昼には砂浜、夜は森。それは人間の特権
本日は水曜日。時間は朝、10時です。
当初の目的の通りに砂浜を目指します。
それにしても雷とはなぁ……あのカブトムシカッコ良かったけど殺意増々頭カタメでしたね。
さて……こっちか。なんかもう方角とか気にしなくても森を歩ける。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
チャレンジ回数1回! やばい新記録!! 違和感があったところを除けば完璧だな!
比較的安全な朝だからかもしれないけどテンション上がってきたわ。
さて、岩礁地帯にやって来ました。まずは魚を集めましょう。そーれ熊の子みたいに《スラッシュ》&|《切り返し》《スラッシュ》!! 木の棒2本振り回してる時点で立派に蛮族、気にするな理性!!
漁の結果は……タコが三匹。うーん、アイテムボックスに入れとこう。魚はいなかったんや……。
とりあえず……装備できる木の棒をしまい、取り出したのは装備できないほうの木の棒。それを海に向かって投げる!!
ヒュー…………ポチャン
何も無し。では謎の骨を取り出して……投げる!
ヒュー…………ポチャン
「フルルァァア!!」
「ザリガニくん、腐肉食なの? ご注文はゾンビですか?」
お怒りで俺を睨んでいる黒いごつごつしたザリガニ……多分前のと同じやつかな? それにしても好戦的だなぁお前も。ま、敵対の条件は分かったから良しとするか。お怒りなのもいいね。
「フルルァァア!!」
鬼さんこちら、銃の鳴るほうへ。無駄打ちはしないけど。
なんとビギナーズガン、この間のドラゴン戦で銃弾が2発残したまましまっていたのだが、取り出してみたらちゃんと残っていた。ありがたい仕様だなぁ。
ザリガニを背に森へ向かいながらマガジンを取り出して魔力を込める。フル装填で6発。また一旦しまってもう一丁のガンに弾を2発込める。今日はこっちを使おう。
「確かこの辺り……あった、違和感!」
しばらく進んだところで見付けたのは紫の花。見た目は天誓華ことリィン・カーネーションだがサイズがおかしい。三メートルのカーネーションってなんだよ。正体を表せ!
バンッ!
「キュァァァア!」
当たったとはいえビギナーズ武器、痛みはほぼないだろうが流石に敵意を向けられて黙っていられるほど我慢強くはなかったようだ。花に擬態していたのは形状からしてカマキリ、色まで変えていたのかピンク色に戻ったそのカマキリは俺に狙いをつけようとしたが……
「フルルァァア!!」
背後から近付いてくるもう一匹に気付いて慌てて逃げようとしたがもう遅い。ザリガニくんは君も獲物にカウントしたようだぜ?
「キュァ!? キィーーー!!」
野生って奴だ、安穏なんて無い。だがまぁ邪魔しておいて虫が良いかもしれないがお前は虫なんだ、安心して死んでくれ俺のために。何言ってるか分からなくなってきた。無視しないでくれるザリガニさんは優しいなー(棒読み)。
するとカマキリはピンクから赤に体の色を変えた。それになんの意味が……?
「キィーーーァ!!」
ハナカマキリ? はその自慢の鎌を炎で包んでザリガニに一撃を与えた! え!? そんな素敵仕様なんですか!?
「フルルァァア!!」
そして気にせずハサミを振り下ろしたザリガニー!!
「キィ、ギィア……」
即死じゃん。さっきの炎はなんだったんだカマキリくん……。
「あれ? これ俺も経験値入る?」
《ダメージ貢献度が足りません。経験値はありません》
初めて聞く文章だ。ところで女神様、ダメージ貢献度ってなんですか?
「なんとなく言いたいことは分かるけど」
要するに『サボり』『寄生』『MvM』『漁夫の利』辺りを防止するためってことか? 確かに今ので経験値入るならMvMかち合わせるだけでこの島でもレベリング出来ちゃうもんな。
パーティ単位だとまた変わってくるんだろう。回復職があるわけだし……ん? その場合は普通に人数で経験値が等分されるのか?
《『ブラフオーキッドマンティスの花様片×8』を入手しました》
《『ブラフオーキッドマンティスの花衣×2』を入手しました》
《『ブラフオーキッドマンティスの撥足鎌×2』を入手しました》
訂正、アイテムドロップあるならモンスターかち合わせる奴出てくるわ。どういう仕様なんだろ?
