表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ピッキングアウト  作者: もぶ
威風の一角と造形の街
48/72

ゲイルムーヴ・ドリームライフ その11

 学校から帰宅してログイン、明日は土曜日だから長く遊べる。すぐにスライム狩りのために海岸に来たわけなんだが……ちょっと様子がおかしい。具体的にはあれだけいたスライムが数匹しかいないのだ。


「やばいな……狩り過ぎたか?」


「みぅ」


 まぁ、自覚はある。問題はドロップアイテムを集めなければいけない今の現状からすると分母が少なくなるというのは大きな影響を及ぼすということだ。

 そもそも魔法系のダメージとなると今の俺が使えるのは斬撃を3メートルくらい飛ばす《ラピッドスラッシュ》と電気を纏って感電させる《帯電》と魔力を消費するとちょっとだけ火の出せる《竜の吐息》の3つである。うーん、弱くね……?

 《竜の吐息》に関しては消えちゃった《息吹》の上位互換のようなスキルだし、火を出す方はあくまでおまけで戦闘用って感じじゃないんだよな。ケーキの上の蝋燭消す時の要領だから・・・大道芸的な?


「とりあえず……ヤドリギの二刀流で練習するか」


 霊木でできた剣に魔力を流す。こう、体の中で中心から流れる何かがあるんだよ。それを握り締めた手に集めて……振って放つ!!

 両手のヤドリギから解き放たれた斬撃によってスライムが2匹まとめて切り裂かれ、ポリゴンになって消えていった。


「よっしゃ! 上手くいった!」


 二刀流スキルがあるからか武器の性能か、案外簡単にできた。そろそろラピッドスラッシュも脳波認証で使いたかったんだよな。

 ただし消費魔力的に乱発はできない。魔力少ないんだよなぁ……。打てて6発? 魔力回復ポーションは買ったから5本あるけどちょっと貧乏性なんだよね、なんせ島育ちなもんで。


 残念ながらドロップは水魔妖の庇護膜が2つだった。腹立つぅ……。


「よし、次はフラム。初陣、行ってみようか」


「みぃ!? みゃうみゃう!!」


 フラムは少し驚いた後嬉しそうに「いいの!? 頑張るー!」くらいのテンションでスライムに向かっていった。島だと一切戦わせなかったからな。あそこはレベル差的にもフラムが戦うようなことになったら瞬殺されかねん。

 昨日の約400体も俺一人で戦ってたからか、フラムは戦いを待ち焦がれていたようだ。そこら辺は父親(ウルスラグナ)の血なのかな?


「まずは火の呼気からだ」


「みゃう! ひゅぅ……ぱぁぅ!」


 ドラゴンとはいえ猫サイズのフラムの口から巨大な火炎が出るわけはなく、出てきたのは野球のボールサイズの火の塊だった。ほぼ頭と同程度の大きさの玉を出していることを考えればやはり魔力の高さが関係しているのだろうか。

 そしてレベル差があっても腐ってもドラゴンというべきなのか、スライムは瞬殺されていた。


「みゃみゃう!!」


「よしよし、偉い偉い。一発で倒せたな」


「みゅ、みゃみゃう!」


「うん、一発で水魔妖の魔核を出したんだなー……そうかぁ、一回かぁ……」


「みゃみゃー!!」


 数匹しかいなかったとはいえ、これだけ騒げばスライムも逃げて離れていくわけだが、フラムは追いかけて追加で3匹のスライムを火の呼気で倒していった。


 そして俺の手元には4つの魔核が集まったのだった。


「……ありがとう」


「みゃう?」


 何度か回りのプレイヤーに「かわいー!!」と叫ばれていたフラムは貰ったらしい干し肉にかじりついていた。







「なるほど、運の数値かな?」


「みゃう」


 レベル1とはいえスライム4匹ではドラゴンの成長には繋がらないのか、レベルアップしなかったフラムのステータスを見て思い出した。異常に高い運は48と俺の5とは比較にならない。となるとこれはドロップアイテムに大きく関わっていると見ていい。にしても4個連続で落ちたことを考えてもレベル差とかもドロップ率に関わってくるのかな? そうだと言ってくれ……悲しくなる。


「どうすっかな……」


 実を言うとステータスポイントは貯めてある。称号【ジャイアントキリング・ハイリターン】の効果でブレイキングボア、千鳥駆、その他梟数匹に犬数匹を倒していた俺にはステータスポイントがや67も貯まっている。

