彼と私のその結果
その後、恥ずかしそうな真咲はどこからか取り出した小さな箱の中から、細いピンクゴールドのチェーンのネックレスをとりだした。
「先輩、これ…?」
寿々は渡されたそれを不思議そうに見た。小さな紫色の宝石が組み合わされ、小さな花を形作っている。
「指輪は、まだ早いかと思って。その花の色が寿々の黒い髪によく合う。」
真咲は寿々の手に合ったそのネックレスを取り、寿々の首につけた。
「それなら服のしたに身につけられるだろ?今はまだ高校生だから無理だが、いつか指輪を贈るときまでそれを身につけていてくれないか。」
寿々はこくりと頷いた。
「これはなんの花ですか?」
紫の石で作られた花はあまり見かけない形だ。
「それは…桔梗の花なんだ…先週ちょうど届いたから、今日寿々に渡したくて。」
何となく歯切れ悪く真咲が言った。
「桔梗って珍しいですね。」
少ない寿々の知識にも、桔梗のアクセサリーというのはめずらしい気がする。
真咲にはそのうち教えると言われ、うやむやにされた。
学園祭からしばらくして、寿々に養子の話が持ち上がった。もちろん芳宏真澄夫妻だ。何度かの交流が外泊体験を経て、年が変るころ寿々は正式に2人の娘の東條寿々となった。学校には芳宏が話を通してくれて、正式な書類は東條寿々だが、学校内の名簿では卒業まで橘寿々のままとなる。
真咲は、一足先に同じ名字になってしまったことが複雑だったようだ。
今まで通り芳宏たちは別館に住み、寿々もそこに引き取られた。しかし、新しく迎えた娘を溺愛し、きちんと結婚するまで清い交際をと強行に主張する芳宏により、真咲は基本的に別館に立ち入り禁止となった。それでも、敷地内の温室や本邸の人目のある場所で会えることを思えば、今までよりも格段に真咲と会うことができる。家での食事も一緒だ。芳宏や真澄は、学費は心配いらないから、無理に特待生を続けなくてもいいと言ってくれているが、2人に負担をかけたくないので、できる限り勉強をがんばりたいと伝えてある。
学園でも寿々のことを公表したい、と真咲は言っていたがまわりの反応(主に女生徒)が恐ろしいのでできるだけ隠す方向でと頼んだ。
綾にだけは、ある程度かいつまんで事情を話した。彼女なら軽々しく吹聴することはないだろう。笑って祝ってくれた。
施設に入っている祖母にも報告に行ったが、短期間で認知症が進んでしまい、寿々のことをもう覚えてくれてはいなかった。
あれからいろいろなことがあった。
東條家はやっぱり上流階級だと思うことがたくさんあった。
娘を着飾ることに目覚めた真澄によって、クローゼットに入りきらないほどの服やドレスをもらい、真咲の婚約者として出席するパーティ等のイベントではたくさんの悪意にさらされ、真咲が真斗に嫉妬して怒り狂うこともあった。マナーや振る舞いなど、覚えるべきことも山ほどあった。自称「真咲の恋人」に嫌がらせされたこともあった。学園で公表しなくても、社交界で広まった真咲の恋人の存在は学園でも認知され、好奇の視線にさらされるのにもなれてしまった。
それでも何とかやっていけているのは、真咲や真斗、芳宏真澄夫妻がどんなときも寿々を気遣い守ってくれるからだ。家族の温かさと心強さを、寿々は初めて知った。
真咲というつがいに出会って、寿々の人生は180度変ってしまったが、寿々にはそれはつらいことではなかった。
「寿々」
準備を終えて部屋で一人、今までのことを考えながら出番を待っていると、真咲が部屋に入ってきた。
白いドレスをまとった寿々の姿をみて、真咲の顔が赤く染まる。
「寿々、すごくきれいだ。」
そういう真咲も今日は光沢のあるグレーのモーニングに薄い茶の髪はぴっちりと後ろになでつけてある。
「真咲も、すてきです。」
いつものように寿々にキスしようとした真咲も化粧が落ちてしまうことに気づいたようだ。残念そうにしている。
今日の寿々は真っ白いプリンセスラインのオフショルダーのドレスをまとっている。真澄の主張により、後ろのトレーンは長めに、繊細な刺繍の施された薄いベールはさらに長い。髪には白い花飾りと花嫁にしては珍しい青っぽい色の桔梗が一輪さしてある。
今日は二人の結婚式だ。気を張らなくていいようにと、主役の2人の他には真斗と芳宏、真澄だけの式を挙げる。
対外的な親戚などを招いた結婚式は明日からだが、今日は家族だけの結婚式だ。
「寿々、これからもずっと寂しい思いはさせない。大切にする。愛しているよ。」
真咲が寿々を抱きしめた。
「はい。私も、愛しています。」
そう言って、寿々は花のように笑った。
教えてくれない真咲にしびれを切らし真澄にきいた、桔梗の花言葉は
『永遠の愛』
ポイントやブックマーク、ありがとうございました。応援していただけて無事に書き終えることができますた。
気が向いたら描き切れなかった番外編などを足していこうとおもいます。




