第11話 加工のために
日曜の夕方。リアルだとまだ明るいがゲームでは暗くなりつつある。
よし、アクセサリーを作ろう。
自棄になったとかではなく、スキルを取得したからには試したいじゃない? さっきの壁蹴りしかり。
さてさて、まずは《鑑定》から。
怪しいのはこの紫のカーネーション。
【リィン・カーネーション】 加工素材
紫の花弁、淡い水色の縁取り。闇夜に浮かぶその彩りは僅かな月明かりすらも反射する花。死神が住む冥府でさえ、この花は輝くという。
<加工先>
◇???
◇???
◇???
リィン・カーネーションとは。名前からして蘇生アイテムっぽい。ただ、加工先は分からないのか。加工のレベルが上がったら分かるとか? それとも職業でロックがある? 剣闘士がアクセサリーを作ってはいけないというのか!
まぁ作るんですが。
「こういうのはゲームとして考えればいい。
花、アクセサリーで考えたら相場は決まってくる」
まずは髪飾り。次にブローチ。大穴はミサンガだ。
「説明文に熱への耐性が書かれてないっていうことは植物のほとんどは熱には弱い。ここら辺はリアリティーを追及する昨今のゲームではあえて覆さない部分だ。
まぁ灰にすることを加工って言われたら悔しいから後で試すけど」
何が言いたいかと言うと、こういう植物系のアイテムは鉄に溶かすと属性武器になります! とはならないだろうという予想だ。
「まずは文明のためにいろいろ集めたい。
海岸にいけば大体のものは転がっている……と予想する」
リアリティー、そうリアリティーだ。海岸には何かしら漂着物があるだろう! あったらいいな!
「まずは夜になったこの森を抜けられるか……」
海岸はえーと、左。というか太陽のほうだったから……南かな? 試しつつ行こう。
「ジャンプ、からの、ジャンプ!」
両手には木の棒。至るところで拾ってるから既に装備用だけで30を越えた。試したいのは壁蹴りとカウンターバッシュだ。
カウンターバッシュは力の向きさえ正反対であれば片手でも発動するのか、という検証はさっきドラゴンで試した。結論、成功するが木の棒だと壊れてしまった。多分耐久値があるんだろう。アイテムだから見れないけど。
俺の持っているビギナーズソードは片手剣だ。片手でドラゴンの爪に耐えられる耐久値無し武器、まずは片手で振り回すことに慣れる必要があるし、この森での貴重な戦力、大事にしていこう。そしてさすがに片手でドラゴンは相手にできないので、木の棒は必須になるだろうなぁと。数で補う武器として木の棒は引き続き集める。
壁蹴り、着地、走る、ジャンプ、壁蹴り、着地、走るを繰り返す。壁蹴りはリキャストタイムはかなり短い。だからこそ何度も練習できる。目標は自在に跳ぶ角度を変えられる所まで。
壁から壁へ、はまだ無理そうだけど。練習してもリキャストタイムは縮まないしなぁ……。スキルレベルが上がればできるようになりそう?
そしてジャンプしている間はスタミナが回復するという仕様! これが一番ありがたい! なんせ低スタミナの俺が無限に移動できてしまう! これは口を塞いでおきたい内容だ、エラッタ駄目絶対!
「おおっと!? 三次元的起動にはついてこれないのかフクロウくん!」
「キェー!!」
すごい! あのフクロウをかわした! 完全に偶然だけど!
一切音が聞こえなかったんだけど。あのフクロウの奇襲力高すぎない?
まぁそんなフクロウも獲物に逃げられて悔しいのか隠密も忘れて大きな声を上げた。
それが命取りだったのだろうか。
「ピピィ!」
シュド!
「キェ!?」
ドサッ。
「は?」
鳥の鳴き声。
フクロウが射抜かれる音。
フクロウの断末魔。
フクロウが倒れる音。
俺から漏れた声。
ピピィ! という鳴き声に思わず振り替える。驚愕して足を止めた俺が見たのは心臓があるだろう体の中心に穴を開けたフクロウの姿だった。フクロウは一切動かない。
そして3メートルはあろうかというフクロウの亡骸の前にいるのは本当に小さな鳥。その鳥は何か赤黒い塊をつつきながら食べている。えぇ……。
「まさか……それ心臓?」
3メートル級のフクロウが? 多分20センチくらいの鳥に? 負けたんです……?
「そしてあの小鳥、多分一番最初に俺を殺したやつだな……」
声が同じだもの。あれあんな小さい鳥だったんだ。そしてあんなに強かったんだ……。
「ごめんなフクロウ、俺はお前を……」
見捨ててたまるかアイテム寄越せ!!
「おらぁ!」
「ピ?」
スキル《投擲》のお陰かぶん投げた木の棒はきれいな回転をしながら心臓を堪能している小鳥に向かう。小鳥は何でもないように嘴で弾いた。それは陽動。俺はもう駆け出していた。
多分15秒! それがモンスターがポリゴンになって消えるまでの時間! 分かんない、詳しいことは分かんないけど多分プレイヤーと同じだろうという予想!
木を《壁蹴り》で跳ねフクロウまで飛び込む。お前のアイテムもらうぞ! 具体的にどうもらえばいいんだろう! 見切り発車とはこの事だ。
でもこのフクロウに4回食われたしなぁ……。俺も仕返ししたいんだよ。
「触れ……た!」
フクロウはポリゴンになって消えてしまった。だが俺の手には確かにアイテムが! そのアイテムは……。
「これ前に拾った鳥の羽根じゃん!」
外れ枠か……。
「ピピィ!!!」
「おふ!」
気付いたら小鳥は俺を貫いていった。視界に捉えたのは翼を広げて走る鳥が異常に速かったことだけだ。
そして心臓を一突き。突きというか、貫きというか、これ俺も心臓を抜き取られてるんかな……。
《レベル差が離れすぎています。デスペナルティはありません》
小鳥レベル幾つなの? フクロウより高かったりする?
小鳥
正式名称 ツラヌキイカル Lv.168
:小さな体で大地を駆け、翼を広げ滑空する。その速度は時速200km。強靭な尖った嘴で何でも貫く。
フクロウ
正式名称 隠密呑梟 Lv.142
:自分より小柄な獲物を上空から奇襲し丸飲みにする。黒い羽根は闇に溶け込むため夜しか活動しない。昼間は木に擬態して眠る。羽根は活動している時間により色が黒から木目調に代わるが抜け落ちた羽根は色が変わらない。
モンスターの情報を主人公が知るのが遠すぎるので少しずつ。