 内訳で言うとブレイキングボアで15、千鳥駆が30、梟と犬で23だ。おそらくレベル差か等級でポイントが貰えるんだろう。梟と犬で少ない気がするから等級か戦闘回数で減ると見た。


 さて、このステータス貯金を崩すべきか。現実よりも簡単に上げられる運でドロップアイテムが変わると言うのなら上げない手は無い……。がしかし、新しくなった装備を見ればそれよりも敏捷を上げたほうが強いムーヴができそうなんだよな……。うーん、悩む。


 んー、決めた。こういうのは悩む理由で考えればいいんだよ。そもそも十数回のチャレンジとはいえ一度もドロップしていないのであれば、もはやスライムのレアドロップなど出ないと割り切るべきだ。今までの経験からして【ジャイアントキリング・ハイリターン】で貰えるステータスポイントはこの称号を持たない他プレイヤーと比べて()()()()と見ていい。なら多少無駄遣いしようが問題ないように見えるが、むしろこう考えるべきなのだ。


 すなわち『強敵を倒せるようにステータスを上げる』と。ドロップアイテムなんざ数で補え。犬や梟で稼げるうちにステータスポイントを使いまくって運に回せばいい。

 そもそもセーベルさんやワーフガンドさんに武器を格安で作って貰える今の状況が既に運を使い果たしているとも言えるしな。よし、自己(自分への)正当化(いいわけ)終了!




 体力 106/106

 魔力 28/28

 筋力値 35 ↑65 

 耐久値 25 (防御力+118)

 知力値 3 

 敏捷値 13 ↑30

 器用値 5 

 持久力 10 ↑30

 運   5 




 というわけで、攻撃の威力を上げるための筋力値に30と動きの早さと脚力を上げるために敏捷値に17、更に永く動く為に持久力に20割り振った。そもそも持久力が低くても戦えていたのは手数じゃなくカウンター気味の戦い方をしていたからだ。だがスライム狩りのときに思ったのだ。

 自分から攻撃するときに続けられない、と。


 当たり前と言えば当たり前だったが、動きを止めたりマウントを取ったりで誤魔化していたものの持久力が無いと攻め続けるのは難しい。それに新しい装備はどう考えても短期決戦のアタッカー気質だ。今までの戦い方を捨てるわけではないが、凝り固まってもいけないだろう  。新装備の防御が低い代わりに自重を軽くするというのも、足を踏みしめて耐えるというよりは力に抗わずに距離を取ってまた詰めるという戦い方のほうが良さそうだしな。


 ちなみに両手に装備した霊木剣ヤドリギ2本分とウィンドアンカーでプラスされるはずの攻撃力だが、それはステータスに反映されるわけではなくダメージの計算されるときに関わるらしい。セーベルさんに聞いた。ま、当て方や場所が計算に影響するのは分かる。二刀流でも片方しか当たらないだろうしな。

 そして防御力のほうも装備に付きその場所への耐久値に加算するだけでないまいち分からないのだが、どうやら肉体へのダメージを耐久値で計算しているらしく、装備で追加される防御力や当たり方なんかで減らすことができる。どうやら耐久値は頑丈さという感じで、痛みへの耐性の意味合いが強いようだ。まあ怯みとかは耐久値を参照にするらしいし我慢強さで合ってるだろう。

 武器あるいは防具になる装備で防御力を上げたところで素っ首落とせば死ぬわけだ。耐久値が高いと切り落とされにくいとか、物理的な目潰しに耐えやすい的なことらしい。高いほうが継戦能力は高いんだろう。四肢が千切れるとどうしても隙ができるからなぁ……。


 さて、切り替えていこう。


「フラム、他のスキルも試そう。今度は月の雫を使って」


「みぅん……」


「あれ? あー、今は使えないのかな」


「みゃん」


 月の雫、名前からして月が出てないといけないのだろう。夕方とはいえまだ太陽は沈みきっていない。条件を満たしていなくて仕方ないな。


「じゃあウィッシュスターも無理かな」


 (スター)だもんな。こっちも夜じゃないと使えないだろう。と考えていたら足下のフラムが首を振っていた。


「みゃんみゃん」


「え? 使えるの?」


「みゃう!」


「よし、じゃあ使ってみよう。攻撃技かな」


「みゃう……」


 白磁のドラゴンであるフラムが白い魔力を溜めているのを俺は大山猫の眼で見る。白いのは初めて見るな。大きく三回明滅した魔力は螺旋を描く線となって空に登って行った。……おしまいか?


