夏休みの始まり2
真咲は怒りのオーラを漂わせながら、芳宏を睨みつけている。
「心狭い奴だ。そんなに余裕ないとすぐに愛想尽かされるぞ。」
真咲の怒りもなんでもないような顔で芳宏は受け流す。突然の真咲の乱入に、寿々はオロオロと2人を見比べている。
「彼女を怖がらせたらかわいそうだろう?」
はっとした真咲からは先ほどの怒気は消えていた。
「真咲、立ってないで座りなさい。」
そういって芳宏は空いていた自分の隣を指差したが、一瞬嫌そうな顔をした真咲は、同じく空いていた寿々の隣に座った。
「なんで芳宏さんが寿々とこんなところにいるんだ。」
「真咲のつがいだと言う少女に会ってみたくてね。真澄も会いたがっているか、そのお誘いも兼ねて。」
真澄というのが真咲の叔母だろう。芳宏がニヤリと笑った。
「もちろん真咲のいないところで会おうと思って。まだ答えてもらっていないんだろ?ぜひうちにご招待したくて。」
「あの、お家にお邪魔するんですか?」
寿々が口を挟んだ。
「ああ、嫌でなければ。実は妻は身体が強くなくてね。あまり外出はできないんだ。」
病弱なので寝込む日も多いらしい。確かにそれでは外で会うのは難しいだろう。
「同じ敷地内ではあるけど、真咲の住む本邸とは別の建物だからね、真咲は邪魔しないから安心してくるといいよ。」
真咲は苦い顔をしている。
本邸とか敷地内とか、さすがはお金持ちだと感心してしまった。高校に入ってから、今までの自分にない驚きばかりあるせいか、次の週真咲の叔母に会う約束をしてしまった。
送るという芳宏を威嚇しながら真咲は自分の迎えの車に寿々を乗せた。連休以来この車に寿々が乗るのは始めてだ。
車内で、真澄は子どもの頃から身体が弱かったこと。芳宏との子どもを身篭ったが死産でそのあとより調子を崩したこと、その子とほぼ同時に生まれ、母を亡くした真咲を可愛がり、本体のすぐ近くに別邸を建てて夫婦で真咲の面倒を見てくれたことなどを聞いた。
父よりよほどゲンコツを食らったら首根っこを掴まれて怒られたり、真澄に慰められたりと真咲と関わってくれたのだそうだ。
自分はこれからどうなっていくんだろうかと、真咲の話を聞きつつ遠い目で外の景色を見た。




