ミスティア
ハロー、ルーナちゃん。お目覚めかしら。
此処ではない言葉で、おはようって意味なんだよ。
どうして?こんな事するか?
すごいでしょ、言わなくてもわかるのよ、私は。
前世でもこの世界でも、人の顔色伺って生きてきたからね。……情けないでしょ。
だから、猿轡され身動きされない人の言いたい事もわかるの。ふふっ。話がそれたね。君が私を裏切ったからよ。
ねぇ、ルーナちゃん。
どうして、やつらに私の居場所を知らせたの?
貴女に話したよね。ぼかしてたけど彼等の事を、話したよね。奴等の無関心ぶりを、さ。家族といえない連中だったと。
溺死しかけても、見舞いに来ないお忙しい父親に、ドレスの心配をするお美しいお母様。で、私の存在自体を忘れてた異母兄様。
これで家族?冗談でしょ?血の繋がった赤の他人だよ。
まあ、あれでリィア王室だと、よくわかったわね。そういうゴシップ好きだとしても、どうやって…………。別にいいわ。
あいつらは、家族じゃない。父じゃない母じゃない。あいつらにとっても、私は不要物なのよ。
なのに、あれはなに?
ごめんなさいね。
お父様やお母様のことを嫌うのは、分かる。
でも、そのせいで親子の仲まで壊すことはない、と思うわ。
苦しみを全部、取り去ってあげたかったの。
フローリアの力に、なってあげたかっただけなんだ。
フローリアが両親と仲直りできれば、それが一番いい、と思って知らせたの。
取り巻き共を侍らして、まあご立派な事を言うよね。
侍らす事に文句を、つけてるわけじゃないの。正しい事を仰るなら、あんなに大勢引き連れる必要ないわ。
口では私の為と言いつつわかってたのよね。売り飛ばしたという事に。
……違う?
何が違うのよ。
あんたが密告したおかげで、私…居場所をなくしたのよ!
12歳の時から、努力して、掴んだ居場所をっ!どれだけ大変かとわかるの?身寄りがない人間が、子供が、女が、どんな扱いを受けるか!後ろ楯がないのがどれだけ大変かわかる?そんな人間が、学園都市に入るのがどれだけ大変かわかる?ハター山脈に登ったほうが、よっぽど楽よ。まあ、半分わかってて王宮を逃げ出した私も私よ。でもっあそこにいたら、私は、私は、私はね…………………殺されてた。わかる?10歳満たない子供にでさえ、理解せざるえない扱いを私は受けていたの……………。あそこから抜け出して、やっと、安心して、穏やかに暮らしていたのに、なのに、お前はあっ
あ、なんでもないで~す。ふざけすぎたんです~、ミスちゃんと~。すみませ~ん。
失敗、失敗。
覗かれたから、幻影魔法が見破れちゃう。…………興奮し過ぎたわね
。
あはは、残念だったね。あそこで全力で暴れたら、騎士様達も不信に思って踏み込んで来たのに。
本当に、ね。最期の脱出の機会だったのに。
どう?気付かない?離れて待機する騎士に、聞こえる大声で騒いでるのに、確認すらしない。馬車の中にいる王女の様子を伺う事すら、しない。暴力を振るわれているかもしれない。なのに、扉を開けて様子をうかがうこともしない。
おざなりよね、すっごく。
6年も行方不明の王女様が見つかったのに、お付きの者は貴女だけ!ご学友の貴女だけ。そう、下手したら逃がしてしまう貴女だけ。
……………………リィア国王の一人娘に対する扱いじゃないわ。
空気が澱んでるわね。…………窓を開けましょう。
ほら、見て~。綺麗よね、雪を被ったウゴール山脈。
ルーナちゃんに、質問です。リィア王国付近にウゴール山脈はあるでしょうか。
あ、わからない?迷子になっちゃうの~は地だったのね。
ふぅ、ホレ帝国に向かってるのよ。
なんでリィア王国でなくホレ帝国に向かってるか?
決まってるでしょ~。人身御供だよ。
覚えてる?アルフォンス王子様。去年の嵐の留学生!
