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ピッキングアウト  作者: もぶ
威風の一角と造形の街
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ゲイルムーヴ・ドリームライフ その13


「いや図々しくないですか?」


「大丈夫ですシェフ! シェフのお陰で売り上げは3倍になりました! マジ感謝です!」


「あ、はい」


 以前ちらっと兎肉の串焼きをアレンジさせてもらった居酒屋バイト風ギャルことガトーショコライトさんから木炭と火種と網と作業台を借りて行っているのはそう、バーベキューだ。


 俺もうろ覚えなんだけど、オールド・リバイアサンを倒してから残ったモンスターを倒していたら「お腹すいた……」とつい漏らしてしまったのが発端だ。まんまイカだったんだよ、そいつ。アニメーションに出てくるようなプリティーな。

 そしたら周りの観客(プレイヤー)が悪乗りをしてバーベキューを計画しはじめて……ジョブが料理人であるガトーショコライトさんがいたことでそれが形にでき、尚且つ野菜なんかも既に準備されていたので抗えるはずもなく。

 最初に悪乗りしたプレイヤーが酒を片手に『スタンピードが解決したっつう喧伝にもなるだろうよ!』と笑っていたので色々あきらめたのである。まぁ、情報交換の場だと思おう。


 俺は裁ききったタコやイカを串に刺し、醤油(プレイヤーの作品。どうやらコンテストにも出しているらしい。それを貰った! やったー!!!)を塗って準備をしていく。


「醤油もコンテスト出せるんですね」


「あれは食材部門ですねー、基本的に食材部門は調味料が多くなりますね。後は養殖や畜産、農産物に変わり種は保存食なんかの恒久的に提供出来るやつです、師匠!」

 

「弟子モードやめてくださいお姉さん。鍛冶技術と武器防具分かれてたのは生産職としてはどうなんですか?」


「私は細々と経営を勉強してるだけなんで、そっちは解んないなー、です」


 ガトーショコライトさん、絶対敬語苦手でしょ。

 と、話を聞いていた鍛冶師っぽいプレイヤーが返事をくれた。


「技術ってなると装備としてはどんなに弱くてもいいわけだろ? 改善した滑車とかこの世界にはまだ存在しないやつを作ってもいいわけだ。

 服飾技術なら刺繍とかな。良い部門分けになってると思うぜ」


 なるほど。部門として成立しているわけだ。強い装備となるとそれこそ俺がアイテムを提供すれば性能だけでぶっちぎりだろうし。まぁそれでイベント不成立とかになるんなら俺を無人島に送った運営を恨んでくれ。あれ? もしかしてそのための技術部門?


「ただまあ、鍛冶技術は優勝はほぼ決まってるからな」


「そうなんですか?」


「そりゃ、あのバイク出されたら誰も勝てねえって話だよ。オーパーツどころじゃねぇぞ、あんなの」


 あー、納得。場違いな人工物(オーパーツ)も含めて納得だわ。ここ中世の欧米文化がベースだからね。そういうことを考えると自分の生活(サバイバル)も時代関係ないなと感じるがうるせぇ今は文明開花の格好してるでしょーがとメンタルを切り替える。鳥人間ですが何か? 猛禽類マスクだからプロレスラー寄りか?


「ところで、その脚はどうなってるんだ? モンスターを掴んだり、あの怪獣に掴まったりしてたよな?」


 おおっと、鍛冶師っぽいおっちゃんから装備への質問が来た。特に隠すつもりもないし教えてもいいだろう。


「これはウィンドアンカーっていう武器になる装備です。足の指を動かすイメージでこいつも動かせます」


 串に刺して焼いたタコに醤油をハケで塗り、更に焼いていく。おぉ、良い香りだ……!! 最高!

