ゲイルムーヴ・ドリームライフ その16
《第一回イベント『ゲイルムーヴ・ドリームライフ』がクリアされました》
《参加したプレイヤー全員に称号『夢の日々を運ぶ嵐の子』が与えられます》
《参加したプレイヤー全員に伏せられていたイベントポイントが公開されます。各自ステータス画面からご確認ください》
《イベントポイントを報酬アイテムと交換できます。報酬はステータス画面『報酬一覧』からご確認ください》
《イベントクリアに伴い、プレイヤーのレベル上限が50となります》
《これからも皆様の活躍のほど期待しております》
なんだって?
「不穏な文章無かった?」
「イベントポイント……これか。どう見ても多いな。百万越えてるぞ」
うわぉ。状況でプレイヤーを分断しておいて協力必須、その後報酬で差を付けてくんの? いい性格してるね運営さん。
いやタダ働きよりは嬉しいけどさ。
「リージェスいくつ? 俺186万6837ポイント」
「多すぎないか? 俺は138万0433ポイントだ」
これ内訳とか……載ってるわ。えーっと?
「落魔討伐、グイネヴィア方面金剛兵戦・撃破、ジェネレイドボス討伐が全部50万ポイントだ」
「それ参加人数で分配なんじゃねぇか……? 俺の方にも落魔討伐が50万ポイントで入ってるぜ」
たしかに、落魔討伐は折半っぽいな。となると軒並み独り占めしている感じか……俺悪くないよ?
「まぁいいや。参加しなかったやつが悪いってことにしとこう」
文句言われても『何してたんですか?』で押し通すぜ! というかジェネレイドボスに関しては人いっぱいいたからな!? 俺のせいじゃないだろ!
「イベントが終わる前にセーベルさんに依頼もしたいし……受け取らなきゃいけない装備もあるしな。さっさと帰ろうぜ、リージェス」
「ま、そうだな。つってもバルトフリートはガス欠だ。収納しとくか」
ん? ガス欠?
「ちょっと待てリージェス。バイクで飛ばしてもまぁまぁ時間の掛かったこの橋を徒歩で行けと?」
「帰るにはそれしかねェ」
「みゃう!」
戦闘故に少し離れていてもらったフラムが『飛べばいいよ!』とアピールしてくるが残念ながら自己加速では鳥人間モードにはなれないだよ。んー、まぁ仕方ない。
「リージェス、折角だから競争しようぜ」
「なんでだよ」
「いや、折角だから」
「理由になってねぇ……」
(長距離を走ることなんて滅多にないしそもそもゲームだから本当に疲れるわけじゃないし、ましてや一切邪魔のない一本道なんだから走るのにはうってつけだ、そんなところで走らないのは勿体ないし)折角だから、ですよ、うん。
一人で走るのは虚しくなるから却下。
「はい位置について!」
「スキルは? 有りか?」
「有りで」
「準備するからちっと待ってくれ」
俺も《アドバンス》《アンカーフッド》を起動して準備オッケー。
リージェスも準備ができたらしくクラウチングスタートの構えを取った。
「よーい、ドン!」
《ウェイクアンカー》で走り出しの加速、スタートダッシュは貰ったぁ!!
だがリージェスは走り出さなかった。しかしそのリージェスの言った単語を俺の耳はちゃんと聞き取った。
「《悪狐の腕》」
「うげっ!?」
後ろから掴まれて引っ張られるような感覚、そして急に重くなった体に耐えきれず前に倒れそうになったところを腕を地面に着けて回避する。スチール、発音的に『盗む』のか!?
「残念だったな、これは落魔ヨシアキラ討伐の報酬スキルだ。よく確認しておくべきだったなァ!」
なんだと!? 走り出したリージェスを目で追いつつステータス画面を確認しスキルの項目を見て……いや見ても無いんですけど!? どういうことだ運営!! 上がってないレベルが関連してるのか!? 上限解放したならついでにストックしてくれてた経験値も寄越せや!
しかしだ、俺には称号【ハイリスク・ハイリターン】によるステータスポイントがある! 落魔討伐により30ポイント貰えてたみたいだ、サンキューヨシアキラ! お前の名前は忘れないぜ!
体力 106/106
魔力 28/28
筋力値 65
耐久値 25 (防御力+118)
知力値 3
敏捷値 30
器用値 5
持久力 30 ↑60
運 5
もはやスキルでステータスを上げても盗まれる可能性を考えなくてはいけない。ならば持久力を上げてリージェスよりも長く走ることに特化する! いや後で絶対後悔する気がするけど今は出し抜かれたことのほうが嫌なんだよ!
「待てリージェス! このまま負けると思うなよ!?」
鳥装備で軽くなった体重を活かして全力疾走だ!!
