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ピッキングアウト  作者: もぶ
悩みと奮起と阿修羅蜘蛛
66/72

要石は情熱系


 さて、昼休み。さきしーさん&夢咲さんに知り合いに当たる、と言ったので行動を開始する。クラスが違うので本拠地に向かう。会いに行く相手は男だ。


 大抵古賀くんは図書室の一角、それも持ち出し厳禁の大判の本が置かれている棚のある場所に居る。なんでそんなところに、と言われれば情報屋としての矜持(プライド)を語り始めるのが古賀久(こがひさし)という男だ。変わり者の類いだが、変わっていない人間等いないので問題ない。

 図書室に入りずいずいと奥へ進み、目的地に辿り着くと、お? よく知った後ろ姿があるじゃないか。


「お前のことだから、何か動いてると思ったけどさ」


「!?」


「情報通の古賀くんに用事ってことは、暗躍でも考えてるのか?」


「棚橋……」


 辛気臭い顔をしやがって。相当思い詰めている雰囲気だな。なんだ? 那智さんが他クラス女子(名前忘れた)から嫌がらせを受けてる件だけじゃないのか?

 ぶっちゃけその件なら古賀くんにその女子の()()()を流して貰えば解決と言わなくとも解消は出来ると思って探してたんだが……。え? 悪行? 悪意には悪意で返すのが世の常では? 


「全部話せ、泥船だろうと乗り掛かった船だからな」


 悪意には悪意を。本気には本気を。がモットー(今決めた)な俺が乗り込む船だ、さぞ華美な装飾の泥船なんだろうな。何それ乗る前に自重で沈みそう。


 辛気も面倒も悪臭を放っている気が全力でしているが、こうなったら首を突っ込みまくってやる。洗いざらい吐けやイケメン面被りのなんちゃって陽キャナードがよぉ!!




◆ ◆ ◆ ◆ ◆




 10分後。


「するってーと何かい? 那智さんは現実世界でイケメン先輩に告白されて隣クラスの女子に嫌がらせを受けているだけでなく、ゲームじゃ同じパーティの男二人に告白されてそれを断ったらパーティが解散することになって、残っていたプレイヤーが実は悪質なネカマで危うく警察沙汰になりそうだった、てー言うんかべらんめぇ!」


「なんで江戸っ子口調なのさ」


「補足するとその悪質なネカマをGMコールしたのがうちの姉ね。他のゲームと同じ顔と名前だったから怪しんでいたらしいよ」


 補足によって相談相手に古賀くんを選んだことも理解できたわ、ありがとう。

 それにしても那智さんおモテになりすぎでは……。


「同じパーティ全員に惚れられているとは……恐れ入ったわ」


「棚橋、しれっと暴露するな」


「高城くんの好きな人くらい調べ付いてるって。俺だって情報屋名乗ってるんだよ?

 訂正すると悪質ネカマのプレイヤーは顔の良い未成年女子なら誰でもって感じの害悪らしくてゲーム会社によってはレッドリスト入りしてるよ」


 うわぁ……那智さんかわいそう。今回は幸い未遂……いや、嫌な思い自体はしたのかもしれないな。


「現実では嫌がらせ、ゲームじゃ自分のせいでパーティ解散か……最近静かなのは落ち込んでたってことか」


「那智さんは全く悪くないんだよ」


「そうだな、高城の人を見る目が無かったのが問題だからな」


 敢えてキツい言い方をしたものの、それに高城は噛みついて来なかった。まぁ遠因とはいえパーティ募集の時に見抜けなかったことに責任を感じているんだろう。

 ぶっちゃけ悪いことしたやつはその悪質ネカマだけかもしれないが。那智さんは現実でもかわいくて溌剌とした女の子だ。それがゲームでも発揮されていたんだとしたら出逢い厨じゃなくても好きになるだろう。なので先輩とやらも、告白した二人のプレイヤーもお咎め無しで。下手すりゃ高城の(ゲーム内なのでバースライトの)下心に気付いてそれなら先に、と告白したのかもしれんし。やっぱこいつ遠かろうと責任はあるな……。