 ついでに試食として大海竜の白身肉も同様に刺す。ちょっと肉厚に切って切り込みをいれておいた。これも焼こう。


「あの! その呼吸? の仕方って何かスキルなんすか!?」


 おっと横槍というか、元気な質問がどこかから……ちっちゃい大人が!? なんだ!? 身長は140㎝くらいなのに大人びた顔と子供には見えないプロポーションをした女性が声の主のようだ。うーん、大人びた声が身長にそぐわない……。頭が混乱するなー、後輩みたいな口調も込みで。


「呼吸、は竜呼吸法というスキルで……えーっと、息吹っていうスキルからの派生? なのかな」 


 息吹は取得して使っていたが、いつの間にか無くなっていた。ドラゴンの奥さんから竜呼吸法というスキルを皆伝されたからだとは思う。実際にしているのは深い呼吸を繰り返す武術みたいな呼吸だ。なんでマニュアル操作なんだ……オートにしてほしい。

 すると見覚えのある、おそらくは土魔法を使っていた魔法使いの男性も会話に参加して来た。


「呼吸法……あー、 魔法使いにも似たようなのありました。殆どの人が外れスキル扱いしてて、まともに使ってないですけど。難しいし」


「呼吸は難しいですけど効果は半永続ですからね。竜の吐息は破格な性能してますよ」


「やはりあのステータスはそういうことですか……。そうなると魔素吸引法も派生すればもっと強くなるのかな……」


 ステータス? あ! もしかしてこの人、俺の戦闘中のステータスを見たのか。そういう魔法? スキルがあるのかな。名前は……ビアーロさんか。


「ビアーロさん、ステータスを見るスキルがあるんですか?」


「ああええ、鑑定スキルが変化しましてね。ステータスチェックというスキルで相手のステータスが見られるんですよ。今は見た目通りの性能をしたモンスターが多いので、使い方は主にモンスターに状態異常が効いているかの判断と、アイテムの品質の良し悪しぐらいですけどね」


 なるほどなるほど。ステータスチェックね。俺も鑑定スキル育てようかな。育てるにはモンスターに使えばいいのか? どうやら使えないと思っているようだが、俺は強いと思う。なんせ、スキルの強化値が分かるんだろう? モンスター相手でも強化されたステータスが見えたほうが対処しやすい。筋力値が上がるだけ、なのか筋力値と敏捷値も上がる、のかは大きく違う。しかもそれが効果時間が長いのか短いのかまでステータスを見ていれば分かるわけだ。対処しやすくなる。


 という感じの話をビアーロさんにしたら「なるほど……」と納得していただけた様子。魔法使いが斥候のような役割を持つのは微妙かもしれないが、後衛で視野を広く持てる魔法使いなら無駄にはならない知識だろう。前衛ってのは近距離での対応に全力を尽くすべきであって、余計な管理を任せないほうがいいからな。


 ちなみに、俺のステータスは戦闘中とんでもないことになっている。ただし、竜の吐息を続けている間だが。

 竜呼吸法スキルである『竜の吐息』は使用中、上昇するステータスを()()()()ことができる。分かりやすく言えば、時間で消えるバフを残し続ける破格の性能をしている。

 と言っても俺が持っている自己強化スキルはアッドの変化した『アドバンス』だけだ。しかしこれにスキルリキャストを早める『リブート』があると話は変わる。『アドバンス』は筋力値しか上がらないが、逆に言えば筋力値だけなら呼吸を続ける限り上げ続けることが出来るという訳だ。

 これが発覚したのは猪将軍をひたすら殴っている時だ。将軍に全然削れねぇぐらいの体力があったからこそ発覚したコンボである。ちなみに筋力値が上がると蹴り技なんかの関係か脚力も上がっている気がする。


 思うに、ドラゴンの強さの一端がこの竜の吐息なんだろう。自己強化を重ね続けるモンスターとかどう勝てっつうんだ。……いつか勝ちたいと思うのは俺の未練なのだろうか。

 ま、アークファウンは絶対俺が倒すけどな。


「さて、焼けたんで食いましょうか」


「「「おおー!!!」」」


「さぁさぁ皆さんどうぞ。とりあえず魚と野菜の一本ずつね」


 良い匂いを漂わせていたからか人が集まっている。遠巻きに眺めていたNPCも呼んで皆でバーベキューだ。魚串と野菜串と渡していく。お? 君は足で掴んで助けた少年じゃないか。遠慮すんな、ははは。


