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第4話 提案



「アイリス様じゃないですよね」


その声が私には断罪の声に聞こえた。

心臓の鼓動は速くなり、指先は氷のように冷たい。


「ずっと一緒に育ってきたようなものだから分かります。今のアイリス様が偽物ってことぐらい」


その目は初めのリリスとは違っていて冷たく私を非難するような目だった。


昔のことを思い出し、息が詰まる。

全身から冷や汗が出てきて体全身が冷えていく。


顔は強張っているが何とかポーカーフェイスを保とうと表情筋を動かす。


だがその反応で悟られてしまった。


「……やっぱり…偽物、なんですね」


縋っていた一縷の希望を壊されたようなそんな表情だった。


私が何か言おうと口を開くも口から音が発せられることはない。


ただ黙ってリリスの話を聞く。


「司祭様が当主様と秘密裏に話しているのを聞いたんです……アイリス様に異世界人の魂を入れると」


誰に話しているのかわからないような弱々しい声が投げかけられる。


アイリスとは相当仲が良かったのだろう。


悪役令嬢であったアイリスの振る舞いを知っていてここまで落ち込んでいるのだから。


「まさか、本当に実行に移すなんて……」


もし、この話が本当だとしたら司祭様と当主様がしたことは殺人と言っても過言ではない。


非人道的だし、何より実験に失敗した時人が生きているという保証は……無い。


事前に何人か誘拐して実験して成功していたのかもしれないけど……。


もしそうだったとしたら……この家の人間は間違いなく連座で処刑されるだろう。


このゲームの時代設定は中世のヨーロッパと公式が発表していた。

当然、国を治める王様がいて当然、犯罪を犯した人とその家族は裁判によって裁かれ、罪が決まる。


__私、この世界に来たばっかなのに殺される……?いやいやいや、いくらなんでも酷すぎるでしょ!


こうなったらリリスを味方に付けるしかない。

私は腹をくくってしっかりとリリスの目を見た。


「……あなたからしたら確かに私は異世界人だけど…」


リリスは私が言うことに興味を持ってくれたのかこちらを警戒しながらもそのまま黙って聞いてくれた。


「私は、この世界のことを知っている。もちろん信じてもらわなくてもいいわ。でも、話だけでも聞いて欲しい」


私は、この世界がゲームであること、私がそのゲームを遊んでいたことを話した。


リリスはまるでありえない白昼夢のような話を聞いているからか怪訝そうな顔をしている。


「この世界がゲームの世界ですか……にわかには信じがたいですね」


少し間を開けてリリスはですが、と続ける。


「もし、その話が本当だとしても私が貴方に協力するメリットがありません」


ここまで話をしたのなら何かまだありますよねとリリスの目が問いかけていた。


「えぇ、ここまでだと貴方が私に協力する理由は無いわ」


リリスはずっとアイリスの父であるヴォルテール公爵と教会との繋がりを探っていたはずだ。


ゲームをしていた時はどうしてそんな事をする必要があったのかが分からなかった。


だが、アイリスの過去を見た今なら分かる。


あれは主であるアイリスを救うためだったのだと。


教会に操られた父であるヴォルテール公爵のから逃れるアイリスを救うためだったのだ。


「だから、貴方が私を信じるならこの先に起こる事を教えるわ。例えば…ヴォルテール公爵と繋がっている教会の人間のことやアイリスを戻す方法を、ね」


リリスが目を見開く


「……ですが、貴方がアイリス様を助ける理由はないのではないですか」


「えぇ、でも貴方が居なかったら私、この世界で生きていけないわ。それに、アイリスの見た目をしている私を放置することなんてできないでしょう?」


ゲームの中で貴方はアイリスが傷つけばすぐ駆け寄ってきていた。


傷ついているアイリスの見た目の私を放置することなんてできないはずだ。


という確信を抱きながら私はリリスの反応を待つ。


暫く顎を手にあてて考えこんでいたリリスは何かを思い出したのかふっと優しく笑う。


「…分かりました。貴方に協力しましょう。」


すっと手を差し出すと、リリスはしっかりと手を握り返してくれた。


私はこれからの未来を想像しながらリリスの目を見る。


「私は、橘《たちばな》 夏夜《かや》これからよろしくね!」



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