口を開けろ、固唾(ビリビリしている)を飲め
トラップホールフィッシュ、つまりは地面に潜む鯰。その生態故に、木の生えていない広い道が生息地兼そこかしこに罠のある無法地帯だ。
まずは獣道というには大きく、広い道を探します。後は木の枝を地面を滑るように投げれば低確率で『バグンッ!』反応します。こんなふうに。
後は自分から元の位置に潜り直そうとするので全力疾走して胴を薙ぐスラッシュニ連撃、そのまま肩に捕まっていたフラムの火の呼気の追撃! うん、微ダメ。
「逃がすか、《戦記降臨》!」
戦記降臨の逃走行動を解除させる効果により奴はアクティブモンスターとなり、自然とこちらに狙いを定めてくる。そのまま噛みついて来たところを武器を手放し腕を広げて《硬化》で受け止める。体力が削られるが必要経費だ。さぁフラム、魔力の尽きるまで火の呼気を続けようじゃないか。
「みゃうあーー!!」
小さな口を目一杯開いて火を吐くフラム。口腔を炙られて痛くない訳がない。暴れ始めたトラップホールフィッシュだがその口を閉じることは俺が許さない。いじめているみたいだがレベルは相手のほうが上なのだからこれは下克上というやつだ。不意討ち&デストロイだから大化の改新タイプの下克上だけど。
大化の改新タイプってなんだ?
「よっし、火攻め終了。フラム、背中に捕まってな」
「みゃう……」
魔力切れしたフラムに終わりを促し、俺は手で抑えている大きな口を放して後ろに下がる。熱さからか一度は閉じた口をトラップホールフィッシュは開けてしまう。そして俺はもう銃口を構えて準備完了だ。
「さぁおあがりよ。発射!」
属性はサンダーだけど。一発で俺の魔力を全て食い付くすビートラクスの弾丸が奴の口に飛び込み、直線軌道でその喉に突き刺さる。
「Gyiaaaa~~~!?!?!?」
そもそも会話は出来ないが、声にもならない叫びを上げて痛みにのたうつトラップホールフィッシュを見ると……罪悪感とかはないな。苦悶するその様はグラフィックの良さを除けば茶色の皮に藍色のヒレをつけたただのナマズ、いやナマズはリアルじゃ見たことないけど。
痺れているうちに近付いてダメージを稼ぐ。ヤドリギの良いところは威力はそこそこだがグリップが木の枝と似ていて取り回しがしやすい点と耐久値が回復してくれるところだな。すれ違うように至近距離をすり抜け横っ腹に狙いをつける。
「せい、やぁ! はぁ! オラァ!!」
スラッシュ、切り返し、スラッシュ、切り返しと繰り返す。実は持久力次第ではあるもののリブートのお陰でひたすら斬り付けることができるのだ。悲しいかな威力は低いが。それでも耐久値が理論上無限(回復量よりも耐久値減少が大きい場合は無理)なヤドリギなら連打できるのだ。持久力の関係上8回振ったら息切れするけど。
それでも8回を二刀流となれば16連撃だ。それなりにダメージを稼げる。
「~~!!!」
「逃がすか、《戦記降臨》。終生の果てはここだぁ!」
後退を始めたトラップホールフィッシュを逃がすことなく逃走を否定する。そして咆哮による挑発。ヘイトを稼いだほうが逃げにくくなるのは間違いない。そもそも逃げないモンスターのほうが多いらしいけど。フクロウといいナマズといいレベルが高くなると多様化していくのだろうか? まぁ生き残ってるんだから自分の土俵以外では戦わないというのも正しい生存戦略なんだろう。
空も走るし地上で押さえつけますけど何か? お前らの土俵に飛び込んでやっているんだ、逃げんじゃねー。
するとトラップホールフィッシュはその非常に小さな目を赤く光らせると……魔力を口に溜め始めた。俺は大山猫の眼を発動しそれを観察する。茶色と青が混じる魔力が渦巻いている。
オールド・リバイアサン戦で青の渦を見たことがある、あのときは渦を射出するような技だった。つまり水を含む2つの属性を混ぜた渦を放つつもりなのだろう。茶色だし地属性かな? 泥か?
