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ピッキングアウト  作者: もぶ
威風の一角と造形の街
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人知れず最前線、威風にはためく大旆を掲げて #2


 その日、子供たちが海岸に行くことを親たちは許さなかった。何故なら解決したとはいえスタンピードが起きたばかりだからだ。

 そのスタンピードの解決さえ仕事をしていて見ていない親たちは半信半疑だった。たった一人で解決したという噂が流れていたが、ギルドから公式に発表された訳ではないしそもそもスタンピードを一人で解決することなど不可能、ましてや伝説に出てくるオールド・リバイアサンが現れたのに被害がゼロとなっては信じられるほうがおかしい。

 しかし大人たちはその噂を信じることになる。いや、正しくは理解することになったと言うべきか。


 子供のいない海岸は閑散としていて数人の漁師たちがいる程度だった。そこに海から現れた数十体の鉄の人型が海岸一帯に陣取った。

 それらは単眼を動かし近くにいた漁師を見付けると剣のような腕を構えて歩を進める。ガチャ、ガチャ、と歩く度に音がする。動きは遅く逃げることは容易い。何事かと思った漁師たちも動きの遅いゴーレム達を見て拍子抜けして切られた網に意識が向いていた。しかしその油断は機械の前では命取りになる、はずだった。


 水中では使えなかった機能を復旧させたゴーレムたちの単眼が怪しく光り、剣の腕を勢いよく振るったと同時に放たれた衝撃波が漁師の男を飲み込む前に、


「《ランパート》!!」


 一羽の亜人が飛来した。












 (あっぶ)な!? 「ランパート」の射程ギリギリだった! 空の移動が思ったより難しくて遅くなってしまったのが原因だな! 改善の余地あり!


「うおっ!? 鳥!? いや人間か!? なんだお前!?」


 助けた漁師ルックなおっさんに怖がられてしまった。おかしい、目の前に2メートルサイズとはいえ無機質なゴーレムがずらずらといるってのに俺のほうが怖いですかそうですか。そういえば亜人との確執があるんでしたっけ? これ亜人として町を救ったほうが良いか?

 でもワーフガンドさんにバレたら通用しなくなるか。嘘は付くほうが問題になる。誰かが勘違いしてくれれば御の字ってことにしとこう。


「俺は冒険者のゼノン、こっちはフラム」


「みゅ!」


「ここは今から戦場になるので全員を逃がしてください。フラムもちょっと降りて……いや、撹乱を頼んでいいかい?」


「みゅ!? みゃう!!」


 フラムがあの人型ゴーレムに「ウィッシュスター」抜きで勝てるとは思わないけど、広範囲攻撃過ぎて「ウィッシュスター」を使わせる訳にもいかない。となれば攻撃手段が「火の呼気」だけになるからなー。機械相手だと戦力として扱いづらい。

 されどフラムはドラゴン。空も飛べるし火も吐ける。戦わせたほうが成長も早いだろう。ちなみにフラムのレベルはパーティメンバー扱いだからかスタンピード後に2になっていた。でもスキルは増えていない。寄生、ダメ絶対ということか……。


 この際なのでフラムに戦闘経験を増やしていきたい。島で手頃な相手なんていないからな。イベント限定なのはちょっと面倒だけど贅沢は敵だとお婆ちゃんが言っていた。ちなみにお爺ちゃんが高級プロテインをポチろうとしていた時の話だ。


 漁師のおっさんたちが海岸から離れていくのを確認してから俺はゴーレムたちに向き合う。


「さて、と。練習に付き合え機械共!!」


 駆け出し、砂浜を蹴って加速してから直ぐに空中を蹴って前へ。左脚のウィンドアンカーでゴーレムの顔を鷲掴みにして「アンカーフッド」を起動、そのまま両翼を前にクロスし右脚の「空踏み」で後ろに跳ね重心を崩すように引き倒す。

 ゴーレムが倒れるよりも早く離脱した俺は空中でバク転をして翼を広げて空を蹴って前へ、次のゴーレムに近付いてすれ違い様に単眼のレンズ目掛けて蹴りを入れたが大したダメージにはなっていなかった。ウィンドアンカーの爪のとこ当てたんだけどな。

 三体に試したがあまり変わらなかったので一度着地。斬りかかってきたゴーレムをジャンプしてからの「シンカー」回し蹴りで頭を蹴り抜いた。あ、レンズ割れた。手応えありだな。


