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ピッキングアウト  作者: もぶ
歴戦の竜と無謀なる者
20/72

転機 後編

 只今わたくし、夜の空を巨大なフクロウに掴まりながら飛んでおります。


 回想することもないくらい短い思考、そこから導き出された答えとは……!!


 期待されても困るな。アッド、息吹で火力を上げてヘヴィスラッシュ二連打(切り返し込み)だ、ただの力ずくとも言う。問題はこのフクロウが掴んでいる卵を思わず放す部位への攻撃をしなければいけないことだ。

 しかもレベル1(俺)の攻撃で。


 こいつは三前趾足……いわゆる鳥と言われて想像する前に3つ後ろに1つの指があるタイプだ。くっ、五指あれば最強の箪笥流の奥義(末端強打)をお見舞いしてやったというのに……! あれ強打した後、その足の指開かない? 俺だけ?


 どうするか、タイムリミットは巣に辿り着くまでだ。なんせ雛でも俺より強いだろう? というか囲まれたら俺も餌になるだけだ。


 一転突破! 二連打だけど。


「狙うは爪! それも卵を掴んでない左足のほう!」


Q.何故そこを狙うのですか?


A.足の小指強打したらもう片方の足で抑えたりしない? 俺はする。


「フゥゥゥ……アッド」


 深い呼吸で……スキルを重ねる。初めて使ったが身体が一瞬だが赤く光る演出だった。オッケー、いこうか。


「ヘヴィスラッシュ」


 魔力が剣に注ぎ込まれるような……力を吸いとられている感覚。そして剣の刀身が青く輝く。

 しがみついていたところから飛行中で無防備な足へと移動。狙うは前3つの指のいずれか。折角だから端のやつにしようか。

 空に身を投げ出してっ!


「ハァッ!! オラァ!!」


「ピギィ!?」


 二連撃、魔力は3しか減ってない。神仕様じゃん。

 しかも爪にヒビ入った。


 余程痛かったのか空中姿勢を変えて指を押さえるフクロウ。もちろん卵は落としてくれた。よっしゃ次ぃ!


「失礼」


 フクロウを蹴ってスキル《壁蹴り》を発動。モンスターでも発動できるのはさっき試したからな。多分自分より重い相手とかびくともしないデカブツ相手にしか発動しないとは思うけど。


 《壁蹴り》の下への跳躍による加速で卵を追いかける。さすが流線型、速いな! クワガタ(辻斬鍬形)の顎(片刃)を取りだして重さをプラス! 良い感じ……よし、追いついた。卵を抱き込む。顎、邪魔、しまう。


「さて、かなり速い、タイミング難しいぜこれ……」


 やることは単純だ、どこかの木を《壁蹴り》でクッションにする。スキルを挟んだ場合衝撃はあってもダメージは無い、という俺の仮説を検証する形になる。

 じゃあこのまま落ちてもいいだろうって? 衝撃はあるんだから俺程度のクッションじゃこの高さから落ちた卵は守れねぇのよ。


「そうこう考えてるうちにもう森が目の前に……! くっ、いっけぇスラッシュ!」


 卵を守るため背中から落ちていった俺は右手の剣を使い木に向かってスキル《スラッシュ》を発動。唐竹割りのようにてっぺんから剣を入れる。さすがに質量と重力を利用した一撃だ、結構するっと入った。

 が、途中で拮抗し始める。落下威力の減衰、スキルの補正の終了、だがどうでもいい、スピードは落ちた。


 剣を抜いて俺は《壁蹴り》を使って斜めに飛ぶ。そして卵を庇いながら背中から落ち、ズザザッと背中でランディング(胴体着陸)した。身を挺して庇ったお陰か、そもそも頑丈なのかは知らないが、卵は無事だ。


「良かった……」


 とも言ってられないのか?


 滲み寄る気配。ああ、何度目かは分からないが複数の視線を感じる。これはあれだ、犬の群れだ。

 ヤバイな……俺が死んだらフクロウが卵を探しに来るかもしれない。いや、そもそもこいつら(犬の群れ)が卵を食べるかもしれない。


 ドサッ!


 嫌な予感、予想は外れない。最悪の事態というのは常に想像するものだ。

 じゃあ全部重なったら? それはもうあれだよ。あれ。


「絶対(体)絶命ってやつだな」


「ギャァァァ!!」


 落ちてきたのはさっき重しに使った顎の本来の持ち主と同種、いつかのクワガタだった。名前長いやつ。


バサッ! バサッ!


「ピァァァ!!」


 獲物の横取りでお怒りなフクロウ、木への衝撃によって落ちてきてお怒りなすでに臨戦体勢なクワガタ、そして群れでの狩りにかち合った結果獲物として認識しやがった犬ども。


 なーるほど? 死ぬな?



