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ピッキングアウト  作者: もぶ
威風の一角と造形の街
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ゲイルムーヴ・ドリームライフ その10

 

「これだけやって出なかったんですが、実は魔核とやらは魔法攻撃で倒さないと落ちない的なアイテムなんですか?」


 工房に着くなり文句を言ってしまった俺に対し、セーベルさんは困惑しながらも考えをくれた。


「え、分かんないけど……そう、かもね。庇護膜は魔素だけは通すわけだから……多分、魔法攻撃だけかも」


「マジですか」


 セーベルさんの考えで合っているかは分からないが、もしそうだとしたら俺の三時間を返して欲しい。


「ところで……庇護膜は何個あるの?」


「398個」


「なんかごめん……」


 いやセーベルさんは悪くないんだけどね? 俺がムキになったり猩々双棍振り回して遊んでたのが悪いんだ。つか魔法攻撃? ビギナーズガンは使えないから……詰みでは?

 あ! ソニックスラッシュあるわ。行けるかも。というかさっき10回くらい使ったような……でもドロップしてないのか……。物欲センサー異常あり?


 と、異常があったのはスライムのようで。疑問をくれたのはワーフガンドさんだった。


「スライムがそんだけ出てくるのは珍しい……スタンピードの前触れかもしれねぇな」


「スタンピード」


 聞いたことがある……。魔物とかが大挙して押し寄せたりする突発的な行動だ。というか魔物関連以外で聞いたことない単語だな。確か先を争って逃げ出す魔物によって……ん? ()()()()? 何から?


「スライムは環境の変化に敏感だって話だ。スタンピードを引き起こす何かが現れると我先にと逃げ出すらしい。スライムを狩ってたのはどこだって言ったか……」


「勧めたのはグイネヴィア側の海岸だったよね」


「そこでやってました」


 言われたところにしか行きません。そもそも地理に詳しくないからな……。


「グイネヴィアが侵攻するとは思えねぇから……海底に何かいるのか?」


 海底……え? 行けって? 無理っす。言われたところで行けません。そもそも海中って探索可能なの?

 とりあえず明日またスライムを狩るのは確定かな、もう夜も遅いからね。


「ところでゼノンくん、これ、完成したから着てみてよ。バラバラのアイテムだけど組み合わせて着てくれると能力が噛み合うようになってるから」


「あ、了解です」


 着る、まぁ装備するわけだけど……お? これ靴? こっちはコートというより外套……、何この紐……。


「どう着るんです?」


「アイテムボックスに入れてから装備選んだ方が早いよ」


 はーい。一端収納してから装備! 折角作ってもらったので確認もしていこうな。上から……はい?


 呑梟の迷彩外套 評価:★8

 鳥型モンスターの素材を大量に使用した外套。風切り羽を使用したことで風に対する耐性が付与されている。

 重量:20

 装備条件:無し

 効果:重ね装備可能

    アクセサリースロット②を追加

    防御力+30

    迷彩(木目)

    迷彩(闇夜) 

    風魔法耐性(特大) 突風耐性(特大)

 

 ウィングブレイカージャケット 評価:★8

 鳥型モンスターの素材を大量に使用したジャケット。風切り羽を使用したことで風に対する耐性が付与されている。

 重量:15

 装備条件:無し

 効果:重ね装備可能

    防御力+40

    風魔法耐性(特大) 状態異常無効(混乱)


 梟夜羽(ふくろうよばね)のシャツ 評価:★9

 大型猛禽類である呑梟の夜羽根を使ったカッターシャツ。リバーシブル。

 重量:3

 装備条件:無し

 効果:防御力+15

    重量半減(全体)

    風魔法耐性(特大) 突風耐性(特大)


 ノーフォーマーボッカーズ 評価:★8

 鳥型モンスターの素材を大量に使用したニッカポッカ。

 重量:18

 装備条件:無し

 効果:防御力+18

    落下ダメージ耐性(特大)


 ウィンドアンカー 評価:★8

 大型猛禽類の脚を模したブーツ。

 重量:40

 装備条件:無し

 効果:攻撃力+25

    防御力+15

    系統「蹴撃」スキル威力上昇

    系統「蹴撃」スキルに追加裂傷ダメージ

 

 おかしい、防御力とかは低めだけど効果が凄いし、何よりその評価だ。★8って俺の料理人系の称号で考えたらプロ顔負けのレベルってことだろ? それを初めて扱う素材で叩き出してるってことか?

 ちなみに比較で言っておくが、俺が作った猪王の突貫服は防御力+125だけど評価は★3だ。俺の大罪が判明したのでは? 評価★3でこの効果ならセーベルさんに渡してたらどうなってたんだ……。


「軒並み評価高すぎじゃないですか?」


「そう? 服のデザインはリージェスだから僕だけの作品じゃないしなぁ……。あ、ちなみに鏡の代わりにステータス画面で360度見られるようになってるよ」


 何でもないように言っているが、恐らくこのゲームの常識的には破格の装備なんだろうな。リージェスも言っていたがセーベルさんは無意識だろうけど生産職の中では群を抜いた位置にいるに違いない。後、服扱いなんだね、プレートアーマーを着ていた頃を遠く感じる。

 にしても、こうなってくるとアクセサリーもヤバそうだな。どれどれ……。


 大嘴(おおくちばし)(めん) 評価:★9

【スロット②】

 猛禽類の嘴を模した面。隠れるのは口と鼻のみ。

 効果:防御力+10

    突風耐性(特大)


 神風飾緖(しんぷうしょくちょ) 評価:★10

【スロット②】

 千鳥駆の素材から作られた金色の飾り紐。日に照らされると翡翠の輝きを放つ。

 効果:超過加速耐性(特大)


 風切羽(かざきりばね)のベルト 評価:★9

【スロット④】

 大型の鳥類の風切り羽を紡いだベルト。梟を模したバックルを操作することで効果を発動できる。

 効果:迷彩(木目)

    迷彩(闇夜) 

    

 千鳥駆のメモリアーク 評価:★10

【スロット①】

 千鳥駆を宿した記憶を運ぶ方舟(メモリアーク)。左耳に付ける風車(かざぐるま)と羽根をあしらったピアス。風車によって速度を観測する機能がある。

 効果:装備時に速度を観測し、一定速度観測後に記憶装帰(きおくそうき)状態へと移行する。


 だからぁ!! 評価がおかしいって!! ★10って満点出してるじゃん!!

