↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/54

第31話:Promise



 冷泉雫(れいせんしずく)は子供を抱えたまま走り抜ける。


 倒れたという天国御来(あまくにみらい)の元へ。


「御来さん!」


 横になっていた人影に近づくと、

 腹部に大きな穴が開いており、金色の粒子が散っている。


 残念ながら間違いなく天国御来だった。

 隣には手当された女の子の母親が気を失っている。


「なに……これ……。」


 雫には何の判別も付かなかった。

 黒鉄(くろがね)たちからの連絡もない。

 

 (どうすれば……。)

 戸惑う雫。


「お姉ちゃん……?」

 服の袖を強く握る女の子。


「大丈夫、二人ともきっと助かるから安心して。」


 何の根拠もない言葉。


 それは女の子に言い聞かせたのか、

 それとも……自分か。

 

 残念ながら治癒魔法という魔法ジャンルは存在しない。

 と、なれば今の自分に出来る事と言えば、

 【時迷い(ストレイ)】で時を止めて、進行を遅らせるくらいだ。

 

 「時迷(ストレ)……。」

 

 『固有魔法(ユニークマジック)』発動に気を取られてしまった。

 その一瞬、虚を突くように雷が飛来していた。

 そして、その飛来した雷は雫を貫く……、はずだった。


 「おがあざん!」


 突如大声を上げ、大泣きする女の子の視線の先。

 先ほどまで気を失っていたはずの母親が、

 雫の壁となって立っていた。


 先ほどの外傷もある上、雷は胸を貫通していた。


「だいじょうぶ……ですか……。」


「何をしてるんですか!?」


「たすけられた……、

 いのちを……、たすけるためにつかっただけです……。」


「やだよ!おかあさん!しんじゃやだ!」


「ききなさい……くるみ……、

 このおねえちゃんに……たすけてもらい……なさい……。」


 母親の身体が青く発光し始める。


「おかあさんはすこし……ねむる……から。

 これをくるみにあげる……、だからおぼえていて。

 おかあさんは、いつも……そば……に……い……。」

 青い光がくるみと呼ばれた女の子の胸に吸い込まれた時。

 母親の眼から光が消えた。


「こんなの要らない!

 おかあさんにいきててほしい!ねぇ!」


 雫は、何も出来なかった。

 ただ無力を苛むことしか。

 嘆く女の子をみることしか。


「おかあああさああああああん!」


 彼女にとって、大切なモノとは。

 彼女が考えた理想とは。

 こんな力で、何を守るのか。

 せめて、せめて、この子だけでも。

 

「ああああああアアアッ!」


 クルミは声にならない悲鳴を上げた。


 その悲鳴に呼応するかのように電磁の嵐が発生する。

 雫もクルミと共に涙を流していた。


 

 飛翔物が飛んできた先から、

 嵐の中をゆっくりと歩く一人の男。


「……死にかけの餓鬼を、

 狩る楽な仕事だと思ってたが……。」


 そして母親の顔を足蹴して満面の笑みを浮かべる。


「……許さない……。」

 

「なかなかどうして……旨そうな連中だぜ!ハッハ!」


「許して……なるものか!」

 

 そう言うと雫は時を止めて一気に男に近づく。


「へぇ……?」

「アクアレイピア!」

 

 頭に向かって水の細剣を刺そうとする。

 男はスラスラと最低限の動きで躱す。

 

「ま、聞いちゃいないだろうが1つ語らせてもらおうか。

 俺の名前は『マネーティア』だ。覚えて帰るといいぜ。」

 

 そんな言葉に耳も貸さず、

 雫はマネーティアの時を止めようとする。


「おい、せっかちよ……時間はいくらでもあるだろ?」

「呼吸も荒れてるな……いつもか?お前。っと危ない。」


 何故か【時迷い】の発動するタイミングで、

 射程外に逃げられてしまう。


「感情爆発の直情馬鹿か、買いかぶりすぎたな。」


 そしてマネーティアは腕を前に出しながら、

 言葉を紡ぎ始める。

 

「祖なる魔力よ、我に力を貸したまえ。」


 掌に魔力がゆっくりと溜まっていく。

 今度は固有を使わずに接近する雫。


「荒地には恵みを、豊かな土地に裁きを。

 天地開闢の時を再び。」


 掌の魔力が目視できる段階まで膨れ上がっていく。

 手を構えているだけなはずなのに、

 雫は攻撃も魔法も当てられない。


 クルミは地べたに座り、母親の事を思い泣き続ける。


「共振せよ、鳴動せよ、そして荒れ狂え。

 汝は今我の一部となりて、我が敵を撃ち滅ぼすのだ。」

 

 その魔力は雷元素を纏った直径2mの弾になっていた。


「さぁて、嬢ちゃん達。これでお別れか、じゃあな。」


 そう言うと溜めた魔力をクルミへと向ける。


 「プライモーディアル・エレクト!」


 球体の黄色の雷がクルミへ襲い掛かる。

 

(このおねえちゃんに……たすけてもらいなさい……。)


 雫はクルミの母親の言葉が頭の中で反芻(はんすう)していた。

 そして時を止め、クルミを抱きかかえて背を向けて屈む。

 弾を止める余裕は無かった。 



(せめて……この子だけでも!)


 

 しかし、いつまで経っても雷は来ない。

 後ろを振り返ると炎を纏った男が間に割って入っていた。


 そしてその背中は、見た事のある背中だった。




 

 「雫さん、待たせたッス。」


 



「……!我妻(あがつま)君!」


「起き抜け一発目っすけど、任せるッス!」


 そう言うと彼は両手から炎の弾を2つ構える。


 そしてその弾をマネーティアへ……ではなく、

 御来と母親へ向けて撃ち込んだ。


 「おにーさんの火、あったかいね。」


 不思議な事を言うクルミに我妻がニッと笑う。


「この温かみで出来る限りの事はするッス、

 だから安心して欲しいッス。」


「おうおうおう、また面白い奴が増えたな!

 まるで動物園だなぁ!ハッハ!」

 マネーティアは手を叩きながら笑う。

 

 

「御来さんと雫さんの生体反応ロストした位置が、

 同じだったんで飛んできたんすけど……。

 ロストの原因はあの女の子の電磁嵐っすね。」


「で、あれば御来さんはまだ助かるかもしんないっす。

 お母さんの方は、魂の火をくべ直してるんすけど……。」


 そう言うと悔しそうな顔をする我妻。


 「おい!おいおいおいおい!

 いつまで俺を無視してんだ?ハッ!」


 そう言うとマネーティアは水元素を操り、

 超大玉の水球を作っていた。


 「アクア・スフィア、喰らいなファイアボーイ!」


 「あ、居たんすか?」


 放たれたアクア・スフィアは一瞬で蒸発した。

 我(・)妻(・)は(・)何(・)も(・)し(・)て(・)い(・)な(・)い(・)。


 「悪いんすけど、

 取り込み中なんで1分でカタ付けるっす。」

 

 「は?……ハハッ!吐(ぬ)かせ、鳥人間!」

 


 

 我妻陽(あがつまひろ)はマネーティアとの戦闘となった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。