↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ピッキングアウト  作者: もぶ
威風の一角と造形の街
44/72

英雄起譚 ~威風~


-海峡公国リソーストレイト-


 大陸と大陸が海によって阻まれている。そしてその間には隆起によって生じた小さな島。いつしか人が住みつき、町が起こり、大陸と大陸、また少し離れた大陸とも橋によって繋がり、実に四つの国と繋がることになる頃には人口も増えていた。

 何処の国も外交の利便性の為に発展させるほど当時は裕福ではなかった。そこで取り囲む四カ国によって初代リソーストレイトが擁立され、海峡公国リソーストレイトとして四つの国の庇護下に入った。海峡公国の起こりは人口の移動であり、その要因は「自由さ」だった。


 しかし、五年程前に発掘された【魔鉱物】と、活発化した【災厄】によって、海峡公国リソーストレイトは岐路に立つことを余儀なくされていた。


「これが魔鉱物ですか?」


「ああ、そうだ。こいつは取り込んだ魔力を反映させる。魔石、魔晶が魔法を使う媒体になるが、魔鉱物はその魔石や魔晶を嵌め込む武器の素材。いわゆる魔剣の種だ」


「魔力を反映……って伝導性があるってことですか?」


「そういうことだ。おい、リージェス。お前さんも……ってまぁた聞いてねぇよ……」


「あはは……。リージェスはずっとあれに夢中ですから」


 魔力に強い伝導性を持ち、その魔力に耐えることができる魔鉱物には様々な種類がある。魔鉄、魔銅などと呼ばれる価値の低い物から魔銀という強度は無いが魔力を強くする物まである。そういった物が今までに発掘されなかったわけではない。


 近年見つかったのは魔鉱物の中でも一際、希少価値の高い物だった。


「これがマギアゾート。この世界で最古の魔剣に使われた魔鉱物であり、この国がドミナディから狙われる原因だよ」


 小さな瓶に入った液体金属。緑ではなく、青でもなく、青磁色の魔鉱物が発掘されたのは五年前。国を動かしての大規模な採掘が行われたが、見付かった量は決して多くは無く。四つの隣国に求められては小国であるリソーストレイトに断る術もなく。

 一時は大規模な採掘の終わった現場を公開し、四カ国からの採掘の催促に不可能だと答えることができていたが……。




「災厄が目覚めたらしい。冒険者ギルドの話じゃ一番ヤバい七曜(しちよう)らしいぜ」


「つっても七曜なんてお伽噺だろ? まだ七罪(しちざい)とか七星(しちせい)のほうが恐ろしいぜ」


「馬鹿(バッカ)お前、七曜ってのは伝説級(レジェンド)の化け物たちだぞ? 七罪、七星とは規模が違うんだよ」


 酒を飲みながら話す男たち、井戸端会議の主婦たち、町を駆ける子供たちの会話でさえも、目覚めた災厄のことで持ちきりだった。

 七曜と呼ばれる七匹の魔物。否、国家が総動員すれば退けられる総動級(ジェネラル)の七罪よりも、ただ過ぎるのを待つべきと言われる天災級(レイド)の七星よりも、語(・)り(・)継(・)い(・)で(・)い(・)る(・)こ(・)と(・)が(・)奇(・)跡(・)と呼ばれる伝説級(レジェンド)の七曜とは、もはや神に近い存在である。


 七曜の目覚めがこの世界に何をもたらすのか。退廃か逃走か。それとも国を越えた人類の一致団結なのか。

 しかし真っ先に引き起こされたのは海峡公国リソーストレイトへの隣国ドミナディの侵略であった。


「厄災に備えるためか、何か大国として意地があるのか、ドミナディはナルト公王に外圧を掛けた。『マギアゾートを含めた魔鉱石とその採掘権を寄越すか、侵略されるか選べ』ってな」


「でもそんなの他の三国が許さないんじゃ?」


「マギアゾートはもう採れない。他の魔鉱石なら自国でも取れる。他の三国からすればドミナディが掘ろうがリソーストレイトが掘ろうが変わらないんだよ。買い取るものは俺たちのような職人が仕上げた武器でいいんだからな」


 海峡公国リソーストレイトは物作りの盛んな国である。沿岸部では海産物を利用した保存食や塩を生産し、貝を使った工芸品や独自の染色法で織物を生み出す職人がいる。内陸部では優れた技術者を何人も排出している懐の広い鍛治組合があり、その鍛治技術はどの国よりも水準が高い。工芸品、芸術品だけでなく料理や衣類まで手掛けるこの島はどの流派にも属さずに教えを乞うこともできる。それがリソーストレイトの「自由さ」であり、幅広く開いた門戸こそが風習だった。 