◆ ◆ ◆ ◆ ◆




 さて、俺は天誓花のミサンガを右手に巻いて、剣を構える。


 助けを求める? 冗談は現実に置いてこいよ。救援(猫の手)が借りられるゲームじゃねぇんだぞ、ここは。MMO、マッシブ(大規模)なマルチプレイヤー(人間共)がオンライン(同じ場所)にいるんだ、無償で救援なんてしてくれない!

 争い奪い合いが起きること間違いなし。ソースは人類史、皆も見てくれよな!!


 現実逃避終了!


 すがり付く手すらない赤ん坊を取り戻したんだろ! 守ると誓ったんだろ! 俺がこの子の縁(よすが)なんだ、折れてたまるか!!

 誰かに譲ってたまるかよ!!


 謎の骨をアイテムボックスから取り出してぶん投げる。武器見張り役の犬、木の棒で釣れるなら骨ならもっと食い付くよなぁ! 一匹離脱、確認するでもなく叫ぶは胸中(かくご)!

 

「かかってこいやァ!!」


 闘志が燃え上がる。今なら何とでも戦える気がするぜ!


《特殊クエスト【竜卵の災難】を受諾しました》


 右、左、若干の時間差で襲いかかってくる犬を右から順にヘヴィスラッシュ、そして切り返しで迎撃。お前ら、口を開けて噛み付くんだからその口が切られる覚悟はしてるんだよなぁ!?


「「ギャイン!?」」


 上から羽根が降ってくる、剣を地面に突き刺しスティックを取り出す。攻撃と同時に防御もできるなんて便利だぜスティック、素敵に無敵に羽根を巻き込む大回転! そのまま後ろの犬の顔面をぶん殴る! 


「ギャイン!? ギャァ!?」


 状態異常でも食らったか? よかったな、そのまま退いてろ!

 長柄の武器に低姿勢で懐に飛び込んできた頭の良い犬は嫌いじゃないがお呼びでもない、右手にアックスを取りだし上から叩きつける!


「ガウ!?」


 そのまま回し蹴り、さすがに俺と犬とじゃ重量が違う。ステータス(能力値)じゃなくパラメーター(身体能力)で話ができる。武器が選び放題の俺の方が優位なんだよ!

 すぐにアックスをしまって同時に飛びかかって来た犬2匹の牙をスティックで受ける。深い呼吸(息吹)、力を込めて足を踏み出す。

 犬が牙を放す前にスティックで押し出し俺自身も前へ、近くの木、その太い幹に犬の後頭部を叩き付ける! 逆回転で2匹目!


「「ギャ、ガァ!?」」


 振り返り、卵に近付いていく犬にスティックで牽制の額突き。寝てろ蹴られるぞこんな風に!


「キャウン!?」


 空から急降下して襲来するフクロウはめんどくさい、俺への恨みでもあるっていうのか? 無いだろ? 俺に身に覚えはない! 


「ピィィィ!」


 思えばフクロウの攻撃、初めて見るな。いつも丸のみだからなー。気を抜いている? 違うな、これは観察。タイミングを外さないためのな。


「ピッ!?」


「レベル1に防がれた気分はどうだ?」


 プロテクション&アンカーフッドによる防御はレベル差を無視して俺とフクロウを拮抗させる。そしてそこに迫るのは唸りを上げる凶刃!


「ギィァァァァ!」


 ミシミシミシ……ドシン!  


「ピギァァァア!?」


 獲物だけ見ているからそうなるんだぜ、フクロウ。

 見事胴体が真っ二つになったフクロウを尻目にそのフクロウの腹を《壁蹴り》して距離を取った俺は勿論無事だ。クワガタはフクロウを切ったにも関わらず止まれずに大樹と言っても過言ではないでかい木まで切りやがった。

 さて、上からの攻撃は無くなった。次だ。


 スティックをしまって両腕に銃を。装備を変更したが弾丸数は心許ない。だが俺はその銃を選んだ。答え合わせ(検証の時間)だ。


「ガッ!?」


 噛み付きに対し銃を合わせ噛み付かせる! 銃(・)口(・)が(・)口(・)の(・)中(・)に(・)あ(・)る(・)状(・)態(・)だがビギナーズ武器は破壊されることはない、そして銃弾を口内で受けたらどうなるか。3発入ってるから楽しみな。


「ガ、ガ、ガィゥン!?」


 ボイチェンでもした? 変な声出てるぜ。

 そして爪先で横から喉を蹴る。モンスターは動物とは違うからセーフ! ダメージがリアル(原作)準拠なだけで!