しかし俺はそういうブレス系には滅法強いのだよ、ナマズくん。
魔力の臨海点を見極め、解き放つ為に口を開ける、その筋肉の動きを見切ったぁ!!
「《マズルカウンター》!!」
チュドォォォォオン!!!
「みゃうー!!!?!?」
「マジか、凄い威力だな……ナマズくんこんな大技持ってたのか……」
口から吐き出そうとした魔力の渦、それが暴発することで自らの口を焼いたのだ。しかも相当な威力の技だったらしく、ナマズくんもすっかり虫の息……ナマズだけど。怯んだのか口をだらしなく開いて地面に伏している今がチャンスだ。
「さぁフラム、とどめだ。こんがり焼いてやれ」
「みゃう!」
取り出したるは報酬として選んだ魔力回復ポーション。さっきの爆発による爆風に吹き飛ばされまいと背中に張り付いていたフラムに飲ませる。ちゃっかり服に噛みついてたよね? 安物とはいえ貴重な衣料品なんだぞ?
「……みぁー」
飲み終えてから嫌そうな顔をするフラム。飲んでるときは平気そうだったのに……後味なのか? 俺も回復のためにもう一本取り出して飲む。いや健康ドリンク味……ああうん、後味がうがい薬だわ。美味しくはないな。
以前テレビでVRゲーム特集をやっていたのを観たらゲームデザイナーさんが説明してたな。確か『回復アイテムを飲料にしないようにする為』だったか。回復アイテムとして飲む分にはいいけど、その味を気に入るような「飲み物」にするのは悪影響を及ぼすとかなんとか。
まぁポーションって薬品だしな。用量用法は守ってくださいということだろう。むしろ守らせる為に不味くしているわけだが。
「さぁフラム、どんどん攻めるぞ」
「みゃう!」
フラムがナマズくんのヒレを炙り始めたのを確認して俺は帯電する。そしてそれを維持したままボクサーのようにストレートをワンツー、更に殴り続ける。帯電が切れればまた付けてワンツー。これは『千鳥駆のメモリアーク』を使ったときに思ったスキルの片寄りへの調整も兼ねている。足技はあるけど腕、拳系が無かったんだよ。ラリアットなら翼でも出来そうだし、スキルとして習得しておきたい。
そんなこんなで腕力にモノを言わせる男と、知力と魔力にモノを言わせる一匹とでトラップホールフィッシュくんがポリゴンに変わるまで追い込んだわけで。
その結果、目的は果たされたからナマズくんには感謝です。
《経験値を獲得……蓄積された経験値を確認……Loading》
久しぶりに聞くアナウンスに、自然とわくわくしている自分がいる。
《称号【大義蛮睛】を確認。取得経験値が半分になります》
あれ? それ元の【大器晩成】と効果一緒なのか?
《プレイヤー:ゼノンのレベルが50になりました》
《ステータスポイント30を獲得。
称号【大義蛮睛】を確認。スキルポイント30を獲得》
《称号【ジャイアントキリング・ハイリターン】を確認。ステータスポイント20を獲得》
《称号【竜血を浴びた者】を確認。ステータスポイント30を獲得》
《トラップホールフィッシュの地中鰓×2
トラップホールフィッシュの潜鰭脚×2
トラップホールフィッシュの潜鱗×11
トラップホールフィッシュの忍耐心×2
を獲得しました》
《ドロップしたアイテムがアイテムボックスに送られます》
《個体名:フラムのレベルが1から5に上がりました。ステータス画面から能力強化を選択してください》
なるほど? 俺の貰えるステータスポイントが称号の関係でめちゃめちゃ多いのも気になるけども。
超格上倒して、スタンピードの時もけっこう戦っていたのにフラムは4つしか上がらないと? ドラゴンって皆そうなの?
疲れきったフラムを抱き上げて竜宮洞に戻る。帰路では幸いモンスターに遭遇することは無かった。さぁ、早く戻ってスキルを確かめないとな。上限レベルになったということはしばらくこのままなんだから。
次のイベントで上限解放とか、してくれないかな。




