ゲイルムーブ・ドリームライフ その2
お仕事の関係で疲れ果ててたんですけど、戦闘描写が長くなりすぎたので二話に分けます。
疲れているときに書くと主人公の戦闘方法が過激になりすぎたんですけど、そのままで行きます。
「何してんのお前……」
「いやほんと、何してるんだろうな俺……」
目の前の状況が理解できないまでも、呆れ顔を浮かべている高城ことバースライト。メールのやり取りをするためにフレンド登録をしたので俺も高城も初対面ながら知っているのだが……俺自身も死屍累々な現状を理解できていないので説明してやれない。
「とりあえず降りたら?」
「戦闘終了になってないんだよ。矢は飛んでこないけどな」
~ 一時間前 ~
《リソーストレイト中央広場に転移しました》
転移の浮遊感が完全にエレベーターのそれ。地に足が着いたときの重力とかも。凄い再現性だ。慣れないと怖いけどな。
さて……大量の視線だこと。熱視線ではないな。
奇異、驚愕、羨望もあるような、ちぐはぐな視線の群れの中でも特に多いのは嫉妬だ。なんで分かるのかって? 大体の視線は高城の横にいた時に感じたことがあるよ。腐ってるのも含めて。
「みゅぅ……」
フラムが視線を嫌がったのか襟の中に潜る。猪の頭を逆さに被るような構造をしているからか無数の牙が襟についている【王猪の突貫服】は結構首元はゆったりしているんだよな。フラムにとっては落ち着ける場所であり、身を隠す空間でもある。飲み込まれているようにも見えるけど。
「おい」
「ん?」
話しかけてきたのは男のプレイヤー。後ろに数人を引き連れているところを見るとそのリーダーって感じか? 顔は知らない。名前は……上に表示されてるのを見る限りだと……漢字だと見えても読めないな。
「お前、ゼノンって奴だろ」
俺も名前がカタカナで上に出てるから見れば分かるのでは?
「そうですけど。あなたは?」
「おいおい、ショーガさんを知らないのか?」
「第2エリアのボスを最速で倒したエースアタッカーだぞ?」
第2エリア……行ったことないし。概要は聞いたよ? 主に高城に。
確か針葉の街サイプレス。確か、ボスの倒し方で進む街が変わる通称三択の森ことサイスローウッズ。住民たちはその森を怖れているらしいが、勇気持つ開拓者によってその不安は取り除かれたとかなんとか。
えーっと? 剣や拳の近接戦闘で止めを刺すと格闘の街ブレイブランド。魔法なんかの遠距離攻撃で止めを刺すと魔術の港スピリトライブ。毒や罠で止めを刺すと知性の森ナレッジュラ。だったはずで……今主流となっているのがスピリトライブらしい。そもそもボスがサイプレスポキュパインという針を飛ばすヤマアラシらしく硬いうえに素早いので物理も罠も難しいんだとか。
そして一番最初に突破したのは魔法使いまくってごり押した「考え無し」らしいんだ、と高城が愚痴ってたな。抜かれたのが悔しいらしい。……勝ち方に拘る気持ちは分かるけどな。
となるとこの目の前のショーガと呼ばれた男がその「考え無し」のようだが……「翔鵞」でショーガね。なるほど……?
「それはどうも初めまして。何かご用ですか?」
一応年上っぽい(背が高い。180cmくらい)ので敬語で接することにした。
「お前、俺達と戦ってくれよ」
「はい?」
何それ……。なぜ初対面でいきなり喧嘩吹っ掛けてくんの?
と、いぶかしんだが話を聞くと……。
「つまり、PVに出ていた俺と戦ってみたい……と」
「そういうこと。別に何かを賭けろとかそういうのも無し。強いて言えば全力を出してほしいところではあるけどな」
うーん、高圧的な訳でもなく賭け事もなく、純粋に力比べをしたいと。何か俺に得がある訳ではない。というよりもショーガさんにも無いように思えるんだが……。
「俺は別に良いですけど。そちらに何か得があるんですか?」
「あー、まぁ情報渋るのも良くねぇな。このゲームって格上のモンスター相手だとスキルを見たり食らったりするとポイント取得できるらしいんだわ。
実は高レベルNPCと戦っても取得できるってのを俺たちはスピリトライブのクエストで知ったわけ。ならプレイヤー相手でも良いのかってな」
ほう? 俺が高城に流した情報が更に発展していたということか。
そしてこのショーガって人……話している限りよく考えている。自分の利益を話してみせたことで俺の警戒も薄れている。ここで俺にもアドバンテージがあれば即了承する交渉だ。まぁ戦うだけなら俺に損は……あれ?
