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176「ダンジョン11階層~」

今日からは、いよいよ本格的なダンジョン領域に突入する。

11階層と言っても、出現するのはまだ10階層までの魔物と変わりは無い。

それでも階層を進むにつれ、魔物は強くなって来る。


ダンジョン内の魔獣を獲って食べる穴掘り熊、地下水に潜むスライム、

甲殻虫型魔獣、触手軟体生物型魔獣など魔素を帯びた魔物ばかりだ。

魔族であるタリエル姫とチズシア、ビエルとコロポウネはマナの濃い所は具合が良い。

マナは放射能じゃないから、ノイミラ姫やラザリ、子供達に悪影響は無いんだけど。

例えるならオゾンが濃いと言うのと似た様な事かも。


「本物のダンジョンって宝箱が無いんですね」


「タリエル様、あれはアトラクションですから」


「宝箱があるダンジョンなんて初めて聞きましたよ」


「どんなダンジョンだよ」


ノイミラ姫やラザリ、ポーターの子供達が笑っている。

ダンジョン内で狩った魔物には、時折有用な希少部位や魔石を持つ者がいる。

冒険者は、その希少部位や魔石を持ち帰って換金するのが普通だ。


各種道具や食料の重さという制約があるから、無際限に希少部位や魔石を持てる訳じゃない。

そういう理由で、金持ちの冒険者が先ずいないのが現状だ。

世間では、冒険者は身代(財産)を稼げないと言うのは常識となっている。

そんな現状もありながら、一攫千金を夢見る冒険者が後を絶たない。



暫く魔物を倒しながら進んでいると、

ダンジョンの奥から一人の男が走って逃げてくるのが見えた。


「助けてくれー、魔獣に追われてるんだ、だれかーーー」


ドドドドドドドドドド


男の後から魔獣の集団が追いかけてくる。


トレイン(引き連れ)ですね、なんて迷惑な奴」


多数の魔獣に出くわして、腕の無い冒険者が逃げるのは、よくある話。

中には、後続の冒険者への妨害として、わざと魔獣から逃げながら誘導する奴がいる。

冒険者のマナーとして、トレイン(引き連れ)は禁止されている。

追われている男は、タリエル姫達の方へ逃げて来るのだった。


「しょうがない、助けますか」


タリエル姫達はポーターの少年達をその場に残し、

魔獣たちの群れに斬り込んで行った。


魔獣の総数は50頭以上いるかもしれない。

穴掘り熊が20頭、蜘蛛型魔獣が12匹、甲虫型魔獣が28匹程だろうか。


ノイミラ姫は双剣で、先頭の蜘蛛型魔獣と甲虫型魔獣を切刻んでいく。

左翼のラザリは剣で、穴掘り熊と甲虫型魔獣を、受け持った。

右翼のチズシアは剣で、蜘蛛型魔獣と甲虫型魔獣を剣で倒していく。

後方のタリエル姫は、火炎弾を甲虫型魔獣に浴びせ焼いて行く。


遊撃に廻るビエルは、素手で力の強い穴掘り熊を殴り倒し、引き千切る。

少女のビエルは平然と力で大型の魔獣を圧倒していた。

格闘術の技を繰り出している様子は無い上に、傷一つ負っていない。


ダンジョンの中のような狭い場所では、薙刀のような長い武器は扱い難い。

そんな理由で乱戦ではあるが皆、剣で舞を踊るように戦ったのだった。


「タリエルさんは魔術師だったのか」


「ビエルさんって、なぜあんなに強いんだ?」


ポーターの子供達は、ノイミラ姫達の戦いに魅入っている。

実力的に冒険者ギルドで、上位に入るかもしれない猛者揃いに驚いている。

冒険者と思われた彼女達は、戦士としても十分過ぎるくらい強かった。

本当はアマゾネスの戦士と魔族の王族戦闘侍女が三人揃っているんだけど。


「終ったわ」


怪我をした者はいない様子。

誰も息を切らす様子も無い。


「何なんだよ、あんた達、すげー強いじゃないか」


「あー、あんたは後後」


ノイミラ姫達は倒した魔獣から希少部位を切り取り、食料になりそうな部位を切り取る作業に入っていった。

日数分の食料は用意して来ているが、万一に備えた余剰は無い。

他に食べれる物が有れば、用意した食料は緊急用の予備ストックとして温存出来る。


「これだけ有れば、三日は食べられるかな」


熊の魔獣を解体して肉の冊にした様子。

人数分で三日分だから、結構な量だ。


「あー、改めて礼を言うぜ、俺は『ウザイン』シーフをやっている」


彼の属していたパーティーは、ダンジョンの先で大勢の魔獣に遭遇したらしい。

