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175「サッシリナ公国のダンジョン」

ロクアント王国の研究者達から惜しまれながらも、

タリエル姫達は次の国へと旅に出た。

次に向かうはサッシリナ公国。

ユソット大公が治めるダンジョンのある小国で、ここも同盟国だったりする。


「小さい国って聞いてるけど、何かで囲ってる訳じゃないから解りませんね」


ノイミラ姫が感想を洩らす。

しかし本心は別なものに有るのは、目がキラキラしているから察しが付く。

『小国でもダンジョンがある国』というのがキャッチフレーズになっている。

ダンジョン探索にやってくる冒険者達で、この国は潤っている。


「私達もダンジョンに入りましょうよ」


タリエル姫が自信をつけるにも良い経験になるかも知れない、ノイミラ姫は期待満々だ。

アマゾネスの気性もあるけど、先の国でのタリエル姫の存在感に対抗心が燃えている。

タリエル姫もダンジョンの経験は、タリマのダンジョンで一応は経験済み。

最もタリマのダンジョンは、アトラクションだから同列には語れないが。


「姫様、ダンジョンに入るにしても色々と用意が要りますよ」


「そうだね、傷薬だってコロポウネは無際限に出せないし」


「冒険する日数分の食料だって人数分買わないと」


「ロープや松明、水や寝具と荷物が山盛りですね」


「荷物専門の人を雇わなくちゃ困りそうです」


キャンプ用品一式を担いで行くような物だ。

タリエル姫が創る寝泊り用の空間は、残念ながら保管庫にはならないようだ。

そうなれば、担ぎ屋(ポーター)を探さなくてはならない。


「まずは何処か宿を拠点にしないと」


国境はあやふやだけど、人の住む場所は高い塀に囲われている。

入り口近くに馬屋が営業しているのは、

街に出入りする人々に利便を図るのに合理的な配置だ。

ここでは馬屋で馬車を預ける事が出来るサービスを行っている。


「店主、馬車を預けたいが、いくらだ?」


ラザリが厩の店主と交渉をする。


「一日当たり銀貨5枚になりますです、はい」


ダンジョンに潜るとなれば何日逗留する事になるか判らない。

取敢えず五日分を契約した、超過したら追加金を支払えば良いと言う。

値段が多少高いなとは思うが、中にはダンジョン内で全滅する者もいるらしい。

そうなると、馬屋の方でも預かっていたものを売り払っても赤字になると言う。


馬車を預け、徒歩で拠点となる宿屋を探す。

馬車が通れる幅の道は、大公の館に続く道位しか無いから、

舗装はされているけど、全体的に狭い道しか張り巡らされていない。

そんな道の両側には、露天商が店を出しているのはよくある風景。


荷車を引く商人が通る道の両側に、武器屋・防具屋・酒場、

冒険者ギルド・酒場・宿屋兼食堂兼酒場・衛兵詰め所などの看板が立ち並ぶ。

奥の広場では市場が開かれる模様。


雑貨品を売るワゴンの商人のいる所に宿屋の看板が目に付いた。

『槍の穂先亭』ここを冒険の拠点に決めた。

この宿には、食堂兼酒場が備わっているらしい。

客が少ない時に、街の子供が荷物持ちの仕事を探して屯する。


「この宿も取敢えず二日確保しておきましょう」


今度はチズシアが、宿の女将さんと交渉を始めた。

期限が過ぎても帰らなければ、自動的にチェックアウトと見做されるらしい。


「お姉さん達、ダンジョンに行くお客さんかい?」


一人の少年が声を掛けてきた。


「ああ、そのつもりだ」


「なら、俺達も荷物持ち(ポーター)に雇ってくれないかい?」


五人で五日ダンジョンに潜るとなると、荷物もそれなりに多くなった。

子供達を雇うなら、3~4人必要になりそうだ。

子供達3~4人分の食料も上乗せの計算で揃えなくちゃならない。

彼等の分の食料も、冒険者の負担となるが止むを得ない。

戦闘要員が荷物を持って冒険というのも効率が悪いから雇う事になる。


「君達を雇うといくらだ?」


「一人一日銅貨五枚だよ」


裕福な家の子供は、こんな仕事はしない。

一緒にダンジョンに潜るとなれば、冒険者と呉越同船。

おそらく全滅の危険性というリスクと引き換えに、

生活のために収入を得る必要性に迫られているのだろう。


「よし解った、君達四人を五日雇う事にする」


「ありがとう、お姉さん達、俺の名前は『リビガ』だよ」


「後は道具や食料の買出しに行かなくちゃ」


「お姉さん達に、俺の知ってるお店を紹介するよ」


どうやら、店と提携している様子。


……ちゃっかり店から紹介料をもらってるんだろうな。


何軒か店を回り、ロープ・松明・傷薬、食料を購入した。

それらを用途別に分けた大きなバッグに仕舞って行く。


「こんなに羽振りの良いお客さんは珍しいね」


上客を掴んだと考えているリビガ少年はホクホク顔だ。

金持ちの冒険者なんて、殆どいないだろう事は普通だろう。

二国の姫君が冒険者している方が、変な話なのだから。




買出しが終れば、事前の用意は終了。

後は宿屋に戻り、明日の鋭気を養うのと作戦会議だ。


10階層位まではダンジョンに徴や地図があるらしい。

案内人として、リビガ少年は地図を持っていると言う。

この街で育ち、案内人をしている彼にはマッピングのスキルが有りそうだ。

ダンジョンは蟻の巣のような迷路が、螺旋状に下に続く構造になっている。


ダンジョンの中には、所々冒険者たちによる休憩所があって、

ある程度安全は確保されているとか、休憩や宿泊は其処になるだろう。

時には壁を崩して現れる魔獣が出るらしいから、注意をしなければならない。