 問題は「シンカー」は足を重くするスキルだがアンカーフッドと違い解除が任意じゃなく固定時間があることだ。空を飛ぶタイプの今の姿と合わない。まぁ威力ある踵落としが出来そうだし使わない訳ではない。手札というのは捨てるよりも「切らない」という選択をしたほうが良いとお爺ちゃんが言っていた。これはトランプの大富豪で遊んだ時だったかな。


「蹴撃スキル取らないとダメか。」


 急いでステータス画面を開いて取得できるスキルをチェックする。蹴撃スキルを探す……フラムのステータス確認したときついでにちらっと見たが「なんたらキック」が無いのでスルーしてしまった。しかしながら足技で考えると……。


 とっ散らかったスキル欄から3つを取得する。「スキリングアップ」によって半額なのはデカイ。20のスキルポイントを貯蓄してたのが偉い。すぐ取ることができた。

 それに称号【ジャイアントキリング・ハイリターン】のお陰でオールド・リバイアサンを倒した時にステータスポイントを10も貰えてたので筋力値に全部振っておく。これすっかり忘れてたな。レベル上限だからステータスなんて上がらないと思ってた。


 取得したスキルは「リアクトストンプ」「戦刃身倒(せんじんみとう)」「ブレイキングチャージ」。ブレイキングチャージは猪将軍を倒したからだろうか。

 こっそり混ざってた「リバーサルタイド」はオールド・リバイアサン倒したから? なんか取ってあげないとかわいそうだな。条件が予想通りなら俺しか取れないだろうし。効果というか魔力消費なのが合わない気もしてるんだけど……。残りスキルポイントは5。大事にしよう。とりあえずスキリングアップ発動しておこ。ゴーレムからもスキル貰えるかもしれないもんな。


「おっとそんなゴーレムの皆さん熱烈な視線を向けられても……」


 複数体が俺に単眼を向けて魔力を集めていた。これはロボットではお馴染みのレーザーとかが飛んでくるのだろうか。ゴーレムもレーザー撃つのだろうか。お前らってこう武骨なイメージがあるんだけど。

 俺の思考を無視して一斉放射されたレーザー。しかし今の俺はリバイアサンの力を使うことが出来るので翼を開いて迎え撃つ。


「《リバーサルタイド》!」


 目の前に集まる青い魔力。それは水となって渦を形作ってレーザーを受け止める、ことはなく。


 ギギッ!


「流石に自分達の攻撃じゃ大したダメージにはならないか」


 全てのレーザーを反射した。非常に強いスキルだが同じ属性の反射となるとモンスター相手のダメージは期待できなそうだな。マズルカウンターのほうが接近オンリーとはいえ相手の魔力を暴発させてダメージという点で優秀だ。射程と状況にもよるけど。防御なら「ランパート」と「コフィン」もあるんだよな……。

 でもリバイアサンがどうして使って来なかったのかは分かった。俺が純物理アタッカーだからだな。なんかごめん。


「使っていこうか……戦刃身倒(せんじんみとう)!!」


 これは相手の足を刈り取るような低空の回し蹴りだ。腕を地面に付いて放つという点を除けば優秀だな、普通に蹴るより威力も高いんだろう、今腕じゃなくて翼だから踏ん張れないけどな。

 倒れたゴーレムを蹴ってジャンプ、もう一体の頭に脚で飛び付いて「スタッグソーホイップ」! 重いけど投げ技の補正があれば……何となく無理な気がしたので「空踏み」で威力アップ! ぶん投げて次!


 後ろではフラムが倒れたゴーレム相手に顔に向かって火の呼気を連打していた。溶接かな?


「《リアクトストンプ》!」

 

 これ発動後に足の裏で蹴りつけるのはいいけど連打した回数で威力が上がっていく仕様が鳥脚ゆえに連打に適さない幅の取り方と噛み合ってないな、でもこのまま相手を「壁蹴り」して上空に跳べるのは便利。そして今の俺は滑空する! 「空踏み」で更に移動して部隊後方、つまりは海上からでも攻撃に移れる! 今なら(レンズ)には写ってないだろ、今なら行けるんじゃないか!?