マッピングや罠解除、偵察の役割を担うウザインは直接戦闘には無理だ。

パーティーが全滅寸前で逃げて来たと言う。


ノイミラ姫達のパーティーに欲しいほどの人物じゃ無さそうに見える。

マッピングならリビガ少年がいるし、罠察知や解除ならタリエル姫にも出来る。


「そうなの、助かって良かったわね、じゃあ」


「「じゃあ」じゃなくてよ、ダンジョンに一人置いて行く気か?」


「一人で帰れば良いじゃない、たいした魔獣出ないし」


「あんた等にはたいした魔獣じゃなくても、俺にはたいした魔獣なんだよ」


「もう一人連れて行ける余裕は無いわ」


困っている所でビエルがアイデアを出した。


「一人で帰れないなら、荷物持ってもらおうよ」


「ええー、俺が荷物担ぎですかい?」


「そうね、嫌なら一人で帰れば良いんだし」


一人で出口まで行けない上に、魔獣から助けてもらった恩があるから、

ウザインは渋々ポーターに廻る事にした。


「オジサンは大人だから重い物持つんだよ」


「ヘイヘイ、しょうがねぇなぁ」


ウザイン一人のために地上まで行かなきゃならない筋合いは無い。

そんな訳で一行は、ダンジョン下層を目指すのだった。

幾度か遭遇する魔獣は全て斬り倒し、希少部位があれば、切り取ってウザインに渡す。


「姐さん達が魔獣を倒す度に、俺の負担が増えるですねぇ」


「後で山分けするから、文句言わないの」


「へいへい」


そんなやり取りをしながら、20階層まで降りて来た。


これまでにフロアの中で、時たま妙に強いのと戦う事があった。

冒険者達の間では、フロアボスと呼ばれている存在がいる。

階層内を徘徊しているから、ゲームのような門番というものではない。

この階層の開けた所に、始めて見る魔物がいる。


「どうやら、あいつはフロアボスかな?」


人型で身長は50cm、小型ではあるが侮れない雰囲気がある。

コロポウネが正体を見破った。


「邪妖精グレムリンだ、アイツには魔法も剣も効かないよ」


「魔法も剣も効かないというのは手強いですね」


「どうすれば……」


「タリエルは気でバリアを張って、バリア内をアタシのテリトリーにする」


実際には光系魔法は効くけど、他の魔法は効果が薄い。

タリエル姫達のパーティーで、光系魔法を習得している者がいないと言うのが本当の所でもある。


コロポウネは妖精だから、邪妖精グレムリンに対して対抗手段が有るようだ。

タリエル姫は両手を伸ばし、天井に向け気を集め、光が皆の上に降り注ぐイメージをする。

半径4mの範囲がコロポウネのテリトリーになれば、邪妖精グレムリンは入ってこれない。

なぜ入れなくなるのか解らないけど、妖精同士の決まり事があるのかも。


「ほー、こんな対処法が有ったんですね」


「バリア内に入れないなら、意念の剣で成敗出来るかもしれませんね」


タリエル姫は掌から真直ぐに気を伸ばし、剣の形にする。

バリアの外で襲い掛かろうと威嚇しているグレムリンを剣で突いてみた。


「ギャギャッ」


「あ、ダメージを与えられる」


剣で突かれたグレムリンは肩と腹に刀傷がつき、痛そうにしている。


「それって、魔法剣なの?」


ポーターの子供達が聞いてくる。


「まあ、そうかもね、知らないけど」


グレムリンの方を振り返ると、そこには姿は既に無かった。

思いもかけない攻撃で傷付き、逃げた様子。


「タリエルさん、すごい、すごいです」


「今度僕達に魔法教えて下さい」


子供達は完全に魅了された様子。


「グレムリンは逃げたようだから、今日はここでキャンプしようか」


ノイミラ姫から言われて気が付いた。

思えば、今日は随分長い時間探索したっけ。

緊張の連続で、疲れていた事に気が回っていなかった。


「そうね、そうしましょう」


とは言え開けた場所でキャンプなんかすると、いつまた魔獣が来るか解らない。

グレムリンは傷付いて逃げただけだ、コロポウネがテリトリーにしてれば大丈夫かな。

タリエル姫は隅の壁に空間を創り、毎度お馴染みの雑魚寝で休む事にした。


「ウザイン、私達に何かしたら、外に追い出すからね」


「姐さん達、それは無いっすよー、もっと信用してほしいっす」

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