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ピッキングアウト  作者: もぶ
歴戦の竜と無謀なる者
23/72

スキル調整と騒がしい夜


 流鏑覚という茶色い小鳥はどうやらいつも見ていた小鳥とは別。フレイバーテキストから今までのはツラヌキイカルという名前らしい。具体的にどう違うか、というと流鏑覚はスピード特化で正面から心臓を貫く。だがツラヌキイカルは技が熟練しているらしくどの角度からでも心臓を貫き羽を広げて抜き取るらしい。エグいって。


 犬の群れ、奴等の名前はクルーエルウルフス。狼という名前に驚愕、群れの中のリーダーは最初の囮役と知って更に驚愕。前、木の棒追い掛けていったのがリーダーとか本当に大丈夫かお前ら。


 ナマズ君はトラップホールフィッシュと言って何日でも地面に潜んで敵を待つことができるらしい。そして見せることはなかったがどうやら地震を引き起こして山一つを更地にしたという伝説がある……とのこと。本当にこいつが? って感じだ。


「さすがにドラゴンと同じ島に棲む連中か……。フレイバーテキスト的には強そうだな。

 『レベル100でも死ぬ!』って島なんだろうけど、そもそも破壊不可能武器が人権すぎるのでは? これステータス上げてビギナーズ武器で殴るが正解とか?」


 それともビギナーズ武器にも装備できなくなる制約とかがある……? 今28レベルですけどどこかで装備できなくなります? 


「そう、レベル28、28ですよ……」


 上がったレベルは即ち強化。【大器晩成】とかいう称号のせいで取得経験値は下がったようだがおそらくスキルポイントが倍になるんだろう。いいじゃん。


 ステータスポイントが合計54とスキルポイントも54あるわけだ。いいね、今のステータスが……と。



ゼノン レベル28


 職業:剣闘士 


 所持金:2000マニー


 装備:【ビギナーズプレートアーマー】

   :【ビギナーズセット(一式)】


 武器:【ビギナーズソード】


 アクセサリー

   顔:なし

   首:なし

   胴:なし

   腕:なし

   足:【名無しの草履】 



 ステータスポイント54

 体力 91/91

 魔力 27/27

 筋力値 5

 耐久値 5(+3)

 知力値 3

 敏捷値 3(+2)

 器用値 3

 持久力 10

 運   1



 あれ? 思ったより体力の伸びが良いな。そして反対に魔力は全然上がってない。こういうのはゲーム的には職業(ジョブ)が関係しているんだよな。

 えーっと……単純に体力は1レベルで2上昇して4の倍数で更に+1? で、反対に魔力は4の倍数で+1しか増えていないと。100レベになっても魔力は25しか増えないのか……少なくね?


 さて、体力が伸びやすいのなら……必要なのは筋力、耐久、だろうな。今後は近接戦闘(インファイト)も視野に入れて……持久力も増やしといたほうがいいのかな?

 ええい、こういうのはフィーリングだ、そういえば筋力、耐久値に補正あるんだっけ? 補正って結局なんなんだろうね!


 悩むこと一分。こうなった。



 体力 91/91

 魔力 27/27

 筋力値 35

 耐久値 25(+3)

 知力値 3

 敏捷値 3(+2)

 器用値 3

 持久力 10

 運   5



 悩んでないだろうって? あははは、脳筋とは能筋とも言い、筋肉こそ仕事をする力なのだよ。力こそパワーということさ。

 そして4余ったから運に振りました、以上です。



 次はスキルだな。えーっと……? 元々のが結構変わってるな。勝手に増えてるのな。


【生産スキル】

 加工Lv.6

 鑑定Lv-

 投擲Lv-

 料理Lv.MAX

 生存戦略Lv.3

 ┣真水作り

 ┣有毒調理

 ┗火起こし


【戦闘スキル】


 スラッシュLv.13 on

┣ラピッドスラッシュ

 ┗チャージスラッシュ


 ヘヴィスラッシュLv.5 on

 ┗ソニックスラッシュ


 カウンターバッシュLv.MAX on

 ┣ジャストカウンター 

 ┗ジャッスル 


 プロテクションLv.3 on

 切り返しLv- on

 クロノススラッシュLv.1 New!

 片手剣Lv.10 on

 二刀流Lv- on New!

 棒術Lv.4 on New! 

 木の棒Lv- on

 戦線復帰Lv- on

 壁蹴りLv.MAX on

 空踏みLv.1 on

 アッドLv.3 on

 息吹Lv.5 on

 竜呼吸法【rock】

 リブートLv.6 on

 アンカーフッドLv.5 on



 うん、確認は戦闘しながらでいいや。めんどい。そしてスキルポイントで取れるのはもうごちゃごちゃしてるから後で。生産スキルとか必要なときに増やしていきたいし。生存戦略じゃ足りないものもありそうだからな。


 とりあえず1個だけスキルポイントで取得した。何て言うか……



戦闘スキル《宣戦賦刻(せんせんふこく)》 スキルポイント15

 :因縁を刻む一撃。



 顔馴染みな気がしたので。




◆ ◆ ◆ ◆ ◆





 夜、ログインしました。時間は20時を回ったくらいだ。


 スキルを確認するために何戦かしようと森を歩いていたが……何とも遭遇しない。こんなことは初めてだ。活発になる夜なのに。襲われもしないなんて。


 その時だった。


ドドン……


 遠くで何か重い物が落ちた、そんな音が響いた。


「あっちは……竜宮洞のほう?」


 静かすぎる夜に大きな音。竜宮洞、ドラゴン、なんだろう、胸騒ぎがする。


「行ってみよう」


瞬間、轟音。


Giaaaaaaaaa!!