「で? どっちが勝ったの?」
「「フラム」」
「みゅう!」
直前までギリギリのデッドヒートをしていた俺とリージェスだったが文字通り背中に張り付いていたフラムが俺の頭を踏み台にしてジャンプ、リージェスの髪を踏み台にしてジャンプ、工房の扉にタッチを決めた。お陰さまで俺とリージェスはスッ転んで軽いダメージが入った。
「すごいね」
「むみゃう!」
終わった勝負に何を言っても無駄、というわけで早速だけど本題だ。
「セーベルさん、置きっぱなしにしてたリバイアサンの素材なんですけど、あれで装備を作って貰えませんか?」
「ああうん、もちろん良いよ。ゼノンくんのおかげで一位になれたからね」
一位に? あー、もしかしてコンテストで? やっぱすげー人だったんだな。リージェスは腕を組んでうんうんと頷いてた。驚くことじゃないってか?
「おめでとうございます。ついでのわがままも聞いてもらえますか?」
「良いよ。僕に出来ることであれば」
快く答えていただいたところ悪いんですけど……まぁまぁ無理難題を言いますよ?
「このウェイクアンカーのような……足装備を作ってもらいたいんです。それも海上を歩けるような」
「それって……」
「脱出するんなら船のほうがいいんじゃねぇか?」
今まで黙っていたリージェスが問い掛けてきた。まぁそういう用途を考えるよな。でもそうじゃない。中途半端であの島を出るわけにはいかないし。何より俺の目的は楽な航海じゃないので。
「違うよリージェス。俺は水の上で戦いたいんだ。それも海の上、ありえねぇ強敵とな」
まだ見ぬモンスター、そして見ただけのシャチっぽいやつ含め、倒したいやつは多いんだ。ザリガニも狙っていきたいな。
ウィンドアンカーを使ってて感じたのは確かに便利なんだけど相手が潜ったら何も出来ないということだ。リバイアサンは海岸で戦えたからなんとかなったが、遠洋にいるシャチは海上に着地(着水?)しながらじゃないと戦いにならないだろうし。
「分かった。作ってみるね」
お願いします!
持つべきものは優秀な鍛冶師の知り合いですね。おっと、もう1つ大切な依頼をしていたんだった。
二人に別れを告げ工房を出る。先方に連絡を取ってみるとすぐに返信が来て会えるとのことだったので待ち合わせに海岸の方の広場を指定した。また屋根伝いに街を進み、広場に辿り着いた。
見覚えのある甚兵衛姿が見えたので話しかける。
「どうも、けいべろさん」
「おー、旦那。例のブツはしっかりできあがったぜぇ」
相変わらずほろ酔いムーヴを見せるけいべろさんはリバイアサン討伐の時に知り合った鍛冶師だ。俺にディフィシットマスケットをくれた人だ。まだ使っていないのは弱いとかじゃなく、そもそも使う手が翼になってたからだ。背中に羽が生えるタイプなら主力として使ってたくらいには強い武器だろう。
そんな凄い武器を作るけいべろさんにお願いしていたのはビギナーズガンの強化だ。他のビギナーズ武器も強化案はあるんだけど残念ながら素材に良いのが無くてな……。金策に売り払ったとも言う。
素材持ち込みでスキルレベルも職業ランクも上がったから代金は要らないと言われたのでそのまま受けとる。早速鑑定してみよう。
蒼雷【ビートラクス】 武器種:銃 評価:★10
蒼雷大兜の回路外骨格を使用した片手銃。巨大な身体、蒼雷大兜は体重を電気信号から変化した魔力を流すことで支えているため、その外骨格には特殊な回路が存在している。その回路を壊さずに発電核を利用した構造によって火力を実現し、同時に霹靂角を用いた電流の制御性能も備えている。
効果:攻撃力+200
消費魔力:帯電 5
弾丸精製 15
弾道変化 5
「カッコ良……」
どう見ても性能がバグっている。強すぎるわ。
でも見た目、そう見た目がメタリックなライトブルーのSF感溢れる銃で物凄くカッコいい。魔力を流すと回路が青白く光るのもロマンが過ぎる。拳銃界のファッションリーダーだろこれ……。
「気に入ってくれたかい?」
「もちろんですよ!!」
マジこれめちゃくちゃカッコいい。語彙力無くなっちゃう。今の俺だと2発撃てないことにも余裕で目を瞑れちゃうわ。
「ありがとうございます。大事に使います」
「よろしく頼むぜ。じゃ、また銃を強化したくなったら呼んでくれや。他のじゃセーベルガーくんにゃ敵いそうにないからな」
そういって離れていったけいべろさんを見送る。ん? セーベルさんを知っているような発言だな。まぁ鍛冶師ならそりゃ知ってるか。一位になったそうだし。そのセーベルさんに銃なら勝てるっていうのもビートラクスを見るとあながち冗談ではなさそうだ。
あれ? セーベルさん知り合いだってどうして分かったんだ?
イベントが終わり、強制転移で竜宮洞に戻されるまでの間考えてみても、答えは出なかった。
ま、知られてても困ることじゃないからいっか。




