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7話・エピローグ




 異世界の出来事がなかったかのように、地球ではいつも通りの日々が戻ってきた。

 勿論、母親に異世界の事を聞くのも忘れず、兄弟たちからは日々どんな事があったかと聞かれたりもしたのだが、それでも雫の日常は変わらない。


 もし、変わった事をあげるとしたら一つ二つ…だろうか。





「雫。一緒に帰ろう」

 

 変化一つ目。彗の女癖の悪さが一切なくなった。

 どういう心境の変化なのか、雫にはわからないがそれでも、泣く女性が減ったのは良い事なのだろうと思っている。


「別にいいけど。寄り道しないから」

 特に会話があるわけじゃないのだが、彗は毎日毎日こうして雫の元を訪れる。害があるわけじゃないから特に気にはしないし、通学の時限定だからほっておいたりもしているのが本音だ。

「知ってる知ってる。で、どうせ今日も行くんだろ?」

「うん」


 変化二つ目。

 予想通り、雫の特殊能力は消えないまま、今も身に宿っている。

 それは彗も同じで、雫程自由ではないがあの世界と地球を行き来出来るのだ。

 今では兄弟たちも連れて行って特殊能力を身に付けているのだから、つくづく天宮の血筋は規格外だと思えてしまう。

 この規格外を本当の意味で理解出来たのは、彗ではなく雫自身の変化なのだろう。


 緩やかな。けれど確かな変化。

 彗と雫の関係も、一方通行ではあるしまったく気付かれてはいないが、あの時のような余裕のない状態には突入しない。


「(ナーダとかと会うってのは、やっぱ嫌なんだけどさ)」

 雫自身はまったく気付いていないけれど、地球に帰ってきた直後、彗は振られたのだ。雫に気付かれてはいないのを良い事に、未だに片思いを続けていたり足掻いたりもしているのだが、この状態が辛いのかどうなのかがいまいち分からない。

 女性問題を全て片付けた後、振られたのに距離が近くなった気がするという複雑な気分を味わっているのだ。

 あちらでは所長やナーダも足掻きつつ、地球で彗が近くにいる事に悔しい想いをしているならお互い様だが、まだ溜飲は下がる。

 一方的に悔しい想いをしていなければいいのだ。


「今日は俺も行く。騎士団の訓練があるんだよな」


「ふぅん」


 二重生活がいつまで続くのか。

 雫がどんな結論を出すのか。


「今度外に行くっていうからさ。面白いものがあったら採ってくるけど──」


 興味なさげな雫に一石を投じてみる。すると、きらり、と雫の瞳の奥に興味の光が宿った。予想通り食いついた。


「──…いる?」


「いる」


 ナーダなら何も言わずに差し出すのだが、彗は違う。これも、ちゃんと雫の興味を引くモノとして利用するのだ。

「オッケー。採ってくるよ」

「ナーダと被らないようにちゃんと話してね」

「…オッケー」

 どうやらナーダは元から数に入っていたらしい。思わず脱力したように肩を落とした彗だが、雫らしいと気分を切り替えた。

 家に帰って服を着替えて。騎士の衣服はあちらに保管してるので、態々地球からは着ていかない。もしここの住人に見られようものなら、ただのコスプレだ。

 流石にそれは辛いと、彗は口に出さないまでも地球であの格好はしないと、固く心に誓っていた。

 雫は不思議そうに見ていたが、幾ら大好きな相手が全然平気だといっても彗の羞恥心はなくなりはしない。

 寧ろ、雫が興味なさ過ぎなのだ。


「雫ー。着替えたらすぐ行くから、家で待ってろよ」

「ん? 自分で行けばいいんじゃない?」

「俺の魔力は雫に比べて極僅かなんだって。雫が行くならつれてってくれるとすっげー嬉しい」

 ちらり、と見てみれば、考え込むように顎に手を持っていく雫。心の中でガッツポーズをしながら、ひたすら雫の返答を待つ。

「しょうがない。いいよ。10分以内ね」

「勿論」

 即決で断らなければ、断られないのだ。

 珍しくにんまりとしながら、彗は雫から空へと視線を移した。

 今日の天気は良い。まさしく晴天。これだけでいい事がありそうだな、なんて単純にそんな事を考える彗の隣で雫が。


「(この陽気のせいで頭の螺子が飛んだかな)」


 と、にやけ面の彗を見ながらそんな事を考えているなんて知らず、彗の表情は晴れ晴れだった。



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