そして「はったりがま」って、さっきの炎はただの擬態なんですか?
「フルルァァ……?」
「あ、もしかして俺が関わったから死体残らない……?」
なるほど。アイテムがドロップになってる訳だし死体が残るのはおかしいよな
つまりザリガニの獲物は俺だけってことか。
目の前でご飯が消えたザリガニは更に怒りが増したのか黒い甲殻が段々と赤く……見た目が伊勢海老っぽくなったな。頭とハサミはザリガニだけど。
「フルルァァア!!」
「タコ、お前の犠牲は忘れない。おらぁ!」
アイテムボックスからタコを取り出して投擲! 文字通り食らえおらぁ!
ひゅーっと空を飛ぶタコはそのままザリガニの口へ。我ながらナイスコントロール。スキル様々ですね。
「フルルァ!? ……フルァ」
ザリガニの色が黒に戻った。効果的だったのか……お腹いっぱいだと怒りも治まるんですかね。
そしてタコ2体目をザリガニの右のハサミに向かって投げる! お? ナイスキャッチ。更におかわりもどうぞ!
右のハサミでキャッチしたからこそ、同じ方向に飛んだタコをザリガニは左のハサミでキャッチした。あえて三匹目は遠くに投げずに手前に投げた。するとザリガニの左側、向かい合った俺から見ると右前方はがら空きになる。分かりにくいと思った人は左手で右側にある物を掴んでみてくれ。その時の左側は無防備ってことだ。
戦闘力がない今はそこが活路だ。
食事中のザリガニは置き去りにして岩礁地帯に戻った俺はそのまま砂浜を目指す。そして木の棒を確認してダッシュ! 頭に向かって飛来する手裏剣をしゃがんで回避! 今度はジャンプ!
さらにその勢いで側転をして危険地帯を素通りする。
得点は何点? 芸術点高そうなんだけど。
そしてヒトデたちも無作為に襲いかかるタイプか。
無事砂浜に到着した俺はクワガタのドロップとカマキリのドロップを確認するのだった。
残念ながら武器素材だったのでナイトスラッシュソースタッグという名前が分かっただけだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
さて、夜になりました。正しくは17時になりました。
高城にメッセージを送ったところ、奴は那智さんと合流してパーティを組めたそうな。良かったねぇ……。
ついでに調べてもらった状態『泡沫』はスタミナが0になって一定時間回復しない状態異常だそうだ。強力じゃんと思ったが基本的にはカニ型の魔物くらいしか持たないらしい。ザリガニはカニなのか……??? 俺はその真相を確かめるため秘境に飛ぶ……ことはなかった。
でも公式サイトで経験値については調べてきた。分かったのは以下の三点。
・ソロプレイヤーの場合はダメージ貢献度が存在し、あまりに少ない場合には経験値分配対象に入らないようになっています。これはプレイヤー間のトラブルを防止するためです。
・パーティでは人数で経験値が等分されます。アイテムドロップも人数で分配されますが、回復、デバフ、ダメージ等で算出される戦闘貢献度によって差が生じます。
・ラストアタックが特別な貢献度として評価されることはありません。一戦闘におけるモンスターの自傷を除いて発生したダメージから算出されます。
アイテムドロップについてはこっちからメールした。流石にあんなに貰えると狡いこと考える奴がいるかなーと思って。それ対する回答は早かった。
『ご意見ありがとうございます。
アイテムドロップ率は現在、お詫びとして上昇しています。GWの間は今のままの仕様で、GW明けにはMvMの誘発やトレイン行為ではドロップは微々たるものになり、どれだけ運を上げてもレアドロップはしなくなります。現在もレアドロップはしないよう調整しております。
貴重なご意見の御礼としてお教え致します。アイテムボックスに保管せずともモンスタードロップした武器素材に関しては地中に保管することは可能です。
今後とも、ピッキングアウトをお楽しみください』
だとさ。なんで地中に保管していることがバレたんでしょうなぁ? 自分の行動が見られていると思うと途端に恥ずかしくなる行為が幾つか……まぁ気にすんな俺! 気にしたら敗けだ!!
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
俺はジャッカルにやられてリスポーンしたというのに……。(ついさっき。計3度目かな?)