 

 だが、侵略を許したらこの島は変わってしまうだろう。


「このままじゃあ、いよいよおしまいかもな」


 鍛治職人である男にとって、仕事と趣味は同一であり大きく異なる。仕事なら作らなければいけない、趣味なら作っていい。同じ鎚を握るにも心の昂りが違うのだ。侵略された国家の行き着く先など黒く染まった暗闇だ。或いは採掘の労働力として使われて一生が終わるだろう。

 惜しむらくはこの新しい弟子二人に鍛治の技を継承したかった。一人は勤勉だが臆病、もう一人は怠惰だが自由。二人の鍛治師としての腕を自分の力で磨きたかった。


「セーベル、これどことどこが繋がれば回るんだ?」


「見せて……。あー、強い運動に耐えられてないね。ほらここ、凹んでるし少し焼けちゃってる」


「魔鉄じゃぁ無理ってことか。また採掘しなきゃいけねぇな」


「というか回転したとしてゴムが無いよ」


「そこはモンスター素材だな。海棲生物なら干せば行けるだろ」


「行けるかな……」


 その新弟子たちは何かを作ることに夢中だが、師匠である男とて一流の鍛治師である。そして師として、先達として、物作りのイロハを教えた者として、見(・)た(・)こ(・)と(・)の(・)な(・)い(・)物(・)を作ろうとしている二人が気になった。


「おう、リージェス。衝撃と熱に耐えるんなら魔銅にしとけ。んで? セーベル、ゴムってのは何だ?」


「えーっと、樹液とか石油で作る硬いけど柔らかい……」


「よく分からん。用途は?」


「分かりやすく言うと回転する靴、ですかね。滑らずにグリップ力のあるものです」


「なら靴裏に使われるガルシードレイクの腹皮(ふくひ)が良さそうだな」


「さすが師匠だ! じゃあさ、こことここの作り方を……」


「おいリージェス、お前これ銃じゃねぇのか? うちじゃ作れねぇよ」


 物作りを通して人(プレイヤー)と人(NPC)は語り合い、同じ熱を持ち、一つの物を組み上げていく。一人では作れないものであっても自由と熱があれば諦めずにいられる。偉大なる先達と理解ある仲間がいれば完成させることもできる。

 そうやって生まれた1つの機械は明らかに時代を追い抜いていた。


「こいつは……なんて名前なんだ?」


「これか? これは単車だ」


「自動二輪車です」


「どっちも聞いたことねぇな。なんつうか……これが動くってのか?」


「理論上は……そのはずですね。まぁ魔力消費がスゴいので今日は揮発性魔力液(ガソリン)を作るだけでテストは明日ですけど」 


 既に揮発性魔力液は特許を取得していた。有効に使われるには時間が掛かるだろうが、一人の生産職、それも弟子を取るまでにその能力に自負のある男はこれが何世代も先を行くエネルギーだと理解したからだ。


 しかし師匠である男ともう一人の弟子は気付いていなかった。気付いていたら止めていたかもしれない。

 長い金髪を雑に後ろで束ねた男が抱いた決意を。


 自動二輪車が完成した翌日の作業場。目覚めた師匠と弟子が見たのは3人で何日も何日も掛けて作り上げた物が、この世界では初めてのものが、1日と経たないうちに別の世界であれば時代遅れとも言われてしまう見た目に変わり果てていた姿と。

 その横に立つ長い金髪をまるで竜巻のように纏めて固め、黒い学ランを着たリージェスの姿だった。


「なんだ、こいつは……なんだってこんな……それにおめぇの格好は……」


「師匠、セーベル。おはようさん。ちょっくら敵国にガン付けてくるわ」


「何言ってるの? リージェス。それにその格好……いつの時代のヤンキー?」


「戦闘装束つったらこれだろうよ。取り敢えずこの島を狙ってるつう奴等のハナをあかしてやろうかと思ってな」


「リージェス、お前さん何する気だ」


「こいつと一緒にひとっ走りするだけだよ。バリケードも関所もぶっちぎってな」


「おい、よせ! そんなことをすれば……!」


「師匠、俺が囮になるからよ。その隙にこの国の大将に他国の救援要請を出させてくれ。他国が欲しがるあんな高級アイテム持ってたんだ、お偉いさんになんかツテがあるんだろ?」


