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第32話:Wing of Phoenix




 我妻陽(あがつまひろ)はマネーティアと戦っていた。




「鳥風情が人間様を舐めてんじゃねぇよ!ハッ!」


「ホーミング・ボルト!」

 

 マネーティアが叫ぶと、

 黄色い雷の球体が肩の周りに浮遊し始める。


「残念っすけど、アンタは俺には勝てないス。」


 我妻の容姿は今までの服装とは大きく変わっていた。


 体中に炎を纏い、背中には炎の翼が宿っている。

 【羽搏け(ウィング・オ)る不死鳥(ブ・フェニックス)】の能力を常に発動し続けているのだ。



「我妻君、そのままだと時間切れが来るんじゃ!?」

 


 雫は焦る。

 病み上がりで出てきた我妻に、

 御来とクルミを守りながら戦う余裕があるとは思えない。


(私も急いで参戦を……。)


「大丈夫っすよ。」


 我妻の声は落ち着いていた。


「御来さんとお母さん、そして娘さんは任せたっス。

 そっちには飛び火させないっスから。」


「てめぇ……獲物の分際でよくいけしゃあしゃあと、

 目の前で食っちゃべってくれるな?ハッ?」


 マネーティアがそう言うと、

 ホーミングボルトの1つを御来へと飛ばす。


「おら!やってみろよ!

 被害を出さないってやつをさ!ハハハ!」


「だから、勝てないって言ってるじゃないっすか。」


 御来とマネーティアの間に一瞬で割って入り、

 雷の弾を消した。


「……チッ。」

 マネーティアはつまらなそうに舌打ちする。



「そういえば、炎の起源知ってるっすか?もとは雷っス。

 雷を見て人類は炎の付け方を会得したんスよ。」

 我妻は上を向きながら呟く。 


「……はぁ?何が言いたい。」

 要領を得ない問答に苛立ちを見せる。


「雷も所詮、ただの熱って事ッスよ。」


 我妻がフッとその場から消える。


「なっ!?」

 それに動揺して周りを見渡すマネーティア。


 ホーミング・ボルトのある後ろ側から拳を叩きこむ。

 雷の球体は我妻を捕えて自動的に射出されていたが、

 微塵も効いた様子はない。


「ガハッ……!」


 熱で強化された拳を受けたマネーティアは、

 そのまま吹き飛ばされる。

 背中の服は燃え尽き、皮膚は焼け爛れていた。


「終わりっすね、お疲れさ……。」


「今、この場に成せ!水の奇跡を!フォーリングリバー!」


 マネーティアの悪あがきの大量の水魔力の噴出。

 ただ、これは我妻を攻撃するものでは無かった。


「ワリィが此処らでお暇させてもらうぜ、

 燃えてんのが仇になったな!」


 大量の水は一瞬で蒸発したが、

 水は水蒸気となって辺り一帯を包み込んでしまった。


「ぐ、しまったッ……!」


「今回はしてやられたが、お前は俺が必ず殺す。

 次は万全な時にやろうぜ、兄弟。ハハハ!」


 水蒸気の先から聞こえる声は遠く、

 闇雲に追いかけても事態悪化の可能性がある。


 御来や雫もいる事を加味して、

 一度我妻は引くことにした。


「雫さん、怪我は……?」

 我妻が固有を解くといつも通りの姿に戻っていた。


 雫は首を横に振る。


「アイツの雷で妨害電波が出されてたみたいで、

 無線はお互いに通ってないッス。

 とりあえず無事でよかったっス。」


「これを……無事と呼んでいいのかな……。」


 町は滅茶苦茶、死者や重傷者多数。

 こんなことは当然前代未聞だ。


「一旦、R(リターン)t(・トゥ・)B(ベース)の命令が出てるっす。

 女の子とお母さんも連れて行くッス。」




「空原君は……?」




 我妻は少し気まずい顔をしていたが、口を開く。


「操さんの生死も、消息も、全て不明……っす。」

 

 雫は膝から崩れ落ちる。

 

 全てを手のひらから、

 零れ落としてしまった罪悪感に苛まれながら。

 

 

 我妻は声を掛けず、負傷者を連れて飛び去った。

 

 今の彼女に声を掛ける言葉を、

 我妻は持ち合わせていないから。

 


 ——————————————————————————


 

 ……ぴちゃん。


 水滴が地底湖に波紋を作る。


 そんな中、彼は眼を覚ました。


「……うっ、ぐ……。」

 起き上がろうとするが胸の傷が深くて立ち上がれない。


「目覚めたか。」


 男の声が聞こえる。

 急いで身体を身構えたかったが、

 眼を開ける事すらできない。


「寝ていたほうがいい、空原操。」


 男はそう言うと、

 傷の手当てをされていることが伝わってくる。

 

「なぜ……僕の名前を……?」


 操がそう言うと、彼は質問に答えてくれる。


「それは……、君と同じ所属だからだよ。」


「同じ所属……フロンテラってことですか……。」


 どこかで聞いた声なのに、なぜか思い出せない。

 まるで記憶に靄が掛かっているような。


「そう、私は……。」



 彼は一呼吸を置く。



「シヤバ・ジエン、フロンテラ副所長。」



 茜の言葉を思い出す。


 (副所長は諸事情により空席です!)





「フロンテラの創立者であり、最後のメンバーでもある。」




 

 シヤバ・ジエンは焚火に薪をくべる。

 


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