↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/54

第36話:wake up



 

 熱(・)い(・)。




 

 我妻(あがつま)が感じているモノは、ソレでしかなかった。

 焼かれているのは、身体だけなのか。

 

「後少し……!」


 御来(みらい)の傷はまもなく塞がろうとしている。


 ここ数日寝食を一度もせず、

 回復に専念している我妻は途中で何度も意識を失った。


 肌が焼かれ、血管が焼かれ、

 臓器が焼かれ、意識が焼かれ、

 そして、全てが灰になろうとも。


 自分を救った御来を殺させてはいけない。


 自分を突き動かすのは自分が治療されている時、

 身体中を流れてきた御来の魔力。

 

 彼女の魔力は『命に対する信念』が強く出て、

 我妻は意識の無い中でもソレを感じ取っていた。

 

 だからこそ、

 彼女をこんな形で終わらせてはいけないのだ。


 我妻の身体から発する熱は、

 部屋の温度を50度以上へ引き上げている。

 その地獄の中、

 我妻の他にずっと側で我妻と御来を見守る一人がいた。


 

 丸ノ内神楽(まるのうちかぐら)だった。

 

 

 彼女は嫌な顔を1つせず、

 ずっと二人の事を見守っている。


 我妻の意識が無くなれば身体を支え、

 御来の体温が上がり過ぎないよう濡れタオルで体を拭く。

 タオルを入れた桶はスグに沸騰しそのたびに交換する。

 

 それを繰り返していた事もあり、

 戦闘をしない綺麗な彼女の腕は既に火傷だらけで、

 皮膚は爛れている。

 

 彼女は我妻以上に意識を失わない様に耐え続けていた。


 何度も林檎や雫が交代を申し出てきたが、

 神楽は全てを突っぱねてここに座り続けている。


 

 そうして時間は経ち、4日目の朝。



 我妻は再生の炎が御来の傷に反応しないのを確認すると、

 上げていた手を下ろす。

 

 見ていた神楽がボソりと呟く。

「終わった……?」

  


 永遠とも感じられた時間は過ぎ、

 部屋の熱が引いたことは、

 神楽は現実のものとして認識するのに十分だった。


 そして我妻が倒れそうになったところを、

 ギリギリで受け止めた。


「お疲れ様……。」


「……ッス……これで……。」


 眼球の焦点も合わず、

 独り言のように御来の経過だけを話す我妻の意識が、

 数時間前からなかったことを神楽は知っていた。


 

「ちゃんと見てたよ、

 御来ちゃんそっくりだったよ、頑張ったね我妻くん。」



 自分の意識をぎりぎり保ちながら、

 扉の外で待機していた皆に声をかける。


「みんな、終わったよ、

 手を出さないでくれてありが……。」

 

 言い終わる前に雫と林檎が駆け込んでくる。

 居てもたってもいられなかったのだろう。


 遅れて山本が、一ノ瀬はその場には居なかった。



「お疲れ様です、神楽さん。」



 山本が声を掛けると、

 眼の下に隈を作っている神楽が笑顔を作った。

 

「どう……かな、少しはリーダーらしく見えるかな……?」


 山本は苦笑いをしながら返事を返す。

「……全く、

 そんなことをしなくても最初から皆は、

 神楽さんの事をリーダーだと思っていますよ。」


「えへへ、あんまり慣れてない事したからさ……。」


 作られた笑顔がゆっくりと崩れ、

 ゆっくりと眼が閉じていく。


「本当にリーダーになりたかったら、

 ちゃんと次はみんなを頼ってくださいね。」


 神楽は小さく頷く。

 聞こえていた周りの喧騒はゆっくりと遠くなっていった。




 ——————————————————————

 


 1週間後。

 


 雫は眼を覚ました。


 

 ここは治療室。

 我妻が治療していた部屋とは別に、

 新たに用意した部屋だ。


 我妻が御来の治療に使っていた元々の部屋は、

 物資の大半が溶けたり蒸発したり、

 殆どが使い物にならなくなっていた。

 

 御来が眼を覚ますまでに

 神楽の取り計らいで新たな部屋を用意したのだ。

 

 (私も気配りができれば思いついたのかな……。)


 そう思いながら寝ぼけ眼を擦る。

 眼に映るのは、白い天井。


 (……え、天井?)


 急いで身体を起こす。

 眠ってしまっていたこと自体はともかく、


 ベッドに入った記憶はない。

 周りを見渡すと、少しだけ記憶が戻ってくる。


「ここ、御来さんのベッドだ……。」


 そう呟いて左右を見るが御来の姿はない。


「寝ぼすけさんね。」


 そんな声と共にベッドを仕切るカーテンが開く。


「全く、

わざわざ手を握ったまま寝落ちる事もないでしょうに。」


 そう言いながら片手に持ったマグカップを口に運ぶ。

 ほのかに香るコーヒーの匂い。


「でも、本当に寝ぼすけだったのは私ね。」


 御来は笑みを零す。


「雫、ありがとね。

 1週間ずっと傍に居てくれたんでしょう?」


「はい……、はい……!

 御来さん眼を覚まさないから……、

 ずっとこのままなんじゃないかって……!」

 涙を流す雫。


「やっぱり、フロンテラの子は馬鹿な子ばっかりね。」


 優しく頭を撫でる御来。


「そしたらアンタは、

 ずっと私の傍に居る事になるじゃない、まったく。」


 御来はコーヒーを飲み干して、マグカップを置く。


「ほら、他の皆にも感謝を伝えないといけないんだから、

 泣いてないで付き合って。まだ歩きづらいのよ。」



「はい……、お供します御来さん!」


 

 雫は急いでベッドから降りて、御来の横に付く。

 皆が居るコントロールルームに向かって。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。