「それは……っ!」


「でも無茶だよ、まだ走行テストもしてないのに……」


「任せろって。今日1日逃げ切ってやるよ」


「……その自信はどこから来るの」


「俺と師匠とセーベルで作ったんだぜ? 失敗なんてしてない、壊れることもない、なら賭け金全額ベットしたって問題ねぇよ」


 リージェスという男は自信と自負を携えて生まれたての愛機に飛び乗る。その目は喜色に満ち溢れていた。

 剣や魔法のある世界を追い抜く作品ができた。今か今かと脚光を待ちわびる黒い機体。魔力を通せばこの世界では初めての、元の世界では聞き慣れたエンジン音が耳を震わせる。振動を始めた愛機を撫でてからハンドルを握り、魔力を流す。

 捕まれば即死だろうし愛機は壊されるかもしれない、だがそんな不安は「しゃらくせぇ」と一喝して振り切った。

 リージェスは生まれたての相棒に声をかける。


「余所見運転は危険だけどよ、前だけ見てりゃ俺達は無敵だぜ。

 さぁ、文明開化の朝駆けと行くぜ!」

 

 渦巻く金髪を揺らし、魂を燃やした男は振り返って一言。


「ちなみに師匠、マギアゾートは使わせて貰ったぜ」


「!? お前! 俺の秘蔵の素材を勝手に!!」


「あっはっは! 後で怒られるから待っててくれや!」






 自国とリソーストレイトとを繋ぐ橋で待機していた兵士達は聞き慣れない音に警戒心を強くした。馬の嘶きではなく、魔法の音でもない。楽器の幻を弾くような、それにしては低音でやけに響く。一緒に聞こえてくるのは車輪を引きずる時のような砂利を擦る音で。


「なんなんだ、一体」


「近付いて来てるぞ!」


「警戒! 魔力障壁準備!」


 兵士たちの混乱は一瞬で、部隊としても迅速な対応だった。しかし、


「佛血斬琉(ぶっちぎる)ぜぇ!!」


 大声と共に飛翔した二輪の鉄馬は軽々とバリケードを飛び越えた。


「!? 砲撃部隊、撃てぇ!」


 将軍の指示は早く、遠距離攻撃を得意とする魔法使い達が詠唱を開始する、或いは既に詠唱を終えていた者達は攻撃魔法を放った。


 だが、バイクを相手にするには遅すぎた。


「当たっていません!」


「射程外に出ます!」


「直ちに本国騎馬隊に連絡しろ! 急げ!」


「「はいっ!」」


 橋を通りすぎて操者と二輪の鉄馬は敵国であるドミナディの関所を走り抜けて街の中に入った。騎馬や騎兵を送り込むために開けていたが故に、敵を中に入れてしまったドミナディの関所駐在員は慌てて放送という手段で報告してしまった。


「敵襲! 敵襲!」


 拡声器によって軍だけでなく民衆にまで伝えてしまったことで大きな隙を作ることとなる。


「どけどけぇ! これでも生産職だ、《スクワッドボム》!」


 部隊、一団という意味のスクワッドと爆弾を意味するボムによって名前が構成されたアイテムはその名の示す通り、無数の爆弾を繋いだ物だ。長い紐に無数の筒型の爆弾が付いており一つの起動で全てが連鎖し爆発する。しかしそれは音が大きく、火花が散る様はド派手だが、ダメージはほとんど無い代物だ。


 現代人はそれを『爆竹』という。


 大きな音と見知らぬ兵器という二つの組み合わせは誰一人傷付けることなく。だが確かに民を震撼させ遠くまで伝播する恐怖を与えていた。





 騒音を響かせ民衆から煽る。パニックに陥れば上等だと市街を駆け回るバイクと一人は陽動というには激しすぎたのか……


「『加速(アクセル)妨害(ディスターバンス)・符陣形成(エリアメイク)』」


 一人の魔術師によってその動きを止められた。


「なんだと!? 動かねぇ……!? 違うな、回転が減速してるのか!?」


 先程まで轟音を上げながら大地を踏みしめていたバイクも、火花を散らしながら音を出していた爆竹も、嘘のようにその音と動きを弱めていた。タイヤの回転が減(・)速(・)したバイクではバランスを保てない。爆竹に至っては火が消えてしまっていた。


