表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ピッキングアウト  作者: もぶ
威風の一角と造形の街
57/72

人知れず最前線、威風にはためく大旆を掲げて #4


 ヨシアキとかいうクソ野郎は本人が封魔符師と名乗っていた。この封魔符師とかいう職業(ジョブ)はプレイヤーは誰一人知らなければ最初の選択肢にも無かったって話だ。職業欄なぞそこまで詳しく見ていなかったが、まぁわざわざ篩に掛けられた(ピッキングアウト)プレイヤーのいる町に侵攻しようとしている勢力にいる敵キャラが新しいジョブってのは分かりやすくプロモーションっつうことだろ? 宣伝が効果的だったかは分からねぇが召喚師(サモナー)は色めき立ったらしいな。


 この封魔符師は少なくとも従魔師(テイマー)と比較した時の召喚師の利点に加えて魔法すらも封魔符とやらで即座に発動していた。代わりにモンスターのサモンに明確なデメリットがある。こいつには関係ないらしいが、少なくともPKを好まないプレイヤーに人食い鮫は使えねぇよ。


 このゲームでのテイマーは自身よりステータスが低いモンスターしか使役できない。しかしこいつは自身と対等か、或いは強力なモンスターの使役をしている。と同時に魔法職以上に発生の速い魔法攻撃。それが封魔符師っていうジョブなんだろう。


「降りて(かいな)、死して(みな)まで」


 だが、俺が知り得るのは封魔符師の特性だけ。ヨシアキというキャラクターは性格がクソッタレなこと以外何も知らない。


「慰みに(きょう)じて(いとま)()む」


 ヨシアキの始めた、謎の詠唱にどう備えればいいかも分からねぇ。が、分からねぇなら一先ずぶん殴る。それ以外に選択肢なんてねぇ!

 駆動させた足のタイヤで加速する! 右腕を振りかぶりその重さにバランスを崩しながらも強引に力強く一撃を叩き込む!

 

「我が知に(みち)(たが)えり」


 こっちのほうが早い! 振りかぶった一撃で《ブレイク》を決めて連打に持ち込む!


「《ブレイク》!」


 しかし、微かに聞こえた言葉に悪寒が走った。


「【知故空虚】」


 俺の攻撃は完全に奴の顔を捉えた。そのインパクトを受ければ仰け反るに決まってる。常人なら首の骨が折れるぐらいのパワーが今の俺にはある。しかし、


「なっ!?」


「ふむ、久しぶりだが……悪くない気分だ」


 びくともしねぇ、だと!?


「てめぇ、何しやがった?」


「それを言うのは野暮というものだろう? 降り人よ」


 っ!? 札を取り出そうとしていやがる、ゲバ棒で《薙ぎ払い》を発動して妨害、を、


「何!?」


「学習しないな。いや、今はその方が助かるがな。《符陣形成(サークルメイク)・スラストロックエッジ》」


 札はゲバ棒を受け止めた。そして3枚の札は何事も無かったかのように展開し、魔方陣を形成した。そこから放たれたナイフのような石片が俺に突き刺さった。


(いって)ぇ……」


 痛い程度で済んだのは【猪王の突貫服】を着ているお陰だな。防御力ならプレイヤー1だろうしな。ゼノンに感謝だ。

 こいつは考察してから戦わないとすぐやられちまうな。札が硬いなんてこともありそうだが、十中八九さっきの詠唱だろうな。少なくとも殴られたら動くのが昨今のゲームだし。


 ありそうなのはダメージ無効……と言いたいがノックバックどころか札すら曲がりもしなかったってのは引っ掛かる。今とさっきに共通してるのは……。


「スキルの無効化……いや、ダメージの……」


「毒でも試してみるか? その余裕があればの話だがな?」


「連発かよ!?」


 飛んでくる石片を《バックステップ》で回避する。今のスキルは無効化されてない、無事に発動できてる……ならこいつがやったのは……。


「分かった。てめー、自分が受けるスキルを無効化するんだな? 効果もダメージも、付随する運動エネルギーも」


「その通り。貴様らには一番効果的だろう?」


 ならスキル無しで殴るのみ! とりあえず顔面重点でな!

 足のタイヤを回転させて直進する。スキルを使わずに右腕を振りかぶる。そして渾身のストレートを……!


 奴は片手で受け止めた。


「それでは誰も殺せまい。降り人はスキルがなくては何もできない。違うか?」


 今のは腰が入って無かった。というよりもだ。一般人は右腕がバイクじゃねぇし、足がタイヤじゃねぇしそもそも喧嘩だって素人なんだよ。それをゲームで出来るようにするのがスキルだ、それを無効化されれば攻撃力は下がるし動きにも支障が出る。少なくとも今の俺には厳しい縛りだ。体のバランスがマジでクソだ。


「一旦距離を稼がせてもらうぜ、《ストリングバレット》!」


 このスキルはバルトフリートに付けたオリジナルの機能でもある。当初は変形することなんざ考えてはいなかったが、折角ならと威力は低いが物を射出する機能を付けた。師匠には断られたんで別の鍛冶にも頼んで作った。敢えて銃としてではなく、バネによる射出機構だからこそ専用のカプセルに入るものなら飛ばすことができる。サイズ感を説明するのにカメラのフィルムケースって言ったら師匠どころかセーベルにも伝わらなかったけどな!