 まぁ……俺達部外者に解決できそうなのは2つだな。


「考えたって過去は変えられない。今改善すべきは2つだな」


「1つは隣のクラスの女子グループ、リーダー格の秋本さんを止めること、だね」


 そんな名前だったね、うん、3日後にはもう忘れてそう。


「もう1つは那智さんのゲームでのパーティ……か?」


「そんなことはどうでもいいだろ、おめーが考えてろ」


 ゲームでのパーティ? そんなもの無くても困らないんだよ、こちとらソロプレイヤーだぞ。ゲームをプレイするのに頭数は重要じゃない。

 ゲームに重要なこと、それは何が何でもモチベーションだ。


「那智さんがゲームを嫌な思いせずに楽しめる環境を作る。このままじゃ折角買ったゲームだってのに勿体ないからな」


 前向き、のめり込み、全力を求める訳じゃない。でも周囲の目を気にしてゲームを楽しめる人はいないだろう。発売日当日にあんだけ嬉しそうに買いに行くほど楽しみにしていたゲームなんだぜ? 周りの人間のせいで嫌な思い出にさせてたまるか。


「さて……そうと決まれば……」


 ポケットからスマホを取り出してクラスの男子だけのグループチャットにメッセージを送る。内容は簡潔に放課後に教室で待機してほしい旨だけ。


「こっちは良しと。で? 古賀くんに依頼したってことは代わりの条件を飲んだってことだよな? もう船には乗りこんでるんだし、折半できることならしてやるけど?」


「マジぃ?」


 と、高城に投げ掛けたつもりが返事をしたのは古賀くんだった。高城は「ああ……言質取られたね」みたいな顔をしていた。え、何、嫌な予感がしてきた。


「悪いようにはしないよ、ああ、明日の昼休みは予定開けておいてくれたまえ!」


 え、急にハイテンションじゃん怖……。

 何か面倒なことを引き受けた気がしてならないが、情報提供者としてはこれ以上ない逸材であるのは事実なので、今回の面倒事は明日の俺に丸投げしまーす。

 放課後にはプレゼンが待ってるからな。忙しいんだわ。


 悪意には悪意をもってそれを制す。……残念ながら今回は悪意だけでは解決しないくらい問題が詰まっているようだ。邪道と王道に正しい道(答え)が見えないのなら、獣道を行くしかない。

 旅は道連れ世は情け、獣道も大勢で進めば切り拓いて進めるさ。









◆ ◆ ◆ ◆ ◆






 



 放課後。担任という主がいなくなって寂しそうにしている教壇に立ち、一言。


「いやまさか全員残ってくれるとは……」


「「「言い出しっぺお前じゃん」」」


 いやクラス男子全員参加しているグループチャットに投げたメッセージとはいえ、まさか全員残ってくれているとは。そういえばノリが良いクラスだったな。


「えー、今日皆様にわざわざ残っていただいたのは他でもありません。球技大会、学年で一位を目指しませんか? 此度はその提案と決起の集会になります」


 なぜ敬語……とか聞こえたがこういうのは怖いくらい丁寧に言うほうがペースを握れるんだぜ? ソースは詐欺とかの講演会。


「はい」


「はい、相馬くん」


 バレー部で糸目な相馬くんが挙手をして発言を求めて来たので此方も質疑応答をせねばと意思を示す。


「目標は良いとして……理由と、後は報酬みたいなのはあるのかな?」


 初手から痛いところ突かれたんだけど質疑応答辞めていいか? だがしかし分かりやすいウィークポイントは敵を誘う落とし穴だって知らないのか? 分かりやすい穴は本命を隠すためにあるって、詐欺の講演会を題材にお祖母ちゃんに教わったことだ。騙されるポイントを列挙して町内会で対策セミナーしてた強者である。

