私と左手と
一年が終わる。
いや、今が終わる。
だが、つらつらと言葉が頭から、心から流れ出てくるのだ。
左手首の引っ掻き傷も薄くなってきて、腕時計で誤魔化せるようになってきた、ところだった。
成人してもらったプレゼントとして、腕時計を買ってもらった。
長く使えるからいいだろう、という意図で親にお願いしたのだが、おそらく予算が少なめだった様子で、一生モノではなかった。
腕時計のベルトは何度も切れて、電池も何度も息絶えた。
腕時計を買う予算は今の私にはない。
私はアクセサリーをよく好む。
シルバーのバングルを、中古で買った。
感性は中学生のまま止まっているから、文字が彫ってあるシルバーをつけるようになった。
"TOO FAST TO LIVE,TOO YOUNG TO DIE"
「生き急ぎ、死ぬには若過ぎた」
今年の一年を締めくくるかのようなフレーズに、胸を掴まれた。
人差し指につけるリングはフランス語で
"S'asseoir et regarder le ciel"
「座って空を見上げてごらん」
だ。
それを左手に共存させる。
そうして、生きる糧に、お守りに、意味を持って傷のある自分の左手を綺麗に彩りたい。
ネックレスにも意味があるのだが、それはまた別の機会に。
そう、生き急いでいすぎた。
もう少し、人生はマイペースで、スローに生きていいはずなのだ。
そう、死ぬには若すぎるのだ。
12月の後半になってようやく理解した、「自分が必ず幸せになってみせる」
という意味。
まだ、生き苦しさ、息苦しさに苛まれる日もある。
幸せを微塵も感じないこともある。
ジョジョの奇妙な冒険 Part4 ダイヤモンドは砕けない、に登場し、強過ぎて倒し方が最後の最後までわからなかったキャラクター、吉良吉影という男がいた。
ファンからも愛され、印象も強く、信念と気概のあるキャラクターが放った一言がある。
『わたしには勝ち負けは問題ではない、私は「生きのびる」…平和に「生きのび」てみせる…幸福に生きてみせるぞ!』
自身が敗北手前になり、ボロボロの体になっても、平和に「生きのび」るのだ。
どれだけ追い詰められても、幸福に生きてみせるぞ、という気概のあるラスボスに、ようやく共感できるようになったのだ。
私にとって、この一年は試され続ける一年だった。
とても苦しい思いをした、何にも手をつけることができなかった。
だが、一年の終わりに、ようやく「必ず幸せになってみせる」と思えたのだ。
ここまで必死に走ってきたが、バングルは教えてくれた。
まだ、若すぎる。
順番待ちだ、堂々と、大往生したい。
必ず、必ず私も生きのびてみせる。
たくさんの人に迷惑をかけた。
それなのにたくさんの人が私を救い、手を差し伸べてくれた。
傷だらけの左手も、死のうと願った自分も、全部まとめて抱きしめてやりたい。
全部が嫌になった、なんて簡単に言わないように。
私の優しさが死なないように、歩きやすい靴を履いて、歩きやすい道を選んで、進むべき道筋をランタンで照らしながらスキップしたい。
今日が辛いから、明日も辛いだなんて思わないように。
なんとかなるぜ、モードで。
そう、死にたいが、生きたい。