「強い魔獣相手に狭い場所じゃ、ドラゴン化出来ないから少々不安です」


ビエルが心配しているけど、ラスボス並みの奴だから何とかなるでしょう。

10階層を越えた辺りから、前人未到の領域に差し掛かる。

そうなると危険度は未知数だ。


「お姉さん達って、みんな戦士ばかりに見えるけど大丈夫?」


リビガ少年から見るとバランスの悪いパーティーに見えた。

ノイミラ姫とチズシアとラザリは、普通に戦士に見える。

しかし、タリエル姫は冒険者姿の一般人なのかよく判らない所。

少女に見えるビエルに至っては、リビガ少年たちの同業かもと思われている。


冒険者姿の皆は、双剣を腰に差しているノイミラ姫を始め剣を差している。

冒険者姿でも、丸腰なのはビエルしかいない。




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翌日名物のダンジョンに向かった。

この国の唯一の観光名所だから、結構賑わっている。

入り口のアーチを潜ると、ちょっとした街並みになっていて、

宿屋・土産物屋、酒場、食堂が軒を連ねている。

ここでも荷物持ち(ポーター)の仕事を探している子供達も多い。


「おおーい、お姐さん達、ここは遠足に来る所じゃないぞ」


冒険者の野次で廻りに笑いが起こる。


「野郎!ふざけんな」


野次を飛ばした冒険者に殴りかかるノイミラ姫。

この行動パターンは、ノルナ姫と一緒だと思うタリエル姫。

一人で乱闘を始めたノイミラ姫は、六人の冒険者達を相手に一歩も引けを取らない。

やがて六人の冒険者達は、ノイミラ姫一人に叩きのめされてしまった。


「お姉さん、強いんですね……」


リビガ少年は絶句する。

力の強い男がいないパーティーだけど、

心配する必要は無さそうに思えた。


見れば少女のビエルは荷物を担ごうとしない。

お客さんの一人だから、強い事を言えないけど聞いてみた。


「君は荷物を担がないの?」


「ビエルが荷物を持つと、いざという時に困るんです」


そういわれても少女のビエルは一端の冒険者には見えない。

今回仕事を請けたのは、不思議な感じがするパーティーだ。

年長のチズシアとラザリは、タリエル姫とノイミラ姫に仕えているように見える。

一緒にいるビエルはよく解らないけど、誰かの子供でも無さそうだし。




入場料を払い、ダンジョンに入ると、ヒンヤリした空気に包まれた。

ダンジョンの入り口は整備され、五階層までは床や壁を整備されている。

灯も燈されているから、たぶん観光客が来れるのは、ここまでなのだろう。

時々、弱い魔物が出現するが、観光局が来客のために用意した魔物だとか。


そんな観光者用の魔物は軽く薙ぎ払いながら、

リビガ少年の指示に従いつつ奥へ進む。

三階層の奥にも土産物屋が営業をしていた。


「商売魂逞しいですね」


「そこのお嬢さん達、一つどうかね?」


箱の中をスプーンで掬うと、魔石の欠片が出てくるとか。

いくらか支払えば、ネックレスに加工してくれると言う。

一般観光客にとって嬉しいかも知れないけど、冒険者にとってはクズだ。

ノイミラ姫は手を振って拒否し、下の階層を目指す。



五階層を過ぎると、床の舗装が無くなり、土の坑道になる。

所々の空間を休憩所として営業している様子が見える。

浅い所の休憩所はロクアント王国の経営で明朗会計だと言う。

更に下の階層の休憩所は冒険者が営業しているから、風紀に問題があるとか。



タリエル姫達は更に下の11階層に向かう。

ここから本格的に、リビガ少年のマッピングスキルが役に立ってくる。

完成したマップは高値で売れるらしい。

何せ命懸けで持ち帰る情報だから、安売りは出来ないのだ。


探検の最中に、コウモリ型の魔獣が飛んで来る事がある。

投網でもなければ梃子摺る相手だ。


パタパタパタ

パタタタ


と数匹飛んで来たコウモリ型の魔獣に、

タリエル姫が腰に着けた箱から、パンパンパンと何かが飛んで迎撃する。

時には箱からウイップがシュバシュバッと飛び出し迎撃する。


「タリエルさん、その箱に何が入ってるんですか?」


リビガ少年の仲間が不思議に思って聞いてみた。


「薬草の妖精よ」


「「「「妖精だって?」」」」


驚く荷物持ち(ポーター)の子供達。

見せてもらうと、冒険者の服を着た人形が入っている。


「妖精って、ただの人形じゃん」


途端に人形は緑色の剣を覗き込んでいる少年の鼻先に突きつけた。


「人形が動いてるー」


「あたしは人形じゃないよ、コロポウネだよ」


「ああ、そうなんだ、よ、宜しくねコロポウネさん」


噂には聞いても、実際に妖精を見るのは初めてだった。

人形のような妖精が、葉っぱの剣を振りかざして偉そうにしている。

コロポウネの葉っぱ剣というのもバカには出来ないらしい。

熊笹の葉だって切れるし、棘だって刺さると痛いのだから、そんな物かと思う事にする。




ダンジョンに入って、もう8時間は経ったろう。

流石に歩き疲れた一行は休む事にした。

とは言え、いつ魔物に襲われるか解らないダンジョンの中。

大概の人は窪みを見つけ、入り口を土魔法で塞ぐらしい。


辺りには窪みが見つからない。

ここでの野営は無理だなと、リビガ少年達は思っていた。


「しょうがないですね」


タリエル姫が土に壁に何かをしていると、空間が出来た。

安全のために少しだけ空間を残して土魔法で入り口を塞いだ。

一行はこの穴の中で一泊する事になる。

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