七十八話 クーピーズ、休暇する
ロンド隊長から新人五人に一週間の休暇を告げられた。
名目上は休暇だが、本来の目的は違うだろう。
五人の中に裏切り者がいないか、クレアさんにプライベートを監視させるつもりだ。
普段よりも気を引き締めないといけない。
「どうするリーダー。給料も入ったことだし、みんなで飲みにでも行くか?」
ゴブリン事件が終わった後も、ポールは僕のことをリーダーと呼ぶのをやめなかった。
「いや、積んでいる本が大量にあるんだ。休暇はそれを読んで過ごすことにするよ」
「そうか、残念だな。ほかの三人はどうだ?」
「オイラも妹に仕送りしなくちゃなんねえから、無駄遣いはできねえだ。ゆるしてくんろ」
ベンは申し訳なさそうに断る。
病気の妹が早く治るといいな、と心の中で祈っておく。
「ワタシもレッドに本を借りて一緒に読むつもり。ごめんね」
そう、ハクには最初から話を通している。
部屋でハクと二人、本を読むふりをしながら、地下でドルタのゴーレムを製作するためだ。
「そっか、シャラと二人で飲みに行っても仕方ないしな。オレもリーダーの部屋で一緒に本を読もうかな」
「「えっ?」」
僕とハクの驚きの声がかぶる。
まずい、ポールが来たらゴーレム製作計画が台無しになってしまう。
「バカ、やめなさいよ。あんた、空気読めないわね」
「え? 何がだ、シャラ?」
「鈍いってことよ。仕方ないから私が飲みに付き合ったげるわ。感謝しなさい」
シャラが僕に軽くウインクしてくる。
何か勘違いされているようだが、よしとしよう。
これで、ゴーレム製作に没頭できる。
「それじゃあ、みんな。また、一週間後に」
こうして、クーピーズに入って初めての休暇が始まった。
入隊した時に与えられた部屋は、2LDKのかなり広めの部屋だった。
他の四人は1Kしかなかったらしく、どうやら副隊長ということで優遇されたらしい。
一階の端にあるその部屋には、最初から簡易ベッドや机と椅子、タンスなども用意してくれていた。
ハクは椅子に座りながら、僕はベッドに座りながら、二人で本を読む。
もっとも、『ウィッキーペディア』のスキルがある僕には、本を読む必要が全くない。
ベッドに座るゴーレムに本を持たせたまま、こっそりと背中から抜け出し、ベッドの下に潜る。
そこには、地魔法により作った地下室への入り口を設置していた。
「後は頼んだよ、ハク。クレアさんの気配を感じたら、適当な会話をしていてね」
「うん、わかった。まかせといて」
ゴーレムには僕の声を録音したボイスレコーダーを搭載している。
ハクがタイミングよくボタンを押せば、簡単な言葉を喋る仕組みだ。
本を読みながらたまに会話を挟めば、まさか、中身が入ってないとは、誰も思わないだろう。
これまでは皆が寝静まった時間にやっていた新しいゴーレムを休暇中に一気に完成させるつもりだった。
だが、まさか、ハクがこの後、大失敗をやらかしてしまうなど、夢にも思っていなかった。




