第12話 漂着物と出会い
気づけば海岸狙い挑戦は19時を迎えた。
そういえば謝罪会見があるらしいが、まぁ置いておこう。一応質問はしておいたし、後で見るか……高城に聞けばいいや。
さて、フクロウのアイテムはこちら。
【隠密呑みの夜羽根】 素材
夜に羽ばたく呑梟の羽根。夜行性の呑梟は闇に溶け込む。その中でも隠密の名を冠する呑梟は大きな羽根を落とす。
一部の亜人に好まれ矢羽根に使われている。
矢羽根か。今は使えないな。
いつか機会があるといいな。
とりあえずは挑戦6回で岩礁地帯に到着。
途中ザリガニによってボロボロになった木を発見したので採取。
【薪】 素材・燃焼材
折れた木。よく乾燥している。
これが30近く集まった。サイズはこう……一般的な割る前の薪。斧って落ちてませんか?
単独の四足動物に2回やられた。なんだろう、犬っぽいんだけど狐っぽくもあるというか。サバンナにいそうな見た目だった。
純粋に速くてジャンプ力があった。まぁ小鳥のほうが速かったけど。
3回は群れのほうの犬たち。
残りの1回は大口ナマズだ。前のとは別のやつだろう。とりあえず装備できない木の棒を数本目印にしておいた。前回と違って走っていたから3回ぐらい棒を投げて位置を確認した。誰かに見られていたら変なやつだと思われただろうな……。
そして到着した岩礁地帯を西……多分西、太陽が沈んでいった方角に進む。海岸は危険だろうが仕方ない。ザリガニは今は遠慮したい。
森と海の狭間を進む。どっちからもモンスターが出てきそうだが仕方ないんだ。ん?
シュンシュンシュンシュン!
「どわぁ!?」
何かが海から飛んできた! しゃがんで回避を選択!
トトト!
連続する尖ったものが刺さるような音。音がしたのは森側。右を見るとそこには木に刺さった50センチはある銀色の……手裏剣?
いや、4枚刃のオーソドックスな手裏剣じゃない。5枚刃? というか星型? そしてなんだろう、片面が立体的なのにもう一方の面は平らというか……うわきもっ!
「小さい触手みたいなの出てきた……。これまさかヒトデ?」
ヒトデたちは体をくねらせ触手で木をつかんで刺さっていた部分を引き抜いた。木に星形のシールが貼ってあるみたいだ。見た目だけは。
そしてヒトデたちはそそくさと木を伝い地面へ。海の方へ歩いていく。……ちょっと?
「とりあえずビギナーズソード。スラッシュ! そんで切り返してもっかい!」
ギィン! ギィン!
「傷1つないどころか気にも止めないとか……」
木には止まったのにな。自分で言ってて悲しいわ。
まぁ三匹? とも頭の高さに来るということはそういう設定なんだろう。 音がしたらしゃがめばかわせるかな。
とりあえず木の棒を目印に地面に指しておこう。危険ゾーンと命名しよう。そしてヒトデたちは手裏剣ヒトデだ。多分あってるでしょあんな見た目してるし。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
あの後危険ゾーンは4つ増えた。手裏剣ヒトデは大体3、4匹飛んでくることが分かった。ヒトデって食べれるのかな。帰り道に熱湯用意しておけば茹でられるでしょあれ。
そしてようやく砂浜についた。当初の目的、漂着物を集めよう!
マップの名前も出てない、ロードも挟まないってことは森、岩礁地帯、砂浜は全部同じマップだろう。つまり……ここ島なの? どうなの? ねぇ。
「諦めろ俺、今は漂着物を集めるんだ……」
ほーらこの銀色の鍋とか使えそうじゃん。
【がらくたの鍋】 調理器具
穴は空いていないが凹凸がある鍋。魔術式コンロには適していない。
説明文から分かる時代遅れ感。うるせー魔術式コンロなんてここにはないんだ、これが今一番クールなんだよ!
よく分からんツッコミを入れつつ物色を続ける。
ビンとかないかな……あるじゃん。都合良いな……。
【割れたビン】 保管用
蓋が閉まらないため保管には向かない。
保管用なのに?
【割れたビン】 保管用
一般的なポーションに使われるビン。蓋が閉まらないため保管には向かない。
後ろのは下が球体になっているよくアニメなんかで見るビンだ。紐でぶら下げるやつ。丸底フラスコだったっけ。あれのビンバージョン。不安定すぎると思うんだけど、このゲームもこのタイプなんだな。
リィン・カーネーションの加工、とりあえずは煮詰める。灰にする。後は水に漬ける。ポーションに漬け込むとかとかかな? それは錬金術か?
じゃあ花弁を紐に結んで……ミサンガとか? でもなぁ……花弁破れそうだし……。
【紐】 素材
長い紐。海水に浸されたことで耐久値は低い。
とりあえず集めるか。んー……。
「おーい!!」
ん?