 打ち出した弾丸を奴は札を取り出して()()()()()。カプセルに入っていた黒鉛の粉が飛び散る。

 

「無駄だ」


 無駄?


「ならなんで()()()()()()()()()()


 偶然、けれど幸運。そして今の奴の行動から推理を組み立てる。手掛かり少な……。けど詠唱も含めて考えればなんとか答えが出るだろ、いや出さねぇとキツイ。

 「降りて腕」、もうわかんねぇな。いや降るってことは下がるとか……ああ、降るの使い方なら降参とか、軍門に降るとかもあるな。「死して皆まで」は……死んだら全部? 何を? ん? いや待てこれを封魔符師として考えたら良いのか? 「我が知に道は違えり」ってことは……。


「契約したモンスターのスキルか……倒したモンスターや人のスキルの無効化か……?」


 俺の推理にヨシアキは愉快そうに頷いた。


「概ね正解だ。加えて縛りとして一度被弾した場合には解除されてしまう。しかし……とても良い術だろう?」


 お答えどーも。それならこれ、服数人で袋叩きが一番有利取れるんじゃねーか?

 少なくともスキル名を言わずに発動できるやつがいるだけで変わってくるし、誰が何を言ったかの判断を強いるというのもでかいだろうな。聖徳太子だって攻撃をかわしながら十人の声を聞き取れるもんかよ。


 そして今、バルトフリートと一体化している俺はヨシアキに対して若干不利……いやかなり不利だな。


 パゼスト状態は合体した装備の機能がスキルに変更され、実際の操作ではなく音声認証や脳波認証で使えるようになる。それ自体は合体したことのメリットにもなるがことヨシアキ相手ではスキル名を言うことのデメリットが大きい。

 パゼストに慣れてりゃ話は別だが……生憎条件が一定速度の観測だったからな。ゼノンに後押しされてやっとクリアできた条件だ、練習無しで本番やってるんだよこっちは。


 但し完全不利というには生産職は奴に有利だ。いやこのイベントがそもそも生産職との協力必須だと考えれば当然っちゃ当然か。強い武器があればスキル無しでも戦えるし、一発被弾させれば良いならそういうアイテムを作ってもいい。

 しかし戦闘方法がアイテムの操作からスキルの操作に変わるパゼストが奴に不利なのは間違いない。ここら辺調整されてると割り切っていかねぇとな。


「時間になっても合図がない。となると、コンテストは無事に始まってしまったか……」


 少し悔しげな声を出したヨシアキ、その仮面で隠されていない半分の顔は声同様しかめ面だ。どうやらゼノンも間に合ったみたいだな。ざまーみろ。

 だが奴の口から出たのは諦めの言葉ではなかった。


「嘆かわしい……が、既に手は打っている」


「何だと?」


「手は打っていると言ったのだよ。そもそも二面作戦をする相手がわざわざ深海調査ゴーレムを使うと思うかね?」


「はっ! それしか手が無いって可能性もあんだろうが」


「虚勢は止めたまえ。調べたのなら分かるだろう? 我が国の圧力の強さを。屈した周辺国の弱さを。少なくとも三面方向からの集中放火だって可能だったのだよ。それをしなかったのは別の目的があるからだ」


 別の目的だと?


「コンテストと言っているがあくまで人間が人間の作った物を品評する場に過ぎない。そして七曜が動きだしたことは誰もが知ること。その七曜に備えるために軍事設備の充実は急務だと、国の重鎮であれば分かっているであろうよ」


 それならば、と奴は続ける。そして俺も奴の意図していることが何となく分かった。だからゴーレムを使う必要があったのか。


「深海調査ゴーレムは災厄への備え、その第一歩になる。各国がまだ見ぬ物資を求める。或いは改造し兵器として用いようとするだろう!

 そして人が選んだものを神は認める。神の加護とは絶対に覆せない(のろ)いだ。神の認めた物は不壊不朽の物となる! 欲深い自分達が欲したことで破壊不能となったゴーレムによって人が滅ぶ! これほど愉快なことはないだろう!?」


 感情が昂ったことを隠しもせずに叫ぶヨシアキ。なるほどそういう事情なら恐ろしく周到で性格が悪い上にずる賢い。ゼノン一人に任せたが破壊不能となれば百人いてもどうしようもねぇ。死んだらすぐに消える肉盾なんて無価値そのものだ。

 だがまぁ、俺の心は変わらねぇ。動揺? するわけがねぇ。やんなきゃいけないことがハッキリした。俺は左手でUIを操作する。


 ああそうか、これが信頼ってヤツなんだろうな。


「お前の望みは叶わねぇよ」


「何?」


 絶対の自信、なんてあるはずがねぇ。自分自身を信じるのは簡単なことじゃないからだ。自分の失敗は自分が一番よく知ってる。だからこそ自分を信じられない。

 でも懸けるべき時に懸けられねぇ自分なんざ見たくねえ。自分を一番間近で見るのは自分なんだ。なら最高最善振りきって、最前線で(タマ)ぁ張りてぇよなぁ!?


「夢を見たいなら目ぇ瞑らねぇとな。俺の魂を懸けて……お前はここで消し飛ばす」


 俺に出来るのはこのクソッタレをここに押し留めることだけだ。だからコンテストは頼んだぜ、セーベル!




 

今月は仕事がハード過ぎてメンタルがアークに接続しかけてました。中山きんにくんのお願いマッスルで耐えました。

来月も仕事がハードそうです……でも書きたい。頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