 しかも普通に渡されたけどメモリアークって何!?


「あ、アクセサリーを付けるスロットは普通は5個だよ。頭、首、腕、腰、脚なんだけど、ウィングブレイカージャケットにスロットを付けることで2つ付けられるようにしたんだ。嘴マスクはリージェスの案だったんだけどちょっと昔っぽいかな。全体的には落ち着いた印象になったけど今度は神風飾緒が派手すぎたような気もするんだ、でもメモリアークが左耳にしか付けられないから右側に飾緒を付けるとバランスが取れて……」


 う、セーベルさんのマシンガントークが始まったので聞くタイミングを逃してしまった。いや多分説明はされているんだけど……文章問題みたいになってるな。作者の気持ちは『昂っている』で正解になりそう。


 何より今の俺の見た目よ。こう、茶色のカッターシャツにスーツのようなジャケットはカッコいいし、鳶職なんかが履いている裾の広がるズボンも意外としっくりくる。

 でもさでもさ? 木目調なロングコートと思える呑梟の迷彩外套だけならまだしも、ペストマスクの目を隠さない猛禽類バージョンのようなマスクのせいで悪役感が凄い。不審者とかじゃない、悪役なんだよ。軍服に付いているような飾緒があっても悪役寄りの見た目をしている。無言を貫く暗殺者的な感じ。

 そして脚装備。梟系のアルファベットのエックスのような形をした黒い脚だ。うん、これ脚だよね? ブーツとかじゃないよね? うわぁ俺の意思で鳥の脚が動いてる!? どうなってたんだ!?


 見た目が鳥人型モンスターなのを除けば強いし……いや、まぁ猪の頭を着るよりは現代人なんだけどさ。く、折角作って貰ったんだから文句は言えない。……色合いは落ち着いててカッコいいし。うん、見た目は怪しい人だけどいいんだ、猪頭よりは悪目立ちしないから。

 

 未だ続くセーベルさんの話に頷きながらどう逃げたもんかと思考を始めた俺に助け船を出してくれたのはワーフガンドさんだった。


「おう、ゼノン。お前さんから貰った木の枝だがな、ありゃ霊木(れいぼく)の枝だったぞ。どこで手に入れたんだあんなもん……お陰で寄り道しちまった」


 霊木? ついでってことで渡した装備できる木の棒たちは島ではその辺に落ちてるようなものなんだけど……。ただの(オブジェクト)じゃ無かったわけか。ここら辺の木は再生しないのかな? 


「あれ全部霊木だったんですか?」


「いや、3本だな。使って魔力が伝わりやすいのがあったんじゃないか? それのことだよ」


 どうしよう、分からなかったとか言えない雰囲気だ。


「んで、出来たのがこれよ。1本は素材を知るためにバラしちまったから2本だけだ。セーベルの水魔妖の庇護膜を使った理論を俺なりに生かしてみた。魔力の浸透性を上げて霊木の魔力吸収の能力を再現したシロモノだ。まぁ原初の火がなけりゃ()()()()()なんてこたぁ出来なかったけどな。火の使い方も分かったしこれでドラゴンの素材にも手ぇ出せるぞ」


 なんか気になる文章が聞こえた気がしたけどまぁいいか。鑑定鑑定っと。


 霊木剣【ヤドリギ】 武器種:剣 評価:★10

 深い森に育つとされる霊木から落ちた枝を太古の技術によって鉱石素材と融合させた剣。古代では降霊術の儀式に使われていた。

 効果:攻撃力+58

 モンスターへのダメージ発生時に武器耐久値を回復


 なんかヤバイこと書いてあるね。うん、もう驚くのも疲れてきたわ。


「ちなみに、霊木ってのはエルダートレントっていう魔物のことだ。木霊(こだま)がレッサートレントのことだな」

 

 一切気付かなかったけど何体か俺の巻き添えで火の海になってそう。ごめんなー。


「ところで耐久値を回復するのって本来はどうやるんですか?」


「同質の素材を持ってきたら俺たち鍛治師なら簡単だ」


「システム的には鍛治再生スキルだね」


 なるほど、じゃあ猩々双棍は治せそうだ。お願いしまーす!


「おい、これ霊木だぞ」


「マジすか」


 偶然って凄いね。そしてどうやって見分けてるんだ? 過去視スキルがないとダメなのかな。

 木の棒を数本取り出してワーフガンドさんに見てもらって霊木を2本見つけてもらった。どうやら装備できない木の棒にも霊木の枝があったらしく耐久値の回復の方は問題なさそうだ。


 さて、一旦ログアウトしよう。寝て起きたらテストも兼ねてスライム狩りだ! 木の棒とかビギナーズ装備のせいで忘れてたけど耐久値のある武器になるってことはその素材も兼ねて魔核の必要数上がった気がするんだよなぁ……。気のせいかな。


 新装備への期待半分、終わりの見えない作業への憂鬱半分って感じ。やるけど。




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