「やばい! めっちゃ旨い!」


「うおおっ! 最初の魚の油で全体がジューシーになってる! うまぁ!!」


「くーっ!! こんなときに酒があれば!」


「そういうと思いました! こちら、一杯500マネーです!」


「「「買ったぁ!!」」」


 ガトーショコライトさんが商売を始めた。いいんだけどね、色々タダで借りちゃってるし。

 ちなみに魚串の先端には大海竜の大トロを使っている。ビッグサイズだったので1個のアイテムを五分割した上で串の先端に刺し、焼く時に串を持ち手を下に向けて斜めに焼いた。こうすることで油が下の具材にまで染み込むのだ。鮎を塩焼きにする際に顔を下に向けるのは顔を油でバリッとさせるのが目的だと言う。その応用だ。……鮎の塩焼き食べたいなぁ。


「みゅう~!」


「気に入ったみたいだね、フラム」


「みぁう!」


 串から外して皿に乗せた魚と野菜をフラムは翼のついた腕で掴んで食べている。満足そうに苦手な野菜まで食べているが、後で手を洗おうな。約束だぞ?


「おう、ゼノンの旦那。戦闘もできて料理も絶品たぁ恐れ入ったぜ」


 バーベキューの言い出しっぺである酔ってべろべろになっている甚兵衛を着たおっさん……もとい「おっちゃん」とでも言うべきスタイルのアゴヒゲのプレイヤー。筋肉質で彫りも深いのだが、どうにも無気力に見える人だ。まぁ、酒を呑んだ姿しか見ていないので何とも言えないか。

 このゲーム、「酩酊」という状態異常があるのだとか。当然というか未成年は酒を飲めない仕様なのでどういった状態異常なのかは知らない。ふらふらするらしい。


「おれはけいべろ、っつう鍛治師だ。まぁ無名ではあるが面白い武器を作ってるつもりだ。

 こいつはゼノンの旦那への迷惑料として貰ってくんな」


「え? あー、じゃあ遠慮なく」


 銃を貰った。ラッキー。形状は直径50㎝くらいのマスケット銃と呼ばれるタイプだ。片手で持つにはでかい。折角だし鑑定してみるか。性能はっと……はぁ?


「あえて、これを俺に?」


「いやいや、むしろ、だろ? 使いこなせるのは今はゼノンの旦那くらいだと思うけどねぇ」


 ふむ、確かにこの銃「ディフィシットマスケット」を本当の意味で使いこなせるのは俺くらいだろうけども……えー、微妙じゃない? 名前の通りか?


「限度というか、最高火力はどれくらいなんですか?」


「さあな、壊れたらそれまでだ。ただ、100でビギナーズガンと同じくらいだ。500なら5発分、って考えると悪くないじゃないか? 改善の余地ありな試作品だけどな」


 お礼と言いつつ渡すのが試作品とは、食えねぇおっちゃんだ。ま、ありがたくもらっておくけどね。


「そんじゃ、俺もこれを渡しますんで、強化して貰えますかね?」


「あん? おいおいこいつぁ……随分と無茶な使い方をされてきてるな。それにこの素材も、追尾する雷だと?」


 あれ?


「もしかしてけいべろさん、過去視のスキル持ってます?」


「おう、まぁ、たまたまな?」


 おいおい、このおっちゃん、あの才能に溢れたセーベルさんですら持ってなかった鍛治師に必須な過去視スキル持ってるのかよ。飲んべえと思いきや侮れないプレイヤーだな。そもそも「ディフィシットマスケット」も特殊すぎる武器だけども。


「良ければ知り合いの工房で作業しますか? そこなら良い炉もありますけど」


「いや? 銃に必要なのは炉よりも構造だ。それにこの甲殻は天然の回路付きだぞ? 溶かしたら台無しだよ」


 そういって甚兵衛の懐に素材たちを仕舞うけいべろのおっちゃん。実際に懐に入れているわけじゃなく、アイテムボックスに入れているんだろうが……それちょっとかっこいいな。俺も真似しよ。


