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ピッキングアウト  作者: もぶ
威風の一角と造形の街
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ゲイルムーヴ・ドリームライフ その8


「つまり、他国からの密掘が相次いでいるから国として法整備を進め、そのせいで国の所属がないプレイヤーは採掘作業によってレッドネームになってしまうし捕まると強制採掘の労働義務が課される。

 そして魔鉱物系素材は価格が上昇してコンテストどころではなく。民衆からの訴えに対し、ナルト・リソーストレイトは期限までに無断採掘を行う()を突き止めることで強制採掘で得たアイテムを補填として差し出す考えを示す、ということ?」


「そういうことだ、セーベル」


 すごいや、分かりやすいまとめ方だ。ちなみに『捕まると~』以降は掲示板によってバースライトが集めた情報を元にリージェスがNPCに裏付けを取った形になる。俺? 何もしてない。強いて言えば料理作ってた。


 あの後、親方であるワーフガンドさんが原初の火(によって燃えているビギナーズプレートアーマー)と歴戦竜のメモリーを持って鍛治場に籠ると言い出したのでプレイヤー四人とフラムでイベントに対する談義に興じていた。

 話をまとめてくれたセーベルさんは納得顔だ。


「そうか、魔鉱物が手に入らないとなると高位のモンスター素材が有利になる。それでリージェスはゼノンくんを連れてきたんだね」


「やめてくれセーベル、見透かされると恥ずかしいだろうが」


 照れたリージェスを見て愉快そうに笑ったセーベルさんは次いで扉の閉ざされた鍛治場の方を見る。


「師匠がコンテスト所じゃないって言ったのは素材が高位過ぎたってことだろうね。手に入る魔鉱物を工夫すれば勝てるくらいの素材なら許されたんだろうけど、どう考えてもオーバースペックだったし」


 なるほど? そういうところはゲームバランスを前提にしているのか。ピッキングプレイヤー(俺のようなスタート地点がランダムだったプレイヤー)は回りに普通に生えている草を拾っただけでも、それが高位の素材になりかねないからな……。ちなみに俺が普段よく使う木の棒はこっちでは呑梟の矢羽根(5000マニー)より高く買い取りしてもらえるらしい。そこら辺の木の棒だと0マニーらしいが。名前は一緒でも素材が違うということなんだろうか。


「セーベルさんはどうします? 素材買いますか?」


「うーん……」


 悩む素振り、というにははじめから答えは決まっているようなセーベルさんの態度だが……物造りの意地ってやつかね。


「やめておくよ。流石にフェアじゃないし……それに、コンテストどうこうよりは真面目に作ってみたい。ゼノンくんが良ければこの千鳥駆のメモリーを使ってアクセサリーを作りたいんだ。ただ……」


「ただ?」


「僕のような凡人に作らせるよりは、師匠の手が空くのを待った方がいいと思うけど」


 そういったセーベルさんの顔は自分で言っているにも関わらず悲しそうで、寂しそうで。目の前のアイテムを使って作りたいものがあるのに、自分では師匠に勝てないと諦めているようで……。

 うーん、そんなに悩むことかな。


「そ「まぁたそんなこと言ってんのかセーベル!!」」


 バン、と最早破裂音そのものな音を響かせてワーフガンドさんが鍛治場から出てきた。かじばの馬鹿力とは言うけどそういう意味じゃないんだよなぁ……。後フラムが怯えるからやめてください。そしてフラムはビビらないでください。君はドラゴンだぞー、つよいぞー。


「お前さんには何度も何度も言い聞かせても無駄みてえだけどな、俺から言わせれば充分一人でやっていけるレベルの鍛治師だ。隣にリージェスとかいう変態がいるから自分が霞んで見えているだけだ」


「おいおい、変態は酷いぜ師匠」


 ごめん、リージェス。ゲームの世界でバイク完成させたプレイヤーだと考えるとちょっと擁護できない。


「いい機会だから身内以外からの意見を聞こうや。ゼノン、バースライト。てめぇらは鍛治師に何を求める?」


 おっと、そう来たか。身内同士だと言いづらい、ということはワーフガンドさんとしては悲観的なセーベルさんに発破をかけて欲しいということだろう。

 と言っても鍛治師プレイヤーに何か求めたことが無いしなー。以前やっていたアトラクトファームは武器性能よりもモンスターの育成が重要なゲームだったから、俺はゲーマーとしての考え方をしたことがない。

 こういうとき頼りになるのはゲーマーであるバースライトの意見だ。さぁ、クリティカルな答えを出してくれ。


 という俺からの期待の視線を受けてかバースライトが答える。


「俺はオリジナリティーですかね。多くの鍛治師がいるなかで誰を選ぶか、となるとその人の作る個性ある武器が一番の指標だと思います」


「なるほどな。それもあるだろう。ゼノンはどうだ?」


 バースライトととしてはオリジナリティーが答えだと。ぶっちゃけた話、ゲームでは重要だよね。

 でもお抱え技師、なんて言い方もあるくらい個人を選ぶ風潮は世界的に古来からあるよな。それは腕を信用して仕事を任せられる人である、というその生産者・技術者への信頼があってこその……お? これか? これが答えか?