バリバリと食べているのはいつものドラゴンだ。倒すコツとかある? 魔法以外で。
「生だから見てても食べたいとはならないんだよなぁ……」
テレビでシマウマが捕食されている映像を見ても腹は減らないように、ドラゴンがジャッカルをまるごと口に入れて噛み砕いている映像を至近距離で見ても腹は減らなかった。
「焼いて食べたりしないの?」
「……ガァ」
仕方ないと言わんばかりにドラゴンが近くの木に向かって火を吹く。すると木は燃えることなく炭になり……ドドン……と大きな音を立てて倒れた。
手加減してもこうなるって言いたいのか? 俺は強いからな、仕方ないなー、みたいなその顔やめろ。
「人間なめんなよ? お前らが食えないような上手い料理ができるんだぜ?」
まぁ火がないとできないけど。
「…………」
無視かい。ん? 昨日とは違う……戦闘を前提にした構え。向かう先は……上か?
「ガァ!」
ドラゴンは力強く地面を蹴るとそのまま宙を蹴り、空へと駆ける。そしてそのまま黒い鳥……あ、フクロウじゃん。ざまぁ!
フクロウを咥えたままドラゴンが地上に戻る。おー、お見事。今日は大物だな。
「…………」
あ? なんだよ。そんなに睨むなって、流石に取らないぞ? 美味しいのかは気になるけどな。
するとドラゴンは口を開き、地面にフクロウを下ろした。
「ガァ」
そして俺を見やる。なにその行動。まさか……。
「料理しろってか?」
「ガァ」
そんなこんなで始まります。レッツクッキングターイム!
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
いや、どうしてこうなった?
場所は変わりましてドラゴンのお家の前。野外スタジオですね。
はい! って言ってスタジオ変わる料理番組あるよね。
俺の目の前には巨大なフクロウ。そしてドラゴン。奥さんはまだ呼んでない。
「…………」
睨むなよ……。えー、とりあえず裁く?
鳥だろう? 多分羽根は全部むしるよな。ダガーを取り出してひたすらむしっていく……。ドラゴンが倒したからか俺が触ってもフクロウは消えない。
これあれか? この間の小鳥は心臓で満足したから消えた……とか? そうじゃないと心臓の抜かれた死体が森中に転がってそうだもんな。何それホラーじゃん。
「いや辛い。頭と尾羽根は無視でいい?」
「ガァ」
「お前睨むねー……。奥さんのためだろうからいいけどさ」
こんなに人間味溢れてるとは……まぁ知性ある生き物なわけだし人間と大差ないか。
とりあえず羽根をひたすらむしってその後は塩(天誓花のミサンガを作る際に生じた白い塊。瓶にまとめておいたやつ)を振っていく。うーん、ダイナミック。胡椒とか無い?
「とりあえず塩は適量(全部無くなったふざけんな)まぶして……なんだっけこれ。真珠粉か」
ペロッと1舐め。うーん無味無臭、これは味付けには使えないな。えーっと、魚はあるけど……あ、キノコあるじゃん。赤いシイタケみたいなやつ。黒いエリンギも。
そういえば鑑定してないな。
紅辛子椎茸 食材
非常にスパイシーな椎茸。旨味と辛さが凝縮されている。食べ過ぎ注意。
香蒜茸 食材
焼くと大蒜のような匂いがすることから名付けられた食用のキノコ。熱には弱いものの毒がある。そのため生食は禁じられている。
いけるじゃん。いや黒いエリンギは毒キノコだけど。
「これを……2つにしとくか。ダガーで刻んで……手頃な石で擂り潰す。投擲用のがアイテムボックスにあるからそれで」
はいごーりごーり。ちょっとだけ指先につけてペロッ。
「ンガァ!?」注:俺の悲鳴です。
「な、うわなんだこれ辛っ!? え? これ食材なの……?」
キノコ鍋にしてたら死んでたかもしれん。良かった……鑑定しといて良かった……。後味は美味しいけど。
「これを……あー、サイズが厳しいか。手頃なサイズのブロックに分けて……まぁ待て食べやすいように木の棒に刺すから」
睨むドラゴンをあしらって調理を続ける。
こういうのはキャンプだと表面の皮を削るんだろう? ダガーで削って10本用意。俺今何してんの……。
流石に3メートルはある肉塊なのでまだ半分は残っている。でもまぁ最初はね?