 意識を向けたその瞬間、耳を裂くような、周りの木々をも揺らす程の叫び声。そしてその声は馴染みがある。


 だが、初めて聞く。怒りを感じる声だった。


「急いだほうが良さそうだ!!」


 何かが、起こっている。








◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 パソコンは進化を繰り返して今に至るまでに大小様々な変化を遂げたが、残念ながらディスプレイは空中に投影されたがそれ以降の発展なく現在に至る。それは最新鋭を揃えたこの会議室でも同じだ。


 まぁ、そんなことは本来どうでもいいことなのだが。


「おいおい。一昔前ならディスプレイにコーヒーぶちまけてたぞ」


 液晶だったら俺にかかることはなかったのに、と吹き出した本人の前で大男、総蓮は健次郎に対して嫌味をぶつける。

 だが当の健次郎はそれどころではない。


「冠城はどこだ! なんで、ああくそ設定か! たった1日で……誰だ第1エリアのボスをでかい熊になんかしたのは!!!」


柚子(ゆうこ)なら雀菜と一緒に買い出ししたコーヒーを配りに……ああ、戻ってきたな。おーい、柚子、ちょっと来てくれ。

 つか第1エリアのボスを作ったのお前だろうよ」


 柚子と呼ばれたマニッシュなスーツを来たショートヘアーの、この中では10歳は若い女性は総蓮の側に……ついでに雀菜も野次馬で付いてきた。


「どうしました?」


「どうしたじゃない冠城! お前の知り合いだろ! これなんて詫びればいいんだ……!? 僕ならクレームどころじゃないぞ!?」


「いや内容を言いなさいよ」


 呆れた声で返したのは雀菜だ。


「フィアンテーヌがアークファウンに襲われた!」


「いやモンスターの名前を言われても……全部は覚えてないって」


 またしても雀菜は呆れ顔だが総蓮には片方には心当たりがあった。


「アークファウンってレイドボスじゃねぇか。フィアンテーヌはどれだ?」


「ウルスラグナの嫁だ」


 だから誰だよ、と総蓮と雀菜はモンスターの家系図全て網羅している健次郎(おや)に説明を求めるが……


「ウルスラグナって歴戦竜……って陽塲(はるば)お爺ちゃんのお孫さん!?」


「陽塲……ああ、あの竜殺しのじいさんか。狙いが外れて孫に渡ったんだったか。んで、確かその孫がドラゴンを倒そうとしてる……ん?」


「その! ドラゴンの嫁がレイドボスに襲われたっていってるんだ! あぁ、もうHPが!? 待ってくれがんばれ! 耐えろ……!」


 騒がしい健次郎というのは別段珍しくもないが……会議室に響き渡った声で大体の人間は状況を理解し始めた。だが、解せない。


「アークファウンは確か始祖鳥が現代まで生き残ったら、で原案を出したんだっけ」


「そうそう。羽根以外は鋼鉄のように硬い特殊な鱗に覆われていて……で、ついでにケツァルコアトルの要素も足して……」


「あれ? 確か顔見せするためにレベルが1番高いプレイヤーのところにレイドボス向かわせるって話したよな? あれ会議通ったよな」


 烏の集団は仕事以外ではポンコツだ。そんな中雀菜だけは冷静である。


「レベルは確か17が最高でしょ。まだエリア1のボスすら倒されてないし、ピッキングプレイヤーだってまだ攻略の目処は」


「レベル最高は28だ! ゼノンってプレイヤーだ! 今日の午前中にあの孤島でモンスターを倒したんだ!」


「「「!?」」」


 烏たちはその叫びに驚き、そして健次郎が何故焦っているのか分かってしまった。


「そんな! あれはマップで1番レベルが高いやつを倒すように設定してあるのよ!?」


「孤島ってことは歴戦竜……うわぁヤバい、色々と支障が出る!」


「少なくとも生態系が狂う!」


 歴戦の名を戴きし竜であっても、数百人を一蹴するボス相手には勝てない。勝ってはいけない。それがゲームバランスと呼ばれるものだ。


 歴戦竜は孤島の頂点捕食者。その捕食者がいなくなったら。生態系は崩壊し、新たな生態系が構築されるまでは何が起こるか分からない。

 だが、1番重要なのはそこではない。


「ピッキングプレイヤーの目標がいなくなったら……」


 その歴戦竜を倒すことを目標にした一人の少年はどうなるのか。

 英雄を求めた彼らにとって、ドラゴンスレイを目指す少年は求めていた英雄、その種ともいえる存在。

 理不尽で、己には何もできない不甲斐なさを抱えて……なお、前に進めるのか。進んでくれるのか。


 レイドボスであるアークファウンが島から離れることはない。これはイベント戦闘。終わるまでは()()()()()

 そしてレイドボスを倒すことは現状、厳しい難しい等の気休めすらできない。 


 張り詰める空気。


「大丈夫です」


「冠城、お前、」


「大丈夫です。前に聞いたことがあるんです」


 ただ一人、この場で少年を信じられるのはその少年に縁を結んだ柚子だけ。


「笑顔で挑戦する、そんなのは珍しい。孫は陽塲2世だってお爺ちゃんが」


 冠城柚子は、冠城遊善の孫は己の繋いだ縁を信じる。無意識に手は祈りの形に。


 どうか折れないで。諦めないで。前を見据えて最善を掴んで。あなたならそれができる。


「高い壁も理不尽も。きっと何度だって挑みます」


 祖父を通した関わりはあれど会ったことすらない少年をディスプレイ越しに眺める。私には何もできないけれど。必ず私があなたの証人になる。


 縁もゆかりも薄くとも。戦いを見送り遠くから眺めるだけであろうとも。絶望を前に燻らないと信じる。

 さながら、勇者を見送る聖女のように。





 長い夜が始まる。

 





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