 クワガタがまた魔力を集めている。今回は軌道上に卵が含まれてるな。避けることはできない。来いや真っ向勝負! 迫る双刃、取り出すは双剣、向かい討つはスキルの輝き。

 触れ合う刃、俺がアンカーフッドによってその場に留まれば双剣は双刃に屈することなく刃を滑らせる。


「ギィァァァァァガ!?」


「プロテクションは武器全体が対象なんだ、許せ」


 ツインダガーをツインで使ったことはほぼなかったけど、こういう使い方があるなら多少は有効活用しよう。

 ダガーを手放し、地面に刺しておいた剣を掴む。そして狙うは昆虫の支柱たる触角。


「ヘヴィスラッシュ二連!!」


「ギァァァ!?」


「フゥゥゥ……」


 なんとか、なんとかだ。クワガタが攻撃を構えると犬たちは巻き込まれないように距離を取る。だからこそ一対一をひたすら維持できている。それが意味することは前回みたいに顎を折ったらひたすら群れが襲ってくるということだ。さすがに対応しきれなくなる。


 フクロウは知らん、アイテムだけ置いていけ。


「迎えとか来てくれないかな……」


 いつまで続ければいい。さすがにレベル1のステータスじゃ長時間の戦いは厳しい。まさか戦闘終了しないと経験値が入らないのか? フクロウはやはり無駄死にか。

 お子さんはここですよー! ドラゴーン、奥さーん!


ドドドン……バキバキバキ……ミシミシ……


「お前は……!」


 大樹たちを押し退け空から飛来したのは蒼く輝く光沢を持つドラゴンよりも巨大なカブトムシ。


「…………」


 寡黙というか声が出ないのか? でも仕事はするんですよ。今も魔力を溜めている。今回は角じゃない、全身に流すってことはあの追尾形の雷か? 生物に機械的な回路が浮かび上がるのはカッコ良さの権化だ。だがどうする。


「ギィァァァァァ!」


 クワガタは脅威へ対応すべくカブトムシに向き直し顎に魔力を込める。犬たちは一目散に逃げた。気持ちは分かる。でもそれやると間違いなく追尾形の雷になるんだよなぁ……。対複数みたいな技だったし。


「あれは追尾するのにマーカーも避雷針もない……。どうすればかわせる? いや、かわさない? 引き寄せる?」

 

 何かこう……良い感じのアイテムがあれば……これか?

 念のため卵を離れた位置に置いて、俺はカブトムシと卵の間に立つ。

 勝負は一瞬。早打ち勝負、


「ギィァァァァァ!!!」


「…………!!」


 クワガタの刃はカブトムシの左前足に直撃、カブトムシは姿勢を崩しながらも魔力を雷に変えて解き放つ、そして俺はアイテムボックスからクワガタ(辻斬鍬形)の顎(片刃)を2つ取りだして地面に立たせる、そして後ろに飛ぶ!


ピシャッ! ゴゴゴゴゴゴ……


 大きく轟いた雷は、クワガタと犬たちを焼き消したが、俺は生きている。避雷針として立てた鋏に引き寄せられたことで直撃を免れた。だが鋏は消えてしまった……。ありがとうよ。


「…………」

 

 そしてまだ獲物が残っていると言わんばかりに魔力を角に集めるカブトムシは本当に仕事人だなぁ……。


「ああぁぁこれに賭けるしかねぇ!!」


 俺は走って卵から離れる! 獲物が直線上から外れるとお前は砲撃を諦める。魔力を身体に流す、だろ?

 そしてそこから砲撃にはすぐには移れないんじゃないか!? 選択されたのは……追尾する雷!


「…………!!」


 蒼い雷が俺に迫る。その光にビギナーズソードの面を向けてプロテクションとアンカーフッドを発動する。触れた瞬間、俺に電気が走る、体力が無くなり、力が抜ける……。だが、卵は無事だ!


 俺が吹き飛んだら意味がない。だからこそのアンカーフッド。俺は雷撃から卵を守り抜くことができた。


 膝から崩れ落ち、地面に倒れ込む。ミサンガは発動しないか。そりゃあそうだろうよ。何もかも上手くいくなんてことはないんだ。


「すまん……ドラゴン……」


 溢れたのは後悔。懺悔。取り返すことはできたが、ドラゴンに届けられないんじゃ何も意味がない。

 前から倒れたらもう何も見えない。カブトムシの討伐対象に卵は入っているのだろうか。


「どうか、無事、で……」


 もう、消える。こんなに寝覚めが悪いこともないな。

 意識を失う直前、俺の耳に聞こえたのは、


「ガァァァァァァァア!!!」


 猛々しい王者の咆哮と。


《特殊クエスト【竜卵の災難】をクリアしました。

 報酬としてスキルポイント10が贈られます》


 という無機質な声だった。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆



《条件達成。称号【大器晩成】を獲得しました》


《条件達成。称号【護衛者】を獲得しました》


《条件達成。称号【歴戦竜の友人】を獲得しました》



特殊クエスト

 複数ある条件の達成により報酬が派生するクエストのこと。

 【竜卵の災難】の場合は

・卵を無事に取り返す

・レベル100以上のモンスターとの戦闘で生き延びる

・ドラゴン(親)が来るまで耐えるorドラゴン(親)まで届ける

 ことが条件

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