表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンパペット01  作者: 凍結・滑夜
1-C 水腑の邪竜
18/27

対クラフバインド戦(前編)


 祐一の目の前に墜落したクラフバインド。

『クキャァァッ!』

 どこから声を出しているのか、やたら甲高い奇声が響かせ、ゼリー状の胴体をぶよぶよと揺らめかせる。

(なんなんだこいつ……。手持ちの武器じゃ、通用しそうにない)

 ブレアがいれば、何か役に立つアドバイスをくれたのかも知れないが、


『怯むな、一斉にかかれ!』

 誰かが叫ぶ声、前の邪竜戦闘に参加していたらしい一団が、率先して突っ込んでいく。

 彼らは、敵の大きさに戸惑う事なく、ただ胴体の破壊を狙う。

 だが、クラフバインドの胴体を覆う皮膚はやたら分厚いらしく、剣や槍を叩き付けるだけでは貫けない。

(あんなんで本当に効果あるのか? もっと、弱点とかを探したほうがいいんじゃ……)

 とにかく祐一も攻撃に加わろうと思って、前に出ようとした時、クラフバインドが何かを呼び寄せるように叫ぶ。

『クキャァァッ! クキャッ、クキャァァッ!』

 呼ばれたのは周囲を漂っていた小クラゲ。

 小さいと言えども、祐一の巨大甲冑の胴体ぐらいの大きさはある。

 小クラゲ達は、無防備にクラフバインドを攻撃し続ける騎士団の背中に、音も無く忍び寄ろうとしている。

「おまえらの相手は、こっちだ!」

 祐一は、小クラゲの一体に向けて剣を叩き付けた。

 小クラゲは成すすべもなく破裂する。弱い。

 状況に取り残されていた騎士団の面々も、小クラゲの撃破に参加し始める。

 だが、小クラゲは倒しても倒しても、次から次へと現れる。まるでどこかから湧いてくるかのように。

(最初に見た時より増えてる。どこだ? どこから出てきている?)

 祐一は剣を振り回しながら出所を探す。すぐに解った。

「……って、デカクラゲの上からかよ!」

 クラフバインドの頭頂から、ポコポコと小クラゲが湧き出しているのだ。

 小クラゲの大きさは、クラフバインドの十分の一以下、体積比は千分の一。逆に言えば、千匹ぐらいは吐き出せるという事になる。

 倒してもきりがないはずだ。

「くそっ、どうすれば……」

 真上から狙ってやってきた小クラゲを、突き上げて吹き飛ばしながら考える。

 何かないか、何か。


 騎士団の巨大甲冑が何体か、小クラゲ達に掴まった。

 小クラゲは、そのままふよふよと上昇していく。

『ちょっ、誰か助けろぉっ!』

 叫んで暴れているが、こうなってしまってはどうする事もできない。

 その巨大甲冑は、数十メートルの高さまでリフトアップされたあと、投下された。

 水柱を立てて川に落ちる。

 戦線復帰は難しそうだ。もしかしたら、中の人間は死んだかもしれない。


 いつの間にか、辺りの空は小クラゲだらけになっていた。

 一体を倒している間に二体が増える。

 二体を倒している間に、仲間が一人か二人減る。

(なんだよこれ、本体だけでも手に負えないって言うのに……)

 防御力だけの塊が、恐ろしい敵となっている。

 完全に、追い詰められていた。

 とにかく、自分の真上にやってくる小クラゲを叩き潰しながら、勝機をうかがうしかない。 

 だが、本当に勝機があるのか? それとも千体のクラゲを吐き終わるまで待つのか。

 その間に、騎士団にはどれだけの被害が出る?

「……くっ」

 このまま続ければ、普通に負ける。祐一にはそれが解った。

 祐一は剣を鞘に納めた。

『おい、祐一、何をしている、戦え!』

 騎士団の誰かが叫んでいるが、祐一は両手を上に上げた。

 そして、すぐ近くまで降りて来ていた小クラゲを掴む。

『ピギャッ?』

 小クラゲは変な悲鳴を上げて、バタバタと触手を振り回しながら上昇していく。

 だが祐一はそれを離さない。むしろ、逃がすまいと全力で掴む。


 すぐに川面が離れ、小クラゲの群れが足の下に行き、それでもまだまだ上昇し続ける。

 祐一は両足をクラフバインドの側に突き出す。

 ぶら下がっているので、重心がそれて体がくの字に折れ曲がる。

「んぬぬぬっ」

 見当違いだったか、と思い始めた頃、掴まっていた小クラゲが前にゆらゆらと動き出す。成功だ。

 小クラゲのおかげで、クラフバインドの真上までやってこれた。


 祐一は、小クラゲから右手を離し、剣を抜いた。

『ピギュィ?』

「エレベーターご苦労さん」

 頭上のクラゲを剣で貫いてから、祐一は真下のクラフバインドへと飛び降りる。

 着地の衝撃で、クラフバインドが揺れた。

『グキュァァァァァァァァァッ!』

 祐一の立っている場所が重みで沈み込む。

 下の方から、騎士団の悲鳴が聞こえてきたような気がしたが、それにはかまわず、祐一は剣をピッケルのように使いながら、クラフバインドの上を歩く。

 目指すは小クラゲを吐き出し続ける穴。そこに剣を突っ込む。

『グキャァァァッ』

 青いゼリー状の液体が噴出した。

 クラフバインドは全身を激しく痙攣させ、祐一は跳ね飛ばされる。

「うおぉっ?」

 殆ど転がり落ちるようにして、祐一は下の方まで押し戻され、水の中に落ちた。

(ちっ、もう一回か?)

