166「ノルナの修行⑤修行終了」
「キスナエレア、後ノルナ君と共にアストラルボディと気の体の製作の修行だな」
ノーチャ師匠の言葉から推測するに、残る修行はあと二つ。
ノルナは倒れて気を失っていたから、ノーチャを見た事は無い。
キスナエレアの話によれば、倒れたノルナ姫を救ってくれたのだと言う。
「救ってくれたノーチャ師匠って、どんな人だろう」
最後の段階になれば、再びこちらに来てくれるらしい。
キスナエレアにとっての師匠だから、ノルナにとっては師匠の師匠だ。
少年らしいが、何故か今だに顔を見た事が無いと言う。
修行のアストラルボディ創造は、空間に自分の体をイメージ投射する事。
何も無い空間に、体のイメージが、そこに有々と細部に至るまでイメージをする。
何も無い空間に在るそれは、霊と同じ物らしい。
イメージ投射で創られた体をアストラルボディと言う。
それに人格をイメージして投射し、一個の存在となれば、
それはいわゆる人工霊という者になる。
この修行の要点は、タルパを創って終わりにはならない。
アストラルボディに、自分の意識体が移行するまでやる。
移行出来れば、自分は幽霊になっている。
霊体を持たないと、精神体は存在が安定せず、やがて霧散してしまうのだとか。
幽体を纏ったまま体外離脱する方法も有るが、先に幽体を創っておけば、気の型枠になると言う。
更に煉って、物質化した気の体に潜り込んで、第二の体を会得する。
物質化した気の体を創るには、イメージ投射して創る事になる。
そこまで行けば、一連の修行は終わりを告げる。
「やっと修行の終わりが見えて来ましたね」
「その通りです、ノルナ姫様、一緒に頑張りましょう」
「それにしても物を創るほど体の創造が遅れる気がするんですが…」
「そりゃぁ材料をそっちに使っちゃうからですよ」
やがて体を創る気も貯まり、十分に凝縮され崩れなくなって来た。
「もうそろそろでしょうか、最終段階に行きましょう」
「はい、お願いしますキスナエレア師匠」
行の最後を飾る段階を見るために、ニホバル王子達も同席する事になった。
「ノルナ、おめでとう、やり遂げたわね、キスナエレアも凄いです」
「ありがとうルリア」
キスナエレアは最終段階に臨むために、師匠のノーチャを呼んだ。
部屋の中にポータルが開き、ノーチャとシレラ達がやって来た。
少年姿の仙人ノーチャは、顔を覆う布で顔や表情が見えない。
不思議な人物だった。
「あー、シレラ様達も来てくれた」
「おめでとうノルナ、いよいよだね」
「ノルナ、キスナエレア、最後にもう一度覚悟を確認する」
ノーチャが最後の選択を聞いてきた。
ノルナ姫とキスナエレアが仙人になるという事は、生物種から精霊種に変わるという事。
生物としてのあらゆる制約から外れる。
それは寿命が無くなる事でもあり、性別という制約からも外れるという事。
逆に異生物・仙人同士でも子供は、作れなくなるという事でもある。
生物としての肉体とは切り離れる事だから。
「誰かと結婚をして結ばれる必要性すら無くなるが、それで良いか?」
その言葉に凍りつく一同。
「ニホバル兄様…」
「兄ちゃん……。ノルナがどうなろうと、ルリアは仲間だと思っているよ」
「ノルナが寿命の問題を克服する為にここまで頑張ったんだ、俺は応援するよ」
「ありがとう、みんな、やっぱり友達って良いな。 ノーチャ大師匠、お願いします」
「私も同じ思いです、お願いします師匠」
床に横たわったノルナ姫とキスナエレアは、瞑想に入り、肉体を脱して第二の肉体に移行した。
第二の体を獲得するには、元の体は邪魔になる。
元の体との繋がりを持つ霊的な紐をノーチャは切った。
元の体から、繋がりが切れたノルナとキスナエレアは、第二の体に繋がり融合する。
二人の新たな仙人が、この瞬間誕生した。
元の体との繋がりが切れたノルナ姫とキスナエレアは死んだと言えるだろうか。
気の体を持ち、物質世界や霊界両方の世界に二人は存在しているのだから。
性別が無いという事は、いつでもどちらの形態を取る事が可能でもある。
ノルナ姫とキスナエレアは、修行終了の証として、
ノーチャとシレラ達からギフトを授かった。
ノーチャからは、更なる秘術獲得の許可と、正式な仙人の称号を。
シレラ達からは、時空間を越える権能の一部を。
ピルアーナからは、精霊使いに隷属されないようにプロテクトを掛けてもらった。
まだ学びたいなら、何時でも来るようにという言葉も賜った。
ノルナ姫は尊敬するシレラ達から、祝ってもらえた事がこの上なく嬉しかった。
「ノルナとキスナエレアはとうとう仙人になったのか、お祝いせねばの」
報告を聞いたロンオロス王は大々的に二人を祝う事にした。
ノルナの母、ウィラクバリラ女王にも連絡が出されたのだった。