「奇妙なカラクリだ。貴様がこの騒ぎを引き起こした張本人か?」


 リージェスの前に現れたのは顔の半分を黒い仮面で隠した一人の男。その男は黒い漢服に身を包んでいて、この世界では異色の存在感を放っていた。


「はっ! お前がこの魔法の術者か?」


 リージェスは動きを止められながらも睨み付ける。


「いかにも。ふむ、気になるものを持っているが……こちらも今は軍属の身でな。驚異となりかねん物は破壊が最優先なのだよ」


 仮面の男は一枚の札を取りだし魔力を込めた。


「降札(サモン)・一閃鮫(ヒトキリザメ)」


 投げた札は形を変え大きくなり、青く獰猛な鮫へと変化する。獰猛な牙を持ちながらそれよりも主張するのは頭に付いた片刃の剣。


「両断せよ」


「キシャァァ!!」


「くそがっ!」


 鮫の繰り出した横一閃の剣をバイクごと倒れることで回避したリージェス。後ろの家屋ごと両断した一撃を見れば例えバイクであろうと成す術が無かったことは理解できる。しかし倒れ込んだが故に、次の一撃をかわすのは難しい体勢になってしまった。

 その時、


「たす、けて……」


 背後から漏れたか細い声が、それでも確かにリージェスの耳に届いた。

 状況は掴めていない、自分すら危うい今誰かを助ける余裕などない。しかし男の心は確かに駆動した。

 倒れたままの姿勢で仮面の男を睨み付ける。


「はっ! その鮫、見るからに肉食だよな。なんで使役出来てるんだ? 後学の為に教えてくれよ」


「くっくっく! これは面白い命乞いだ。そうか、見るからに我らと異なる服装……降り人(クダリビト)の類いか」


 クダリビト、が何を意味するかはリージェスも分かった。恐らくプレイヤーのことだろうと。


「降り人ならば死への恐怖もあるまい。ならば教えてやろう。札によって封印された魔物はその対価を支払うことで使役できる。我らのような者を封魔符師(ふうまふし)と呼ぶ」


「へぇ……思ったより面白そうなジョブだな。それで? その鮫の対価ってなんだ?」


「それは勿論、切り裂いた人間の肉に決まっておろう?」


「っ!?」


「お喋りが長くなったな。死ぬがいい」


 話の途中から涎を滴ながら近付いてきていた鮫、その頭の剣が前回と同じように魔力を込めた。狙いは大上段からの振り下ろし。だがリージェスは賭けに勝ったと口元に弧を描く。

 近付いてきたからこそ、それまでとは違う魔力の波長を肌で感じとった。


「オラァァあ!!」


 バイクのエンジンをオンにして、ハンドルを操作する。発動機が唸りを上げ、答えるようにタイヤが回転を再開し、一瞬の全力起動によってバイクは地面を横転したまま回転し、操者の制御によって加速したまま起き上がる。


「キシャァァ!?」


 その遠心力のまま後輪のみで立ち、前輪を使った攻撃によって断頭の剣を弾いてみせた。


「ハッ! タイヤは減速してただけ、止まって無かったんでなぁ!

 それに鮫が俺に近付いた時に最初の魔法の出力を下げたな?」


「ふっ、小賢しい……。そして小賢しさ以上に恐るべきはそのカラクリ……実に力強い」


「てめぇ……俺が気付いてねぇと思ってんのか!?」


 リージェスはハンドルを離しバイクから降りると後ろに向かって走った。そして瓦礫によって身動きができなくなっていた女性を取り出したビギナーズスティックを使ったテコの原理で救出した。幸い大きな怪我は無さそうだ。

 リージェスは仮面の男に振り返り、再度睨みつける。


「俺がプレイヤー(クダリビト)ってことに気付いたんなら死体は残らねぇことも知ってんだろ。そうなると対価を払えない……お前、この国の軍人だとか言ってたくせに……その国の民を殺すつもりだったな……!?」