 鍛治師(生産職)に求めるものは信頼。うむ、確かにきれいな答えな気がする。


 でもここはゲームだし、俺は思っていたことを言おう。さっきワーフガンドさんに邪魔されたやつね。


「何も求めません。強いて言えば作ったものが強ければいいです。ただ使うかどうかは俺が選ぶし、使うからには俺の腕で強くします」


 そう言い切った時、バースライトもリージェスも、セーベルさんも唖然としていた。が、これが俺の考え方だ。

 そもそも、「一般的に強い」武器があったとして、まぁオープンワールドのゲームにもテンプレ装備とか必須武器なんてものがあるだろうけれど。「一般的に強い」=「俺が使って強い」とは限らないわけで。しかもVRゲームで大事なのはそれこそ自分に合うかどうかだろ? 誰が使っても強い武器、なんて考え方は淘汰されるようなゲームだと思うんだよね。なんせ剣を振ったとして当てられないなら強いも何も無いし。

 勿論防具や魔法は別だと思うけど、それだって動き安さと唱えやすさ、みたいな個人差は顕著に現れてくると思う。


 簡単に言えば、当たって強ければいいし、俺が使いやすければいいし、それが強いかどうかは俺次第と言うことだ。但しあからさまなネタ装備は除く。


「ハッハッハ! 良い答えだ、ゼノン。まったく、最近の若いのにしては古くせぇ考え方してるぜ。ハッハッハ!」


 一頻り笑ったワーフガンドさんは真剣な目をしてセーベルさんに向き合う。


「俺が造った剣を使っても弱い奴等なんざどうでもいい。俺は最高の仕事をした、なら最高の結果を出すのは使う奴等の仕事だ。それが鍛治師に必要なプライドだ」  


 鍛治師は最高の仕事をする。依頼人は最高の結果で答える。なるほど、俺好みな考え方だ。

 武器をどう使うかは人次第、だしな。ゲームだとPKがいることが多いけど、そのPKの武器を造った人が悪いって言われるのはおかしいもんな。武器の供給を断つのも戦略としては面白そうだけど。


「なぁセーベル。お前さんは最高の仕事をすればいい。俺たち鍛治師は最高の武器を造るのが仕事だ。その武器を鍛え磨くのはその武器を振るう奴の仕事だ。

 俺達はもっと自由で良いんだよ」


 ふむ、鍛え磨くのは俺たち使う側の仕事か。独特な言い回しだが言い得て妙だな。

 俺にとって慣れた武器に入る木の棒は今や剣になり盾になるほど使いこなせているが、それは造られた武器でも同じことが言えるわけだ。

 作り手が最高の仕事をしたならそれを使いこなすのは俺たちプレイヤー次第になる。使いこなすまでを鍛練、研磨と呼ぶとしたら、俺たちも武器を育てているわけだ。新品の武器防具に命を賭けられますか? みたいな話だな。使い慣れた武器防具のほうがいいに決まっている。


 雷に打たれたような、衝撃を受けた顔をしたセーベルさんはぶつぶつと言葉をその口から漏らしている。


「鍛える……磨く……水魔妖の庇護膜……庇護? なら守られる核のような……いける、……多分あれなら、…………!!」


 と思ったらぐるんと振り替えって俺の肩を掴んだ。


「ゼノンくん! お願いがあるんだ!!」


「え、はい、何ですか?」


 人が変わったように目がギラギラしている。びびったのかフラムは既に俺の膝の上から離脱していた。


「スライムの魔核を確保して欲しい!」


 スライムのまかく? って何?


「何ですか、それ」


「スライムが持つ魔核、コアは非常に壊れやすくてドロップしにくいレアアイテムなんだけど、庇護膜によって守られている魔核が変質することでスライムも属性を変えているんだ、そして庇護膜は空気浸透を防ぐはずなのに魔核の変質は防がない、恐らく空気の中の魔素や魔力だけを吸収する特性があるんだと思う、つまり水魔妖の庇護膜で武器をコーティングしたり魔核を取り込んだ武器を作ればそれは魔力を吸収しながら育つ武器になるかもしれないんだ!!」


「な、なるほど、分かりました取ってきます」


 ちょっと俺もびびりました。凄い剣幕と早口だった……。隣でバースライトがリージェスに話しかけている。


「いつもセーベルガーさんってあんな感じなんですか?」


「あれは珍しいぞ。新しい理論が思い付くとああなる。セーベルがいないと俺の羽流登賦鯉兜は恐らく完成しなかったくらいに天才だからな」 


 マジか。


「セーベル、その理論俺にも聞かせてくれや」


「はい! まずですね…………」


 ワーフガンドさんの問いかけによって解放された俺。この一瞬でどっと疲れた……。膝に戻ってきたフラムを撫でて心を落ち着かせる。うん、かわいいかわいい。


「なるほど、それなら大量の素材が欲しいな」


「そうですね。なら戦闘用の武器防具も作らないと……」


「武器のほうは俺がやろう。大量に倒すとなると必要なのは動きやすさだ、鳥素材を使ってくれ。買い取りに使う金は俺が払うから気にしなくていいぞ」


「ありがとうございます、師匠」


 話が終わったのかワーフガンドさんとセーベルさんが俺のほうを向いた。あ、終わりました? 早口だからか早かったですね。


「おう、ゼノン。明日から海岸でスライム狩りをしてくれや。最高の武器と防具を渡すからよ」


「任せといてゼノンくん! 最高の防具を作っておくから!」


「あ、そうですか。りょうかいです」


 あれれー? いつからスライム狩りをすることになっていたんだろう? 魔核? とやらだけでよかったんじゃないのー? というかイベントは?


 どうやら第一回イベント、俺だけ参加が遅れそうです。






 ん? ()()()()???

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