「おい、あんた! もしかしてプレイヤーか!?」
「え?」
顔を上げると走ってくるダンディなおじさん……のめっちゃ嬉しそうな笑顔が見えた。プレイヤーか? って聞いてくるってことは……。
「もしかしてプレイヤー?」
「そうだよ! おいおい初めましてだな!」
すごいテンション高いが……まぁいいや差し出された手には何も持ってないし握手には応じよう。
「あ、はい初めまして」
「俺はジンギス、よろしくな! ってか明日にはこの島から出てくけどよ、まぁフレ登録は継続されるらしいしよろしくな!」
テンション高いおじさん……いやおっさん。これはダンディな見た目には内面が追い付いてなさそうだ。
「俺は……ああ、ゼノンです」
名前忘れてた。
「ゼノンか。まさか森のほうから来たのか?」
「はいそうですけど……」
そういうとおっさんは凄く驚いた顔をした。どうでもいいけどダンディズムの欠片もないな。髪型オールバックなのに。チョビヒゲも似合う濃い顔なのに。
「そいつぁすげぇ! あの森から外に出られるとはな。俺たちなんて海を眺めているのが精一杯だぜ」
「俺たち?」
「おうとも! この海岸は俺含め5人のプレイヤーのリスポン地点だったんだよ」
「5人も!? 俺、ジンギスさんが初めて会ったプレイヤーなんですけど……」
そんなにいたの? 活動時間が合わなかったのかな。
「そりゃ森は色んなモンスターに食われるし、海沿いを進もうにもヒトデにやられるだろ? ここいらで釣りして魚食って貝を食うだけのゲームだったよ」
「え? ヒトデのとこから来たんですけど……」
「マジか! どうやって!?」
どうやってって……。
「頭にしか向かってこなかったんで音が聞こえる度にしゃがみました」
「んな簡単に言うけどよ……。あれ尋常じゃねぇ速さだぞ?」
小鳥のほうが速いからなぁ……。
「ところでこの島から出ていくってとういうことですか?」
「記者会見見てなかった口か? 通達にあったろ?
リメイクするんだよ。もれなく5人でな」
「5人……ここに住んでたのに?」
「いや住んではないけどな? リスポーン地点だっただけだ。
なんだかんだ意気投合してよ。全員ソロだったが、パーティー組んでみるかって話になってな。それならスターテイルから始めようぜってな」
「なるほど……」
俺には無理だな……。最初にヒトデにやられてたら絶対煮込んででも倒してやろうって思うし、小鳥もどうにか倒したいと思ってしまっている。ドラゴンは絶対泣かす。
この島でサバイバルするのは厳しいかもしれないが、ここはゲームなんだ。なんだかんだ挑戦し続けることができるなら、俺は挑戦していたい。
「ゼノン、お前はなんとなくだがソロ向きだな? 見ていて感じるよ。一人でもやりがいを見付けるタイプだ」
「ジンギスさんはソロでやりたかったんじゃ?」
「そうだけどよ。違うんだよ。俺は何人かといるほうが楽しいと思うんだよ。一人が嫌いな訳じゃないけどよ。
ソロって言ってもなんだかんだ野良パを組んでたと思うぜ。それは他の奴等も一緒でよ」
うーむ。言いたいことはなんとなく分かる。そしてなんとなくしか分からない俺は多分、違う考え方をしているんだろう。
俺は一人で目的に走る。ジンギスさんたちは一人でも走れるが仲間と走れるならそっちを選ぶと。そんな違い。
俺は行き当たりばったりだからなぁ……。その場その場で考えているから計画というより仕掛けを仕込んでいる感覚だからな。それを誰かと共有するのは苦手だ。
「そうだ、ゼノン。お前さんこの島に残るのか?」
「とりあえず出ていく気はないですね」
「無茶な奴だ。そういう熱い目は嫌いじゃないけどな。
それならよ、俺らの集めたアイテム、貰ってくれないか?」
「いいんですか!?」
そんないい話があるんですか!?
「おうよ。キャラリメイクするとアイテムは無くなるって会見で言ってたからな。それにこの島で何かするっていうお前さんが楽しみだ」
ジンギスさん、普通にいい人そうだ。どんなアイテムかは分からないけど、貰えるものは貰っておこう。落ち葉よりは絶対良いだろうし。
「ちょっと待ってろ? 他のにも聞いてみる」
恐らくパーティを組む予定の他の四人にフレンドメールをしたジンギスさんとは明日朝7時にここで会うことになった。7時なら学校にも間に合うし大丈夫だろう。
その後、俺はジンギスさんとフレンドコードを交換してログアウトした。そして目覚ましをセットして夕飯を食べて風呂に入って宿題を終わらせる。そのままの流れで寝る。
だってログインしてても漂着物集めるだけだし。万が一死んだらリスポンするのは森だもの。絶対7時までには戻れないからな。
明日は月曜日、俺は学校があるのだ。
ちなみにジンギスさんたちは12連休なんだってさ!! いいなーー!!!




