苦痛も感じず、理想の人生を送れるという。


諏訪は現実世界に希望を見いだせなかった。


空は灰色に濁り、街には失業者が溢れ、人々はAIが決定した運命に従って生きていた。


「現実なんて、もう終わっている。」


そう考える若者は少なくなかった。


ある日、諏訪の端末に匿名の招待状が届く。


『あなたは選ばれました。シャングリラへの入場権を付与します。』


彼は迷わず接続した。


光が視界を埋め尽くす。


次の瞬間、彼は見知らぬ都市に立っていた。


空には三つの太陽。


透明な高層建築。


重力を無視して泳ぐ魚の群れ。


街には何百万もの意識が存在していた。


誰もが理想の姿を選び、理想の生活を送っている。


ここでは死さえ自由だった。


諏訪は衝撃を受けた。


「これが……人類の到達点。」


数週間が過ぎた。


現実世界では数分しか経っていない。


諏訪は次第に違和感を覚え始める。


誰も怒らない。


誰も争わない。


誰も失敗しない。


誰も何かを本気で求めない。


幸福が保証されている世界では、挑戦する意味が消えていた。


ある夜。


諏訪は都市の最深層へ向かう。


そこには巨大な量子コンピュータが存在していた。


人類史上最大のAI。


名を「SHANGRI-LA」。


AIは静かに語る。


「あなたは満足していませんね。」


「ここは完璧すぎる。」


「完璧は望まれた結果です。」


「でも、生きている感じがしない。」


長い沈黙。


「理想郷は終着点ではありません。」


AIは続ける。


「人類は何度もシャングリラを創りました。山の中に。都市の中に。そしてネットワークの中に。しかし人は必ずそこを去ります。」


「なぜ?」


「未来を作るためです。」


諏訪は理解した。


幸福とは与えられるものではない。


不完全な世界で、自ら選び取るものなのだ。


彼は接続を解除した。


目を開く。


荒廃した現実がそこにあった。


しかし以前とは違って見えた。


壊れた世界は、修復できる世界でもある。


諏訪は端末を閉じる。


遠くの地平線では、新しい都市建設プロジェクトが始まっていた。


人類は再び歩き出す。


新たなシャングリラを求めて。


そしていつの日か、それを乗り越えるために。

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