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第33話:Who is.

 


 空原操(くばらみさお)は、洞窟の中に居た。

 


 さっきまでいた場所とはうってかわって、

 まるでそこは異世界のような場所だった。


 眼が開けてシヤバ・ジエンと名乗る男を見ると、

 何処か見覚えがあるような姿をしていた。


 一番印象的なのは……刀だった。


「会った事……ありましたっけ……?」


 そう操が呟くと、

 ジエンは複雑そうな顔を此方へと向ける。


「もう……、覚えていないか。仕方ない。」


 ジエンは、焚火を絶やさないように薪をくべる。


「いや、君と私とは初対面だよ。

 でも、私は君の事を知ってる。」

 

 憂いたその顔は、

 整った顔立ちでおおよそ日本人には見えない。

 瞳は橙色の、黒の長髪の男性。

 

 顔を見つめていたら、意識が少しはっきりとしてきた。

 

「……そうだ……!

 もどらないと……雫(しずく)さんが……みんなが……!」


 そういって身体を起こそうとする操をジエンは制止した。


「君が寝てからもう2日経ってる、

 その間に色々あった。雫達は無事だよ。」


「2日……!?冗談はやめてくださいよ……。」


 時間感覚は無かったが、

 2日と言われたその時から酷い空腹が全身を襲う。

 お腹から音がする。


「……一旦、ご飯にしよう。聞きたい事はそれからで。」




 ————————————————————



 静寂の中、

 手渡されたのは木の器に入ったシチューのような食べ物。

 本当にファンタジーの世界に来たような感覚だ。


「いただきます。」

 ジエンは同じものを口に運んでいる。


 つられて操も「いただきます」と手を合わせた。


「……おいしい。」


 操がそういうと、

 暗い顔をしていたジエンが少しだけ微笑んだ気がした。


「それならよかった、冷めないうちに食べるといい。」


 ジエンはそのまま静かに食べ続け、

 操も同じくらいのタイミングに食べ終えた。

 2日分は埋められていないが、今はお腹に満足感がある。


 空の器を机の上に置く。

「ごちそうさまでした、

 早速ですけどいくつか聞いてもいいですか?」


 そう操が言うとジエンは頷く。



「そもそも、ここ何処ですか?」


 問われたジエンは特に詰まることもなく返事をする。

「ここはね、世界樹のB5層、つまり地下だ。」


(地下……!?)


「世界樹は上にしか階層が無いんじゃ……!」

「うん、まだ現状で発見されてないってだけだね。」

 平然とジエンは返答する。


「なんでそんなところに僕はいるんです?

 そもそも千葉にいたのに……。」


 2日寝ていたとはいえ、千葉から世界樹のある富士。

 寝てる人間を運んだにしては遠すぎる距離だ。


「私が召喚したんだよ。」


 いたって真面目な顔で当たり前のように話すジエン。


「召喚って……。」

「君の魔力をたどって、存在ごと引っ張ってきた。

 神楽だってワープ使えるし不思議じゃないでしょ?」

 

 どちらかと言えば。


「そもそも何のために僕を召喚したんですか?」


「……。」


 スルスルとなんでも答えていた口が止まる。

 これは秘密にしたいというよりは、

 言い出しにくいようだ。

 少しだけ言葉を待ってみる。

 

 1分くらいの間の後、彼は話を切り出してくれる。

「あー……わかったよ、言うよ。

 とある人を殺すためだ。」


 ……?

 それはそれで意味が分からないのだが。


「殺すって……その為に召喚を?」


「そうだ、ただ引っ張る魔力を間違えたらしい。

 君を召喚してしまった。それがしかも怪我の真っ只中。」


「だから治療してくれたんですね。」


「まぁ……そうだね、流石に偶然だけどね。」


 どこかバツを悪そうに頬を掻くジエン

 とりあえず一番大事な事を聞かなければならない。


「さすがに、そろそろ聞こうと思うんですけど。」

 

 操は少し息を飲む。


「貴方は何者なんですか?」

「だから、シヤバ……。」


「そうじゃないですよ。」

 茶化して逃げようとするジエンを逃がさない。


「助けて頂いたのは確かに感謝してるんです、

 ただその上で聞きたいんです。」



「貴方は、何者なんですか?」



 その質問の答えがシヤバ・ジエンの口から語られる。

 そして、操は目を丸くした。


 

「異世界転生者、

 この世界に来た魔法使いの一人……。

 これが一番分かりやすいんじゃないかな。」



 

 運命の交差は、強く絡まり合う。

 

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