目が会えば俺に惚れている。惚れない女は終わってる。存在する価値はない。声を掛けてやっているのに、地味な女の分際で応えないのは不敬罪。あれこれそれで、動けないのは頭が悪いから。叩いたのは、英気を与えてやってるからだ。
モラハラ、パワハワの塊だよね。あ、わからないか。わからないよね、そんな価値観、この世界ないもの。
凄かったわね。上級生下級生のクラス、ひとっこひとり誰もいない。がらがら。長期休暇でもないのに、足音が廊下に響く響く。それに、気づいてた?使用人の姿を見かけなくなった事に。使用人代わりに動いてた、あの自動人形に気を取られてたのかしら。
ありがとう、あれ私の自信作なんだよ。
当然よね。暴言暴力、挙げ句に抱いてやる?愛人志望の使用人すら逃げだすってどうなの。
わかってて、うろついてたバカ女は一人はいたけど。ね?聞きたくて仕方なかったのよ。
取り巻き共も注意してたのに、うろちょろしてたのは、アルフォンス王子の気を引いて妃になりたかったの?
違うの?
訳がわからないわ。
……………………どうでもいいけど。
アルフォンス様がリィア王国に留学したのよ。あれよね、完璧なたらい回し。本人は帝国の威光を知らしめる為とか、今後の為と思い込んでたみたいだけどね。寵愛深い側室の子だから、無下に扱えなかったーーというところでしょう。
案の定、銀の妖精姫にぞっこん。「俺の側室にしてやってもいいぞ」だそうよ。
数々の騒動やらかして、強制退去!帝国に対して、強気に追い返したのよ!リィア国王やるわね~。
まあ実の娘以上に可愛がっている銀の妖精姫のためだもの、強気で頑張るわよね。他にも、10歳下の娘に夢中の異母兄様に、隣国ルドース王国の王弟君。失われた古代精霊術師の末裔に、後は理不尽に呪われて後継者の地位を奪われたーー誰だっけ?
まあ、いいわ。
とにかく銀の妖精姫を守る男たちが、頑張ってアルフォンス様を帝国に追い返してしまったの。お姫様を守る一流の男達!素敵‼
アルフォンス様は激怒されたけど、恐ろしい形相の異母兄様にお漏らししながら逃げ帰ったのですって!
平民の酒場にさえその噂が流たとい事は、漏らしたのは事実ね。
でね、アルフォンス様は泣き付いたわけ。皇帝陛下と実母に、大の男が泣き付いたの。情けないわ。
で、ご想像通り、銀の妖精姫を差し出せとなったわけ。
みんな大好き!銀の妖精姫を差し出す訳には行かない。けど、どうしたらいいのか。頭を付き合わせて悩んでるとこに、ルーナちゃんが福音をもたらしたわけね。
キチガイヒステリーババアの娘とはいえ、母親譲りの美貌ならアルフォンス王子様も納得すると思ったんでしょ。会ったこともないのに、なんでわかるのか不思議~。ろくに顔を会わせようとしなかったのに、その根拠はなんなのかしら。
違ってたらどうしようと、考えないのね。
30歳も年下の幼女に嫉妬して、暗殺者は送るキチガイヒステリーババアの娘とはいえ、自分の娘にあんまりな仕打ちじゃない?
違う?
よく知ってるわね。有名な話だし、社交界の定番話だから、ルーナちゃんでも知ってるか。
ああ、噂にあるようかな恋人と引き裂かれ~はないわよ。前王妃の後釜に自分から、嬉々として座ったから。
シチュエーションよ、シチュエーション。意味がわからないわよね、雰囲気に酔ってるだけなのよ。
王妃になってからも、その引き裂かれた恋人とイチャイチャしてるもの。馬鹿みたい。
そろそろ国境ね。ホレ帝国に入国するわ。
はい、ルーナちゃん。プレゼント。可愛いネックレスだよぉ。なんとびっくり!これで後宮にはいる前の色んなチェックも簡単パス。結界内部でも、幻影魔法も持続されま~す。
更に更に、スペシャルアフターでキチガイヒステリーババアの容姿にそっくりにしてます。美貌だけは近隣諸国一だから、後宮でも見下されませんっ。良かったね。
でも、あんまりいい魔法石が買えなかったから、二週間しか持たないの。ここから、帝都まで十日ぐらいかな。
アルフォンス王子様、我慢強さが0だから………………………その日のうちに妃になれるわ。
えぇ!?なんでルーナちゃん、暴れるの?妃になりたくない?