「さて、10個に分けて……切れ込みを大量に入れてこの紅いドロドロしたキノコペーストを刷り込む。
で、だ。ドラゴンさんや、ここに火を吐いてくれんかね」
俺が指差したのは木の棒の皮をまとめておいたところの上に石を幾つか並べたものだ。木が炭になったとしても石は灰にはできないだろうという予想だ。手加減も含めればいけるだろ。
「ガ」
予想通り石に火の玉がぶつかり、火花が、そこにおらぁ! と落ち葉を投入。うん、火が移った。そして木の棒を組み上げて焚き火を作る。
その周りに木の棒に刺したフクロウ肉を並べて……焼いていく。
「ふむ。いいね、豪快な絵面だぜ」
こういうのは普通は魚だと思うけど。仕方ないんだ。鉄板とかない?
「鉄じゃなくても石焼きにはできるか。なぁ、あのデカイ石を薄く切れる? こんな板みたいに」
クンクンと匂いを嗅いでいたドラゴンに注文。ドラゴンは爪2本をクッと軽く振るうと何故か10メートルは離れていた岩が切れていた。
お前さぁ……平然とやってるけど新技じゃん……。何が起こったか分からないどころかあんなん避けようがないだろ……。辛うじて爪に魔力が籠ったのが見えたくらいだ。
「まぁ、いいか。さて岩のプレートが出来たから……残りの肉はステーキにしよう。 とりあえずプレートをまな板がわりにエリンギをスライスしておくか」
そんで絶賛炙られている肉の元へ。木の棒に垂れてくるフクロウの脂をビンに集めておく。お? 焼けてきたか? すげぇ良い匂い。
「ルルルルルー?」
あ、奥さん。呼んでないのに来ちゃったか。まぁ良い匂いしてるもんなぁ。もう少し待っててね。
棒の向きを変えて両面を焼いていく。じりじりと近付いてくる二匹のドラゴンを無視して焼いていく。俺もはや職人では……?
プレッシャーに打ち勝ち完成したのがこちら。
呑梟の旨辛焼き 食品 評価:★8
スパイシーな味付けで香ばしく焼き上げられた梟肉。野性味溢れる逸品。
効果:空腹度回復(高)、一定時間の隠密視認付与
美味しそうなチキンだぜ。ドラゴンがよだれを垂らすくらいのなぁ!
「さぁ待たせたな。食べていいぞ」
ドラゴンは食いにくそうだから持ってやる。奥さんも? どうぞどうぞ。
ハムッ
「グルーー!!」
「ガァ」
うまそうに食ってんじゃん。木の棒まで。
いやそれ食べる部分じゃないんだけど……。まぁいいか。
「さてさて、プレートを熱して……脂を垂らして香蒜茸を炒めて…………うん、良い香りだ、大蒜そのものって感じだけど」
充分に熱したら一度瓶にまとめてアイテムボックスへ。鮮度が落ちないって素敵ですね。
「フクロウ肉をどーん! と焼いていく!」
ひっくり返すことも考えて30cm幅で3等分した。同時に焼いていく。その間に二匹に旨辛焼きを渡すのも忘れない。
これなんてゲームだったっけ。
「よし、いいんじゃない?」
最後に香蒜茸を乗せて。完成したのがこちら。
呑梟のミディアムステーキ 食品 評価:★10
呑梟の肉を削った石で豪快に焼き上げた野性味溢れる逸品。大蒜の香りが食欲を誘う。
効果:空腹度回復(特大)、空腹度最大値上昇(中)
《料理評価★10を獲得しました。称号【一流の料理人】を獲得しました》
《調理回数3回以下で料理評価★10を獲得しました。称号【料理界の期待の新人】を獲得しました》
《条件達成。称号【サバイバル料理人】を獲得しました》
なんか称号手に入った。見りゃ分かるからチェックはいいや。
「奥さんが2枚のほうがいいかな。どうぞどうぞ」
おあがりよ、なんつって。
「グル? キュー!」
奥さんはステーキが気に入ったようで滅茶苦茶喜んで食べていた。ドラゴンはそれを少し羨ましそうに食べていた。お前はジャッカル食べてたろうが。
その後、ドラゴンの腹ごなしに戦闘を行ったものの、昨日より動きの早いドラゴンに為す統べなく敗北した。昨日は使ってこなかった噛み付きを連打しやがった。
ステーキ食えなかった腹いせじゃねぇだろうな……。
料理の評価は味、食材のレアリティ、調理過程で算出されます




