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165「ノルナの修行④煉気」

『気』は集めて凝縮させると、物質になって行くらしい。

物質になった『気』は霧散させる事も出来る。

キスナエレアが言うには、この行程が特に大事だと言う。


不老不死になる体は凝縮させた『気』で創られていると説明された。

凝縮された気の体を創り上げるのは、先の修行で行ったイメージ投射で形を造る。

自分の不老不死の体を、自分の意志の力でデザインして創りだすのだ。

ここまでの説明で、ノルナ姫の理解は一本の筋で繋がった。


「そうか、そうだったんだ、頑張るぞ」


今までの修行で、それは在るのかどうか、という議論は不要だった。

説明されたものは在る、体感で解る。

だから、それをどうするかが、ノルナ姫の決める事。

とにかく物質化するまで煉られた『気』を創らなければならない。




呼吸の修行を、黙々と続けるノルナ姫には、成果も伴い始めるのだった。

やがてキスナエレアがやった様に、掌の上に物を創り出す事が出来るようになった。


「師匠、師匠が母上様にコーヒーを出したように、私にも出来るようになった」


「おめでとう御座います、ノルナ姫様、後は体を創る修行だけですね」


キスナエレアも、そこまでは行っていないから、一緒に修行をしてくれると言う。


体を創るは良いが、自分の顔を忘れたら問題かな。

自分で創る物なら、どんな物でも創れる。

母上ウィラクバリラ並みのグラマスな美人だって可能だ。


……それを繰り返して、自分の顔を忘れて顔が変わっても、ニホバル達が気付いてくれるかな。


そう考えたノルナ姫は、キスナエレアと一緒に自分のデスマスクを作る事にした。

オリジナルの元の顔さえ石膏で残しておけば、それがモデルになる。

普段、鏡で見る自分の顔を克明に覚えていられる自信も無かったから。



今日も今日とて修行に励むノルナ姫。

煉りに煉った気は、体内で密度を増して行く。

熱かった気の塊は、白光するドロドロと流動する物になっている。


空気だって高い圧力を掛けて凝縮すると、発熱を帯びて液化する。

煉気という修行はそういう様相に似ているかもしれない。


丹田に形となり始める『気』

自分の第二の体を創るには、まだ量が足りない。

もっと、もっと、もっと、もっとだ。

ノルナ姫はひたすらに煉気の行を続けている。


「あ」


一瞬の事だった。

尾骶骨に回した『気』が背骨に沿って螺旋状に回転しながら上に昇って行った。

熱を持った気だから、まるで炎の蛇が背骨を回転しながら駆け昇った感じだった。

クンダリニーが覚醒してしまった。


クンダリニーが覚醒すると、メンタルも揺す振られ心身共にダメージが来る。

そのまま頭頂から上に抜ければ、問題は無いけど、抜けない場合大変だ。


「あ、あ、あ、ああああー」


床で身悶えて転げ回ったノルナ姫は気を失ってしまった。


「た、大変です!」


驚いたキスナエレアは師匠のノーチャを呼んだ。

部屋の中にポータルが開き、シレラ達と共にノーチャはすぐに来た。


「ふむ、クンダリニーが抜けなかった様だな」


「ノーチャ師匠、どうしたら……」


「心配無い、抜けるようにしてやろう」


ノーチャはノルナの頭に手を当てて、何かを始めた。

しばらくすると、ノルナ姫の頭頂から光が溢れ、全身を包み込んで行く。


「ついでにサードアイも開眼しておくか…」


眉間に指を当てて気を送り込んだ。


「これで良し、キスナエレア、念の為に君にも施術をしておこう」


「ありがとう御座います、ノーチャ師匠」



「ノルナ姫様もキスナエレアさんも、私の様な存在になるんですね」


ピルアーナが驚き混じりに感心をしている。

修行で精霊になった訳じゃないピルアーナにとって、精霊化する人間を初めて見た。


「いずれ精霊の術を教えてあげても良いんじゃない?」


シレラが提案した、シレラとしても、時空間を越える能力の一部を与えても良いかもと考えている。

どちらにしても今すぐじゃないけど、修行成就のお祝いとして神のギフトを考えていた。



部屋の中には、ノルナが修行の一環で粘土で造ろうとしていた、チャンディーの像らしき物が有る。

素人の粘土細工で上手な物ではないが、ノルナ姫のチャンディーに対する尊敬や愛の気持ちが窺い知れる。

シレラはその気持ちに応えてギフトを贈ろうと決心をした。


……妹分のようなものか。



「キスナエレア、後ノルナ君と共にアストラルボディーと気の体の製作の修行だな」


「はい、師匠様、精一杯頑張ります」


「チェンジの時期になったら、また我等が来る事にしよう」


「ありがとう御座います」






「う~んんん……」


ノルナが気絶から立ち直って、ベッドから起き上がったのは夕方だった。

ノーチャやシレラ達はすでに帰った後だった。


「大丈夫ですか? ノルナ姫様」


「あれ? 私どうして?……」


どうやら体も命も異常は無い様子。

キスナエレアの説明で、ノルナ姫はクンダリニーショックで倒れたと聞かされた。

あと三日ほど養生したら、修行を再開すると告げられる。

ノルナ姫の治療にノーチャやシレラ達が駆けつけてくれたと言う。


「え、シレラ様たちが!」


「ノルナ姫様の修行が終ったら、ご褒美を頂けるそうですよ」


その一言でノルナ姫は嬉しくなって、思わず涙が流れてしまった。


「あれ? 何で涙が?」



しばらくして、ノルナ姫が起き上がれたと聞いたニホバル王子・ルリア姫・タリエル姫がやってきた。


「ノルナ、大丈夫なの?」心配するルリア。


「ああ、良かったです、大事無くて」安堵するタリエル。


「ノルナは凄いな、それほどの修行をしてたなんて」褒めるニホバル。


「ああ、ごめんなみんな、心配掛けて」

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