あ~、もしかして異母兄様の妃になりたかったの!?
確実になれるとしたら、アルフォンス王子様のほうが確実だよ。
そうそう、ホレ帝国の後宮では、側室は殺しあうらしいよ。正確には、わざと目の前で別の相手褒めて,
嫉妬心とか虚栄心とかを煽って、競わせるらしいけど。それでね、どっちが勝つか他の側室と賭けをするんだって。
悪趣味だよね。
だから、ねっ。大丈夫だよ。幻影魔法が解けても、ルーナは、このまま後宮に入る事になるね。可愛いし。
頑張ってね、ふふっ。
おー、早い早い。
普通、こういう引き継ぎでもっと形式ばってないかしら。なにあれ、まるで家畜の運搬じゃない。わかっていたけれど、本当に酷いわ。
銀の妖精姫に執心だから、国境入ってすぐに、転送魔法で帝都行きのようね。ルーナちゃん、ごめんね。今日にはお妃様になれるみたい。嘘ついちゃった
さて、学園都市以外に輸出した人形達が、そろそろ動きだす頃かしら。
キチガイヒステリーババアの娘とはいえ、本人の意思を無視して生け贄にしようとしたなんて…………………世間体悪すぎよね。
ルーナちゃん、秘密をべらべら男に喋るのは止めたほうがいいよ。それが、あんたの敗因だったのよ。聞こえないけどねぇ。
『しても、男好きの血は争えないな』
『教養はあっても、歪んだ性根は母親ゆずりですか』
『僻むしか能がないのは、母親そっくりだな』
空気扱いしてきた取り巻き達が吠えるから、何事かと思えば…………。
実際のところ、阿呆共がこぼさなければ危なかったわ。大急ぎで、準備を整えて用意して。
…………………やりすぎかもしれない。
何が、やりすぎ?
相手は国家。一人の少女に、何万もの味方。こちらは、たった数人しかいない。
不公平よね?
愛されない存在だから、何もしてもいい?必要じゃないから、捨ててもいい?
ふざけるなよ?
何が、病弱な王女が、親友の銀の妖精姫身代わりに、後宮に行った、よっ!
ふざけやがって。
異母兄様に、隣国ルドース王国の王弟君?失われた古代精霊術師の末裔さん?後継者の地位を追われた魔術師名家の跡取り君。
それに、リィア国王様。
貴方たちの会話を録音させていただきました。平民はともかく、諸外国の貴族たちは、貴方達と面識があり、声も聴いて覚えている。無論、銀の妖精姫のことも知っているわ。
彼らだって、貴方達の方針に大賛成でしょうね。
あんな女の娘よりも、愛らしく薄汚れた乞食にも優しく、その天才ぶりをひけらかすわけでもなく、知性に富んだ話術で周囲を楽しませる美少女のほうがいいでしょうね。
ええ、誰だってそう、間違ってはいないわ。…………………ただ、一点において。
私は人間だということよ。踏みにじられていい弱いゴミではなく、人間なの。貴方達は、永遠に理解できないでしょうが。
貴方達の会話を聞いた平民はどう思うかしら、商人たちは?地方の貴族たちは?銀の妖精姫と直接触れ合う機会が多い、王都の平民や商人や貴族たちは?
自動人形界の革命児、フローリアとは私のこと。
利益を度外視した低価格の自動人形を、平民にも手が届く価格にした効果をじっくり見させてもらうわ。
リィア王国はどうなるかなー?
フローリア
語り部。転生前も現世も、コミュ障。乙女ゲームどころか、まともに遊んだこともないので「悪役令嬢に転生~」や「逆ハー乙女ゲーム」の知識すらない。したがって、自称親友ルーナの行為が意味不明すぎて不気味に感じている。
ルーナ
ゲーム廃人。憧れの乙女ゲームに転生して、狂喜する。フローリアが別の乙女ゲームの悪役令嬢と知り、攻略対象に近づくために、彼女の情報をリィア王国に密告するが―
他にも、ルーナの取り巻きの設定とかありますが、後で書き足します。上記だけでも、二週間以上かかっています。
意味不明な部分もありますが、筆者は豆腐メンタルなので、優しく指摘をお願いいたします。