 ま、今回は正面突破しかしないけどな。


「理由は他クラスの女子からうちのクラスの女子がちょっかいかけられてるから。嫌がらせを止めるにはうってつけのイベントが目の前にあるんでな、利用しない手はない」


「それでなんで一位を目指すって話になるんだ?」


 同じくバレー部の片平くんからの質問だが、正直一位を目指す()()()()()。しかし、男子連中がやる気を出すことは今回のケースだと一番良い結果をもたらす。


「クラスでの対抗意識を煽りたいからだな。幸いその嫌がらせ女子のいるクラスは3組でね。学年一熱い男のいるクラスなんだ」


「あー、杉山ね」


「納得」


「あいつかー。そういえば学級委員長やってるな」


 口々に納得の声が上がる。それだけ名の知れた男、いや漢の名は杉山修作。我々2年生の中で一番熱い漢。特にイベントの時に一番大きな声で盛り上げてくれる奴だ。熱血漢そのものだし、なんなら顔も濃いし、しっかり鍛えられた筋肉による肉体美すらも持っている。

 その漢のいるクラスに嫌がらせ女子がいるのなら活用しない手はないのだよ。


「簡単に要点を述べよう。

 第一に直接的な被害はまだ出ていないらしく先生方に相談しづらい。だからこそ黙らせるか、()()()()()()()()のが一番波風が立たない。

 そしてクラス全体が球技大会に前向きになった場合、陰湿な行動を取るやつはどういう目で見られると思う?


 そりゃあもちろん()()()()()()()()だと思われるよなぁ。そうなる可能性を、わざわざ迂遠な手で嫌がらせして外面はイイコぶってる奴が受け入れられるかなぁ」


「性格悪くないか」


「悪巧みじゃん」


 悪巧み上等でしょ。


「悪かろうと悪だろうと、人助けを目的にしたら正義になるんだよ」


 正義をただ純粋に信じるよりも、悪巧みによって出来たハリボテ正義を振りかざす方が便利だ。それに即効性が違うんだよな。


 クラスメイトの1人、(かけはし)くんがポツリと零す。


「なんか、変わったな棚橋」


 それに同意を示すように口々にポツポツ「だよな」「確かに」「らしくない」と宣う野郎どもを前に、俺は教壇を強く叩く。


「俺らしさ? 知るかそんなレッテル、自分らしさはそれで自分を遮る言葉じゃない。俺自身を周りが受け入れた証拠だ。だが俺はまだ発展途上なんでな。変化にびびってんじゃねぇ、これも俺だ」


 なんとかならないかとは言われたが、助けてなんて言われてない、お願いもされてない、そんな俺が今何をする。誰にも求められていない俺が何を糧に吠えるのか。

 それは決まっている。


「すでに起きている問題に追いついて追い越して振り向かないよう手を引っ張る。悲しいが後追いだ、惨めに途中参戦だ、ここから始めてハッピーエンドにするために、お前らの協力が必要だ。

 泣きそうな人を笑顔に変えよう。何とかしたいと相談してくれた人を安心させよう。誰も彼も巻き込んで、暗いこと考えないくらい今に熱中させようぜ」


 大事なのは今だ。その結果がめでたしめでたしであるならそれが一番なんだ。

 思えばあの時、ドラゴンとの共闘だってそうだったんだ。俺は助けてなんて言われてないし、お願いの意味すら履き違えた大馬鹿野郎だった。


 今回は間違えない。そして全て解決してやろうじゃねぇか。悪意には悪意を? そんなこと言ったっけか覚えてねぇな。俺の悪意は熱に焼かれて消え去れ、今から「今」(未来)を面白くするんだ。邪魔なものは全て炎にくべて灰に変える。


「細かい詰めは俺がやる。お前らは全員、他クラスを倒せ。カッコいいとこ、見せてやろう」


 声をかけるだけで解決するならそれでいい。黙らせて解決するならそれでもいい。力で抑え込んで解決するならそれも正解になるし、結果を享受するだけでいいならハッピーエンドは簡単だ。

 でも未来に負債を残すくらいなら、今ここで無関心に変えてしまおう。考える時間すらも無くしてしまおう。俺達はとんでもないものを盗む強盗だ。


 時間も、心も、目も、奪い尽くして焼け野原にしてやろうじゃねーか。いじめの(可能性)なんて生えないようにな。








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