 怒気を孕んだ声音を受けても仮面の男の態度は飄々としたままだ。


「何か問題があるかね? 人一人巻き込んだところで侵入者の仕業で片が付くこと。派手に暴れていると通報が入っているからねぇ……いい目眩ましになる」


 悪びれずに語った男は続けてリージェスに質問を投げ掛けた。


「そもそも何故無関係の者を助ける? 貴様は神の篩に掛けられただけの降り人だろう? それも報告の通りならリソーストレイトから来たはず。こことは違う国の住人だ」


 その質問を受けてリージェスはバイクに乗り込みながらアイテムボックスから1つの筒を取り出した。

 そして告げる。


「目の前の人を見捨てた後に食べる飯がうまいか? 誰かを見捨てた後に寝て気持ちいいか? 誰かを見捨てて自分の家族に面と向かって顔見せられるか?」


 仮面の男はリージェスが持っていた破裂する紐がいつの間にか無くなっていることに気付いていた。その時点で次は目立たずに逃げるための行動を取ると睨んでいた。

 だが、


「所詮は生き物だ。俺もお前も欲にまみれて生きてんだ、なら欲張って最高峰を生きていきたいじゃねぇか」


「異なことを言う男だ……」


「俺は手段は選ばねぇし、その為には準備を怠らねぇ。いざというときのとっておきだったんだけど、な!」


 リージェスが火花散る筒を投げ付けたのは仮面の男には完全に予想外だった。敵国の中で孤立し魔法によって有利不利は既に明確。結果など見えているが故に勝ち目の無い男が攻撃に転じたことが信じられなかった。

 よって後手に回る、攻撃への対処を選ばされた仮面の男は護符と呼ばれる【プロテクション】と同じ効果を持つ札を投げることで防御したが、更に混乱することになった。


「これは!?」


「名付けて極彩式(ごくさいしき)発炎筒(はつえんとう)。この「羽流登賦鯉兜」を作るときに出た金属片を集めて作ったアイテムだが……嫌がらせには丁度いいだろ?」


 筒の両側からカラフルな火を勢いよく噴出する発炎筒は仮面の男の護符によって弾かれたが、その火花と付随する煙によって辺りを燻す。そしてそれは主人を隠す良い壁となった。


「じゃあな、もう会うこともねぇだろう」


 仮面の男が結界の魔法で対処するころには極彩色の炎に照らされていたバイクはそこにはなく。敵国ドミナディの街中を何度かの雄叫びを上げながら主人とその腕の中の女性を乗せて駆け回っていたのだった。







「嘉明(ヨシアキ)様! 伝令にございます!」


「なんだ。申してみよ」


「はっ! 聖剣国グイネヴィアからの兵が進軍中とのこと! 直ちに防衛戦に備えよとの御命令です!」


「何……? リソーストレイトへの勧告には無言を決めていた癖に……まぁいい、大方混乱したこちらの軍に出来た穴を狙おうという魂胆だろうが……鷸蚌(いつぼう)の争いなど許さん。

 しかし陽動は降り人の奮戦、あくまで偶然だろうにこの手回しの早さは一体……」


「如何致しますか」


「すぐに向かうとしよう。あぁ、対価がまだだったな」


「は?」


「こやつを食えばいい。跡形も残さずな」


 鮫は空を泳ぎ、伝令に来た兵士に近づく。獰猛な牙を覗かせ涎を垂らしている様はもう待てないと言っているようで……。

 暫くして防衛戦に合流したのは嘉明と呼ばれた仮面の男一人だけだった。







 そして女性を街の辺境に下ろした後、更に街を爆走したリージェスは夕暮れ時になって再び橋を渡りきった。バリケードを飛び越えて無事帰還して見せたリージェスを迎えたのは怒り心頭の師匠だった訳だが……リージェスという人間なくして、リソーストレイトへのドミナディの侵略は中断されなかっただろう。

 不安を煽りドミナディを混乱させた爆走が無ければナルト・リソーストレイトの聖剣国グイネヴィアへの救援要請が間に合うこともなかった。軍が分散され、また撹乱されていなければグイネヴィア軍は攻勢に出ることさえしなかっただろう。


 陽動として一日を通して逃げ回ったリージェスは陰の立役者であり、一番の功労者だった。そしてそれは目撃者と師匠であるワーフガンドによって広まり、リソーストレイトではリージェスを知らない者はいない。

 威風堂々啖呵を切って無理難題を実行し、風のように駆け抜け街を救った彼をリソーストレイトの民は英雄と呼んだ。



 その名は『威風の英雄』。鉄の騎馬を持つ新たな英雄の誕生である。





長くなりましたがリージェスの紹介です。作品内ではPVに当たります。

この時点でのリージェスのジョブは鍛治師です。


武器を作ってもらう上で「あれ? 説明足りてないな」と思ったので「PVを見ていれば知っている」という風にしました。

ちなみにリージェスが着ている改造学ランやTシャツはリージェスの手作りです。器用値が高過ぎる男なのです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。