 どうにか立ち上がる祐一の前で、クラフバインドはズルズルと上流の方へと転がるように動く。

 逃げる気か? と思っていると、今まで下だった面が祐一達の方に向いた。


『クキャァァァァァァッ!』

 クラゲの触手が生えた底面。

 数十本の長い腕が、水面下から持ち上がってくる。

 触手とは言うが、一本一本の太さは二メートル近くある。

「……第二形態、だと?」 

『クキャァァァァァァッ!』

 ブオン!

 腕がうなりを上げて振り下ろされる。殴られた騎士団の巨大甲冑が数体、軽々と吹っ飛ばされた。

(何だその怪力……)

 祐一はドン引きしつつも、前に出る。

 真上から振り下ろされる触手を、剣で受け止めた。

 物凄い衝撃で思わず膝をつく。

「くっ……」

 そこに襲い掛かってくる右からの触手。

 祐一はもたまらず吹っ飛ばされ、倒れた。

 そして止めを刺すように振り下ろされる三本目の触手が……。

『させるかぁ!』

 騎士団の一人が駆け寄ってきて、触手を防御する。その巨大甲冑の腕の辺りから、べきっ、と破壊音が響いた。

「助かった」

 祐一はすばやく起き上がり、その触手を剣で貫く。

 触手は真っ二つに裂けた。クラフバインドは負けじと触手を振り上げるが、遠心力で先端がどこかに飛んでいく。

『キュァ?』

 元の半分ほどの長さになってしまった触手は、悲しそうに水中に消える。

『……切断できるぞ! 全部真っ二つにしてしまえ!』


 騎士団が一斉に飛び掛る。

 触手が来にくい左右から回り込んで、一本ずつ、確実に潰しにかかる。

 が、その戦い方では触手を受け止める役のダメージが大きい。このまま消耗戦を仕掛けていいものか。

(それに、アレって、弱点だよな)

 クラゲの口は、体の下側、触手に囲まれた場所にあるという。

 クラフバインドの場合、体の上側から小クラゲを産んでいたので、総排泄口もそっちかと思ったのだが、下には下で、何か穴のような物がある。

 そこまでたどり着くためには、触手が荒ぶる真ん中を突破していかないといけないのだが……。

「行ってやる!」

 既に触手の動きは目で覚えた。いける、と確信する。

 祐一は、クラフバインドめがけて走る。

 真上から振り下ろされる触手を一歩横に動いて避け、横から来る触手をしゃがんで避けて、水面すれすれになぎ払われる触手を飛び越えて……。

 大雑把に叩き付けられた最後の触手を踏み台にして、上る。

『クギュゥ?』

 イソギンチャクを連想させる口に剣を突っ込んで引っ掛け、そのままクラフバインドを蹴る。

 巨大甲冑の全質量が口に掛かり、ちぎれた。

 祐一は、重力に従って下へと落ちる。クラフバインドの外皮を真っ二つに切り裂きながら。

『キィィィィィッ!』

 甲高い悲鳴を上げながら、クラフバインドはブルブルと全身を振るわせた末に……


 破裂した。


 祐一が破った隙間から、体内の水色ゼリーがあふれ出し、ドバドバと流れてくる。祐一に覆いかぶさるように。

 水色ゼリーは空気に触れた瞬間、赤く染まる。

「なっ、何だこれ!」

 単に、体液を流しているだけではないようだ。第三形態か、あるいは相打ち狙いの攻撃か。

 祐一も、辺りにいた騎士団の巨大甲冑も。

 渓谷にあふれ出した大量の赤ゼリーが、全てを押し流そうと襲ってくる。


(まだだ、これから出てくる本体を叩かないと、今の戦いの全てがムダになる……)

 戦わなければいけないと、頭では解っている。

 それなのに、なぜか意識が朦朧としてくる。

「くっ、なんで、急に……」

 薄れていく意識の中で、祐一は最後に思った。

(なんか、この赤い奴、操縦席に入れてある赤いゼリーにすごくよく似ているような……)


敵の動きを利用しろ! 攻撃をかいくぐり弱点を叩け!

気分はゼルダのボス戦。

ただしゼルダの難易度がレベル7ぐらいだとすると、こっちはレベル500ぐらい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