「話は分かりました。ところでプレイヤー同士で戦うってどうやるんです?」
「決闘システム……いや、流れてきた情報的に無人島らしいし知らないよな。神に宣誓するとルールいくつか選んで戦えるんだよ。アイテムの所有権を賭けたりもできるが、今回は無しでやろう」
へー、そういうのがあるのか。知らなかった。でもそんなもんがあるならプレイヤー同士でもスキルの取得はできそうだな
「納得したか? じゃあ早速……サンドウ、ルールを決めといてくれ」
「おう」
サンドウと呼ばれたスキンヘッドの大男……背中に長柄のハンマーを背負ってる人が何やらステータス画面を開いて操作を始めた。ショーガさんは刀身が赤い剣を手入れし始め……取り巻きっぽい奴等も各々の武器を確認している……。どうしよう、俺も何かしたほうがいいかな。
「うーん……」
木の棒を取り出してチェックする。持ちやすいやつだなこれ。それに長さもなかなか……うん、場違いじゃない?
「おい!」
と思ったのは俺だけでは無かったようで……。
「なんだお前、ふざけてんのか!」
声を荒げたのはショーガさんでも寡黙そうなサンドウさんでもなく、パーティであろう6人の中でも一番下っぱっぽい若い男だ。『ショーガさんを知らないのか?』って言った奴。
ただ俺が木の棒を取り出したのは真面目に……いや、場違いかな? と分かった上でだからあんまり強く言えない。だが、俺なりに全力を出そうとしているからなのだが……。
「いや、ふざけてはないですけど」
「木の棒なんか出しておいて、ふざけてないわけないだろ!」
どうしよう、ごもっともな気がする。
武器を装備できないわけを説明したほうがいいのだろうか……。でもビギナーズ武器の仕様って皆知ってるんじゃないの? 後このバカにしているような感じが腹立つ。
どうしたもんかと思っていると、助け船が出てきてくれた。
「ゼノン、決闘のルールで装備不可の武器も装備できるように変更してもらえばいいんだよ」
「あ、それ出来るんですか? ってジンギスさん! とヤキスキニクさん」
「おう、久し振りだな」
「ルール作ってるのサンドウだろ? そこんとこ融通してやってくれよ。本気でやるならな」
ヤキスキニクさんがサンドウさんに近付いて話しかける。知った仲なのかサンドウさんも顔色ひとつ変えずに、
「分かった」
とルールを弄ってくれたようだ。
「キーロも何いちゃもん付けてんだ。折角相手してくれるってんのに」
「痛っ! だって、ショーガさん!」
「だっても何もねぇ。そもそも装備からして圧倒的な差があるんだ、木の棒だからって甘く見るんじゃねぇ」
キーロとかいう男がショーガさんに頭を叩かれていた。うーん、言いたいことを他の人が言ってくれるのは楽だが……さすがに申し訳ないな。俺からも言わせてもらおう。
「本気でっていうならこんな慣れてない服脱ぎますよ。木の棒じゃない武器を装備できるなら充分なんで」
ステータスを操作して『猪王の突貫服』を脱いでビギナーズボトムだけの格好に。と、中に籠っていたフラムが俺の胸に爪を立てて落ちまいともがくのを抱き止める。
「みゅ!」
「ごめんごめん。今から危ないことするからさ。ジンギスさんと一緒に見ててくれな」
「みゅ?」
ふんふんと鼻を鳴らしてジンギスさんの臭いを嗅ぐフラム。
「お? なんか可愛いのを連れてるな。おら、ジャーキー食べるか?」
「みゅぅ!」
食べ物に釣られたのかジンギスさんの肩に飛び乗るフラム。そのままもぐもぐと食べ始める。……大丈夫かな。悪い人にも着いていきそうで心配になる。
「さあて、やりましょうか。対人戦は初めてなんでお手柔らかに」
ショーガさんに向けて手を差し出す。それにショーガさんも応えて握手をしてくれた。
「ああ、今ので油断は無くなったよ」
今の? なんかしたっけ。
《決闘が承認されました》
《この決闘は舞踏神モワノゥが見届けます》
《ルールをご確認ください》
モワノゥ? まぁ名前は気にしても……待て、ぶとうしん? 武闘神か?
アナウンスの後、表示されたルールを読む。
【公式ルール】
勝利条件:①対戦相手全員の戦闘不能。
②相手のチームリーダーが降参した場合。
【追加ルール】
①ステータス条件未達成・武器種によって装備不可となっている装備も使用可能。
②15m四方を戦場とし、離脱不可能。有効範囲は視認できる壁として扱われる。
③回復アイテム・消費アイテムを使用した場合、決闘終了後元に戻る。
なるほど? ③はありがたいな。ほとんど持ってないけど。
えーっと、【承認】を押せば良いのかな?
《双方からルールが承認されました》
《それでは……戦闘を開始してください》
よーいどん、くらいは欲しかったな。ま、いいか。
「楽しませてもらおうかな!」
切って落とされた火蓋はこの後多くの小火を引き起こすのだが、この頃の俺には考える由も無かった。
ショーガ「あの猪の鎧着てたら多分ダメージ入らない気がするんだけど、それ脱ぐのが本気とか言われると……微塵も油断できねぇ」




