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第37話:Restful

 



 御来(みらい)が目覚めてから1週間。



 日本の混乱もある程度収束し、

 メンバーは改めてコントロールルームに集まっていた。

 「なんだか、ここで集まるのも慣れてきたねー。」

 

 凄く軽い言い回しをしている神楽(かぐら)だが、

 全身の随所に包帯を巻いており、痛々しさは拭えない。


 しかしここ数日で見慣れたのか、

 メンバーたちは落ち着いていた。


 ただ一人を除いて。


「ほんとすんませんでしたッス!」



 我妻(あがつま)はずっとこの調子だ。

 御来を救った功績の大きさを鑑みれば、

 誰も何も言わないのが当たり前……なのだが。


 火傷させた当人は何処か負い目を感じているらしい。



「いーのいーの、その話は終わり!

 さて、作戦会議はじめよっか!雫(しずく)ちゃーん。」


 呼ばれた雫は資料を持って神楽の横に立つ。


「はい、まず国内の情勢についてです。」


1.  数週間でヴィスターのある程度の殲滅が確認された。

  最も被害が集中したのは関東地区。

  国はこの事を「日本超(にほんちょう)魔電災(までんさい)」と呼称し、

  早期の復興を計画している。


2.  魔電災により一部のモンスターが、

  人里に降り始めたようで、

  「二次災害」への警戒の呼びかけが続いている。

 

3.  非公式ではあるが死者数は日本人口の3割程度と予測。

  国で残党狩り・防衛の為の部隊も編成中とのこと。



「……酷いわね。」


 コントロールルームに映されたモニターを見つめながら、

 話の途中に改めて林檎(りんご)が一言こぼす。



「うーん……むしろこれだけで抑えられたのが、

 幸運というのが正しそうですねぇ。」

 

 山本(やまもと)が顎に手を当てながら唸る。


「というと?」


 神楽が疑問を呈すると山本は口早に話し続ける。

「いえ、腐っても社長なもので……。

 他社の話も耳に入ってくるんですよ。」


「他社っスか?」

 我妻の疑問に山本は頷く。


「どうやら会社だけでは手の届かない僻地にて、

 【固有魔法】(ユニークマジック)が発現して難を凌いだという噂が……。」



「……はぁ、今回の災害の狙いはそこかしらね。」

 溜め息を付きながら林檎が相槌をいれる。


「何よ、随分と規模の大きな迷惑じゃない。」

 傷の経過が良好な御来が声を出す。

 

 彼女の魔力が治癒に対して、

 プラスに作用しているのは大きいだろう。

 そのため、周りもあまり心配はしていなかった。

 


 これまた一人を除いて。



 「おいしゃさま……。」

 服の裾あたりを掴むクルミ。

 

 御来のことが心配なのか不安なのか、それとも両方か。

 治療が終わってからあまり御来の側を離れていない。

 

「大丈夫、あんまり心配してると疲れちゃうんだから。

 もっと子供らしくなさい。」


「うん……。」


 掴む力が強くなる。

 母を目の前で亡くした彼女に、

 不安になるなという方が無理だろう。


「話の腰が折れちゃったついでに、

 クルミちゃんの話をしようか。」

 

 軽く手を叩くような動作を見せる神楽。


「クルミちゃんを家族の所まで送り届けようって話に、

 問題が出てきちゃってねー。」

「問題……ですか?」

  

「そ、彼女のお母さんはシングルマザーで、

 女手一つでクルミちゃんを育ててたみたい。

 しかも親戚たちとの連絡も取れないんだよね。」


「……。」

 クルミの表情に影が落ちる。


「一応僕も人脈使ったんだけどねぇ……ごめんねぇ……。」

 対して山本は申し訳なさそうに頭を掻いている。



「じゃあ彼女を何処か施設に預ける……、

 ってのが妥当になるかしら?」


 林檎がそう言うとクルミは顔を上げ大声で叫び始めた。


「ぃゃ……いやだ!」

 

 感情と同期した魔力がバチバチと音を立て、

 彼女の身体の周りを巡り始める。

 

 周りは動揺していたが、

 御来は平然と優しく頭を撫でて声をかける。


「大丈夫よ、

 あなたの嫌なことを私たちがするわけないでしょ?」


 御来の声を聴き、ゆっくりと嵐が沈静化していく。


「うん……。」

 

「となると、

 アタシ達でしばらくは面倒を見るってことよね。」

 

 林檎は神楽を見る。

 神楽は精一杯頭を悩ませていた。


「うーん、うーん、うーん……。」

 

(当然、彼女の事を思うなら……。

 彼女を既知の家や安全なシェルターへと移動させるのが、

 妥当なんだけど……本人が嫌がってるからなー。)


「おねえちゃん?」

 

 神楽の顔を覗き込むクルミ。

 しかし神楽はクルミを見つめたまま難しい顔をする。



 「いいんじゃない?別に。」


 

 扉を開く音とともに声を発したのは、

 意外にも一ノ瀬だった。


「丞、アンタ会議めんどいから来ないって……。」


「さっきクルミちゃん電磁嵐出したよね?

 うちの作業場がみんなひっくり返っちゃったからさ~。

 何かあったかなって様子だけ見にきたんだよ。」

 

「あ、いちのせにいちゃん!」

 

 クルミが駆け寄る。

 我妻達の治療中にクルミを見ていたのが一ノ瀬だった。

 

「いかにも!一ノ瀬にーちゃんだよー。」

 

「ごめいわくかけちゃった?」

 少しもじもじとするクルミ。


「いや……全然!

 むしろ新しいくっつき方で想像力を掻き立てられたね!」

「……よかった!また作るとこ見てていい?」

「もちろん!ほら!肩においで。」


「わーい!」

 そうして一ノ瀬はクルミをおんぶして扉を出る。

 

「決まったことだけ教えて〜、それじゃ!」

「それじゃ!」


 二人共元気な声で去っていった。


「……えぇ、

 あんなに一ノ瀬くんって子守上手かったの?」


 御来がそう言うと呆れた顔で林檎が続く。


「いや、あれは同レベルだからよ、御来ちゃん。丞が園児並みってこと。」

 辛辣なことを言うが一ノ瀬が来たことにより、

 周りの雰囲気は朗らかになった。


「それじゃ、気を取り直して。続いてだけど……。」

 


 フロンテラ陣営の会議は続く。



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