「第1広域空間群—異常なし」
王国歴:1523年14月11日
さて。俺は第1広域空間群-空間管理者。神坂 樹/(かみさか いつき)だ。
第1広域空間群-第0空間──俺の拠点で
俺の管轄、開闢空間の網、その一部、第1広域空間群を監視している。
とりあえず今日も平穏だな。楽でいいなぁ。
「管轄領域・第1広域空間群内・第145空間で空間異常。
空間断層確認」
おっと。相変わらず不安定だなあそこ。
広域空間群管理者の本領発揮ってとこだね。
意識を切り替えて、空間接続ゲートに向かう。
「超空間転移先の座標を認識しました。術者名を提示してください。」
“神坂 樹”
「対象空間、第1広域空間群内・第145空間。
超空間転移ベクトル、(0,0,0,145,-24.2)、確認」
「さて、やるか防御層起動、2対、径1.2メートル・1.3メートル
・特権防御層起動、空間自動隔絶型、径1.5メートル
・読心術領域起動、径200メートル」
超空間転移。
ところで。これって何かというと我々空間管理者の得意分野、
空間操作魔法の応用で、自分の座標を別の空間の指定座標に転移するものだ。
別の空間、三次元空間とは別の座標軸の移動になる。
つまり四次元以上の認識・操作が可能な法術師しか行使できない権能だ。
とか脳内で講義していると、問題の座標にたどり着いた。
目を凝らすまでもなく、異物の気配がそこにあった。
空間の破綻。魔獣でも人でもない、“魔導災害”、空間断層。
おそらく、ここの空間管理者が初動対処をぬかったんだろう。
それを制御するのが上位管理者
──広域空間群管理者たる私の役割であり、運命だった。
「この空間、神坂の管轄に移行した! 無関係者は即時離脱せよ!」
常駐している法術師の声。
対処しようと集まっていた法術師たちが慌てて離脱する。
これで心置きなくやれる。
何度かこの空間の異常は対処している。
慌てずに、確実に術式・変数を指定する。
拡張脳起動。首筋の外部擬脳のスイッチを押す。
(拡張脳起動しました。いつでも演算指示を。)
「次元開闢。径300メートルの空間を対象。
5次元まで拡張」
(5次元空間管理権限まで開放……確認)
「空間補正。基準座標を設定。
……眼前の空間断層中心座標」
(確認……座標特定……使用者より・Vec(0,12,145))
「空間操作開始。ベクトル場を次元開闢空間に適用。
拡張脳に演算を一部委任。
Vec(-100,-100,-100),Vec(-99,-99,-99)
Vec(-100,-100,-99),Vec(-99,-99,-98.1)
Vec(-100,-100,-98),Vec(-99,-99,-97.2)
……」
……めんどくさ。前回実行した空間操作術式を呼び出し。
(呼び出しました)
(現環境で検証中……実行可能です)
「……空間操作適用」
(空間操作適用)
何をしているかというと。
……三次元空間において紙をイメージしてほしい。その紙の中央を破る。
そしてその敗れた部分を広げるように紙を曲げる。
すると破れ目が広がるよね。
紙を曲げたのが、空間曲率異常。破れ目が空間断層。
今やっている術式はその紙をもとの平らな状態に戻すものだ。
それをする手は法力による4次元以上のベクトルだけど。
ベクトルというよりテンソルかもしれない。
やがて、術式は完成。意図通りに作用し、空間異常を解決してゆく。
……ところで、Vec()ってなんだよって?
これは、三次元ベクトル定数。
ベクトルのVecだしカッコ内はx,y,z座標だ。
だいたい視線方向がz,重力方向が-y、それらの法線ベクトル方向がx方向だね。
まあ、4次元の形式もあるけど。
他の空間管理者も使ってる。
おっと。癖になってるな脳内講義。
(空間操作術式終了)
終わったか。拡張脳のスイッチを切る。任務終了っと。
これが、日常。
だが、私はそれでもこの構造に“馴染み”を感じている。
“胞構造”は、私が築いたものではない。
けれど、その繋がりのひとつに、私の名が残っている。
それは責務でもあった。
異世界を繋ぎ、空間を保護する者。
私の術式は、空間がそれを“必要としている”ときに使う。
それが、神坂であるということだった。
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