「イベントの終わりまでに仕上げてやるよ」


「じゃあ俺も資金繰りをしましょうかね。これもあることですし」


 ひょんな事から始まったバーベキューだったけど、なんだかんだ充実したものになって良かった。隣ではボロ儲けしたガトーショコライトさんがご満悦な顔をしていた。なかなかに強かだね。


「ねーねー、鳥の兄ちゃん」


 その声に振り向くと津波から助けた少年とその友逹らしき子供たちがじっと俺を見ていた。その目には感謝ではなく期待のようなものが感じられた。


「鳥の兄ちゃんとリージェスなら、どっちが強いの?」


「リージェス? みんなはリージェスを知ってるのか」


「うん、たまにばーとふりーとに乗せてくれるよ!」


「浜辺のモンスターも減らしてくれるし!」


「美味しいご飯もくれるの!」


 口々にリージェスとの思い出を教えてくれる子供たち。バルトフリートが言えない子がいたが。

 それにしても居ない所で話題にされるくらいリージェスは親しまれているようだ。あいつほんと、なんであの格好してるんだよ……見た目とのギャップがえらいことになってんぞ?


「そっか。でも俺とリージェスは知り合……友達だからなぁ……戦ったことは無いから分かんないな」


 子供たちに合わせて話をする。まぁ、映ってたPVを見る限りだとバルトフリート絡めた戦闘だと強そうだよな。後あの爆竹みたいなやつとか。生産職なのは聞いてるけどバイクと爆竹作る生産職って具体的に何?

 そもそも俺はリージェスに手伝いを求められているわけで……今回敵対することは無いかな。多分。


 ま、子供たちにもなつかれてるくらい人が良さそうなリージェスと敵対はしないだろ。俺が悪役にならない限りは。


「鳥の兄ちゃんもこの町を守ってくれるの?」


 おっと、そう来たか。うーん、ずっとこの町にいる訳じゃないし……なんて返せばいいんだろう。そして兄ちゃん()って……リージェスは「任せろ!」とか言ったのか? 言いそう……。

 よっしゃ、子供を不安にさせるのは良くないよな。折角だ、カッコつけていこう。


「俺は渡り鳥だからな、この世界を旅して回ってるんだ。だからここに住んでいる訳じゃない。

 でもリージェスとは友達だからな」


 でもまぁ、次の旅への仕度が終わるまではここにいるわけで。あの島から出られたら再度訪問するのも吝かではないわけで。ほんとに渡り鳥みたいだな、俺。見た目は猛禽類の鳥人間だけど、生態まで真似したいわけじゃないのに。


「少しの間だけど、この町にはリージェスと俺がいる。なら最高に最強だ。島の1つや2つ、守ってやるよ」


 助けた少年の頭をがしがしと撫でる。こういう時は力強い言葉が聞きたいもんだ。なら答えてやらなきゃな。大言壮語で良いんだよ、旅の恥は筆記体で書き捨てるくらいで丁度良い。


「さいきょー!」


「さいこー!」


「むてきー!」



 子供たちは安心したのか、叫びながら走っていった。全員が笑顔だったのは言うまでもない。少しでも不安を取り除けたのなら、カッコつけて良かったかな。

 無敵とは言ってないけどな!!


「ちょっと待ちなさいフラム。一応聞くけど手は洗ったかい?」


「ム? ミュンミュン」


 首振ったなお前! ちょっと!? 新品の服をタレ着いた手で掴んじゃ、あー、よじ登らないでー!


「これ、落ちるかな……」


「ミュゥ……クァー……フミュ…………」


 肩にくの字でぶら下がったフラムは欠伸をした後すぐに寝始めた。不安定な場所だろうに、すごく安心した顔をしている。随分となつかれたものだ。そのことを少しだけ嬉しく思う。


「守りきってやるさ」


 物語はハッピーエンドが一番だからな。



レビューをいただきました。ありがとうございます。


仕事柄不安定な投稿になってしまっていますがお陰様で頑張れます。



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