表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/12

彼女の選択

真咲は寿々の言葉に絶句している。


「私だって…、さ、寂しかったですよ…」


寿々の言葉がどんどん小さくなる。やはりだめだっただろうか。こんなことを言ったらよくなかっただろうか。不安になる


しばらく固まっていた真咲は、それでも寿々の言葉を理解したらしい。


「寿々、それは…僕に会いたかった…?」


「そうです…」


真咲の表情がみるみる明るくなり、寿々を抱きしめようと両手を広げて彼女の前に立ったところで思い出したようにぴたりと止まった。ふわりといつもの甘い香りが漂ってくる。


「寿々、抱きしめてもいい?」


わざわざ律儀に聴いてくるところが真咲らしい。寿々が顔を真っ赤にしたまま小さく頷くと、壊れ物のようにぎゅ、と抱きしめられた。


「寿々の甘い香りがする…」


胸の紋様が温かくなる気がした。くらりとめまいのようなものがして、真咲の背中に腕を回した。にわかに真咲の腕の力が強くなる。


「寿々、可愛い…僕のつがい…」


「先輩は、私がつがいだから好きになってくれたんですか…?」


真咲が不意に腕の力を抜き、2人の間に隙間ができた。寿々はつい、先ほどまであったぬくもりがなくなり寂しいと思ってしまった。キスできそうな距離で真咲に顔をのぞき込まれる。鳶色の瞳に縫い止められたように体が動かなくなる。


「きっかけはつがいだろう。でも、いつも控えめな寿々も、時々見せてくれる可愛い笑顔も、勉強をがんばっているところも、ちょっと後ろ向きで人見知りなところも本当は寂しがり屋なところも知っていくごとに好きになったんだ。寿々が好きなんだ。寿々が勉強をがんばっているから、僕も君に負けないように勉強や生徒会をがんばる。もし、僕の気持ちを受け入れてくれるなら、寂しい思いはさせない。寿々しか見ないし大事にする。」


真咲はいつも寿々にまっすぐな視線を向けてくれる。きっと真咲は寿々の置かれているある程度の環境も知っているのだろう。それでも同情や上から目線の憐憫を彼から感じたことはなかった。

頭の中に、真斗と真澄の『失敗したら、大人が責任をとるよ』といった顔が思い浮かんだ。


「…私も、好きです。先輩とずっと一緒にいたい…」


顔が熱い。きっと今、寿々の顔は真っ赤だろう。それでも、まっすぐに真咲の顔を見て、小さい声ながらも寿々ははっきり告げた。


「たぶん初めて会ったときから、好きです。でも、私にはお金も家柄もないし、家庭とか、家族というものはよくわかりません。先輩にあげられるものなんて何も持ってないんです。先輩の想像しているものとは違ってしまうかもしれません…。」


「僕は寿々が欲しい。寿々はその身一つで僕のものになってくれればいいんだ。」


そっと真咲の顔が近づいてきた。寿々は自然と瞳を閉じた。触れるだけのキスをされる。すぐに離れてしまったその唇に寂しさを感じる。初めて会ったときのように、濃く甘い香りに包まれた。


「僕の持っているものは全部寿々にあげる。だから、寿々が全部欲しい。」


再び唇にキスが降ってきた。甘い香りに頭の中がかすんでいくような気がした。寿々の好きな鳶色の強い瞳が、今はとろりとしている。何度か触れるだけのキスをされた後、最後にぺろりと唇を舐められた。驚いて寿々の唇が緩むと、そこから真咲の舌が入ってくる。


「ん、んむ…」


ちゅ、ちゅと音がして、恥ずかしくて耳をふさぎたくなるが、強く真咲に拘束されてしまってそれは叶わない。どんどん濃くなる香りと熱くなる体に、真咲の熱い唇に、頭の中が白くなっていく。時間の感覚もなく、いつしかお互い夢中になって唇をむさぼった。真咲は唇だけでなく、頬や額、まぶたなど様々なところにキスの雨を降らせ始める。そのまま真咲の唇が寿々の首筋に触れた。


「ひぁっ…」


驚いた寿々の口から小さな悲鳴が上がった。なおも真咲ははむように彼女の首に唇を這わせる。ぞわぞわとした感覚が寿々の背筋を駆け上ってきた。


「寿々、可愛い…ん…寿々…」


熱に浮かされたように真咲が甘くささやく。真咲は片腕で寿々を抱いたままもう片方の手を寿々の胸元のリボンにかけ、するりとリボンを引き抜いた。寿々は夢見心地のまま、いつの間にか真咲の首に腕を回して、繰り返されるキスと首への愛撫を甘い声を上げながら受け入れている。一つ目のボタンが器用に外された。寿々の耳の後ろに唇が触れ、ちり、とした軽い痛みが走る。それすら今の寿々には甘美な刺激だ。



















『ピピピピピピピ』



突然室内に無機質な電子音が響き渡った。お互いにはっと我に返ると、真咲は音の発生源である自分の携帯を取り出した。寿々は慌ててブラウスの乱れを直す。



「なんだ…ああ、それは風紀委員長に話を通してある。…いや。…そうだ…僕は昼から休みだ。…いい…じゃあ。」



短く会話して通話を切ると、真咲はそのままサイレントモードにしたようだった。


「その、すまない。役員からの電話で…いや、そこじゃない」


真咲も挙動不審になっている。つい、寿々はくすりと笑ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