「フラム、この後はどうなるの?」


「みゅ?」


「分からないのか」


 うーん、どうなる? 空に登るのは星が空にあるんだろうし納得なんだけど……夜にならないと答えが出ないとか? ウィッシュスター(星に願いを)だし。


 するとゴゴゴゴゴと地面が大きく揺れ始めた。驚いたフラムが俺の肩に乗って顔に抱き付いてきた。そのまま揺れは大きくなり、何か嫌な予感がして空を見上げると……


「流れ星……違う隕石か!?」


「みゃう!?」


 遥か天空から飛来するのは隕石、消えて無くなる流れ星ではなく質量を減らしながらも消えることなく地上に墜ちる星の欠片。なるほど、ウィッシュスターは隕石を落とすスキル……待て待てどこに!? フラム、どこに座標設定した!? あんなんどこに落ちても被害が出るだろ!


 幸いスピードは目で追える設定のようだが威力は未知数だ、軌道から見て遠洋か!? 津波警戒! 俺やフラムを見ていたプレイヤーや周囲に何人かいたプレイヤーも津波が起きれば漏れなく飲まれるだろう。


「全員! 海から離れて!!」


 叫んでみたが何人か反応できてない! ですよね! あーもう、さすがに寝覚めが悪い。手荒になるが人命救助ということで一つ!


「よっ!」


「え!? 何!?」


 反応できてなかった男性プレイヤーの肩を右の()()()()()左足で空を蹴る。その踏み抜きで空中バク転をして男性プレイヤーをぶん投げる。他のプレイヤーも足で腰を掴んだり手で首を掴んだりしてぶん投げて砂浜から離していく。間に合っ……てなさそう! なんか小さな男の子がいる!ランパート! 


 隕石が遠い海面に着弾した。音と衝撃に備える為のランパートで子供を守り、起きた波よりも早く子供に近付いて左足で掴み右足で地を蹴る。結構器用なことしてるなぁ! そのまま空を蹴って近くの広場、こないだ兎調理したとこだな、に着陸を試みる。リブートのお陰で何度か空踏みが使えた。空中で片足飛びするとは。ちなみにけんけんぱはホップスコッチというらしいよ、ローマ帝国時代にまで起源は遡るんだと、はいコートをはためかせるように腕で調整して右足で着地! 倒れるとあれなのでアンカーフッドで足裏を固定!

 左足で掴んでいた少年を離す。無事かな?


「少年、大丈夫か? 怪我してない?」


「鳥さん! もう一回やって!」


「えぇ……」


 なんか遊びだと思われてる……。


「誘拐……」


「いや捕食シーンだろ」


「鳥が餌を巣に運んでる絵そのままだったよね」


「人命救助! 人命救助ですから!!」


 回りにいたプレイヤーからの声を掻き消すように叫んだ。俺も鳥だなーって思ってたけど。


 背後では押し寄せる大波が浜に近づいていた。浜に向かっていった何人かのプレイヤーは無視せざるを得なかった。危ないって。


「ビッグウェーーブ!! ひゃっはー!!」


 何人かは魔法やスキルで波に攻撃して波を壊していた。俺も一人なら混ざってたかも。そしてサーフボード抱えてほんとにサーフィンを始めたやつはなんなんだ?


 程なくしてそのまま飲み込まれていった。うん、犠牲は忘れない。というかお陰で冷静だわ。地属性魔法で壁を作っていた何人かは自分の作った壁からは離れていたから無事のようだ。慢心しないのは偉い。


 あ、なんかモンスターが打ち上げられてる……。大量に。

 キレ気味です……よね! 戻らないと!


「あぶない!」


「え?」


 俺は空中を蹴って移動し、地属性魔法を使っていたプレイヤーの背後から噛みつこうとしていた魚モンスターを蹴り飛ばした。向かってきたもう一匹、角のある魚を足で鷲掴みにしてそのまま踏み潰す。ウィンドアンカー大活躍だ。


 そして聞こえたのはアナウンス。


《モンスター大量発生、凶暴化確認!! スタンピード!!》


《迫り寄る驚異から国を守れ!!》


 うわーうわー!! ごめんなさい!! でも責任はとりますよ鳥だけに!! なんつって!


「おいコラー! 責任とれ鳥ー!」


「一人でやれよ、鳥ー!」


「獲物はよりどりみどりだぞ鳥ー!」 


 他の人に言われると、なんか嫌だな。だじゃれ大会始めやがって!

 とりあえず魚共、そこに直れそして素材落とせやー!! 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