「《空前絶後》!!」


 その瞬間、俺の体が勝手に動き空を蹴って加速、脚でゴーレムの胴を背中から突き破った。そして直ぐに加速は止まり、俺は咄嗟に翼を広げて体制を整える。


「これ急加速と蹴り技のセットか! なのに敵突き破ったら()()()()るから止まるってこと!?」


 使いづらい! 緩急がエグ過ぎて使い所間違えたら大きく隙を晒すことになるな。そしてこの急加速に俺の意識は付いていけてない、うわーこれ音声認証のみですか!? リキャストタイムも他のスキルと比べても長い。5分ごとの必殺技扱いだな。ちなみに「リバーサルタイド」は今までのスキルでぶっちぎりで一位だった。魔力消費するスキルとはいえ10分は長過ぎる。


 無傷のゴーレムを「壁蹴り」して空中でカーブするように小刻みに「空踏み」三連打、ドリフトしたような挙動でゴーレムに「リアクトストンプ」を仕掛ける。四連打、最後に大きく顔面(?)を蹴り飛ばして反動でバク転し落下と同時に翼を開いて勢いを維持、一回転半、脚が上がったところで右足だけ「シンカー」を起動、ムーンサルト踵落としでまた一体粉砕した。脚が……じんじんする!。


 シンカーで脚が重くなって動きの止まった俺は格好の的、振り下ろされた二体のゴーレムの剣に対し俺は迎撃を選択した。


「ジャストカウンター!!」


 ギィン!!


 ジャストカウンターはカウンターバッシュと違って格闘家やモンクの初期スキルなんだよ! 素手で出来るなら翼でも出来るよなぁ!? 出来なかったら死んでた。

 そしてこれが出来たことで確信したぜ! 千鳥駆のメモリアークは格闘系ジョブが使うと素晴らしいアイテムだということをな!!


「そりゃ剣も杖も装備出来ないなら素手だもんな、脚は使えるから蹴撃スキルが活きるし……どう考えてもジョブを選ぶ装備だな」


 まぁ使えるものは使う! そんで忘れてたスキル、最速レベル上限達成で貰った「ランナーズハイ」!


「加速時に視覚補整とスタミナ消費減少、いいね、追加で《ブレイキングチャージ》!!」


 効果は「地面を割る脚力の付与と反動ダメージ無効」! 偉いぞ将軍! 有能なスキルだ! ちょっとテキストが分かりにくいけど許しちゃう!


「地面を割る、なら壁蹴りでモンスターを蹴ったらどうなるんだろうな」


 脳細胞が攻撃的に暴走してる気がするな、でも時間が無いからやってから考えよう!

 踏み出して《リアクトストンプ》から《壁蹴り》、リアクトストンプの時点でバキゴキ破砕音が響いていたがゴーレム故にポリゴンにならないようだし助かるね、壁蹴りから次のゴーレムの頭に飛び乗ってそのまま《壁蹴り》で空へ、翼を広げて空を滑って《空踏み》で下にダッシュ、勢いよく海面を踏みつける!

 一瞬ここだけ滝になったのではないかと錯覚するほどに水飛沫が舞う! そしてその一瞬を利用して俺はゴーレム達を刈り取る。


 上空に逃げた俺をその目(レンズ)で追い掛けたゴーレムは加速して着水した俺に追い付いていない。元よりゴーレム故に目を動かすのではなく首を動かしているお前らは速すぎる俺を捕捉し続けることができない! そしてわざと上げた水飛沫は目眩ましそのものだ! もう5分経ったぞゴーレム共!!


「《空前絶後》!!」


 空を蹴って加速した俺は一直線にゴーレムの装甲をぶち抜き、4機のゴーレムを貫いて砂浜に着地した。

 時短にはなったかな? さぁ、一方的な勝利へと邁進しようか!! 





格闘家

 初期スキル

 ・ジャストカウンター ・連打高揚

ジャストカウンターはカウンターバッシュの派生後のスキルですが格闘家の初期スキルです。連打高揚は攻撃を当てる度にコンボというスキル派生のポイントが貯まります。自分オリジナルの動きを作っていく職業です。その代わり高い身体能力が求められます。


モンク(身心修行僧)

 初期スキル

 ・ジャストカウンター ・鼓動

鼓動は相手の芯まで響く攻撃です。少なくない怯みの効果があるので自分で連続攻撃を仕掛けやすい職業です。自己回復スキルを取得し、アイテムでの回復効果を高める職業なので長期戦に強いです。但し教会での無料回復は受けられません。


剣闘士

 ・カウンターバッシュ ・スラッシュ

剣と拳、体術や剣術を使い高い体力を盾に相手を追い込む職業です。自分にあった様々な戦い方を選べます。スキルポイントの割り振りは慎重に行いましょう。


主人公が飛ばした職業説明欄から抜粋。

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