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第8話:神々の不在と血のオアシス

ドロマのいない「永遠の領域」の空間は、妙に広く感じられた。

普段の彼女は、その存在感(と出涸らしのコーヒーの匂い)によって、他者をつなぎ止め、目に見えぬ大地に足をつけさせていた。だが今や、宙にはピンクの灰の残り香と、神聖な朱肉の印鑑が羊皮紙を叩く余韻、そして神々の嵐が去った後の死のような静寂だけが漂っている。


アエディは宙で足を組み、隕石の破片で優雅に爪を研いでいた。

一方、ゼネクスは激しく振動している。幾何学構造が急激なペースで伸縮を繰り返し、直角が次第に鋭利で危険な角度に変化していった。まるで純粋な憤怒の地震によって崩壊寸前の五十階建てビルのようだ。


『三百年だ! 貴様が一つの火曜日に退屈したせいで、三百年の人口統計計算が台無しになったのだぞ!!』


「正確には四十年前の火曜日よ、ゼネクス。時間は相対的なものなの。それに認めてよ、あの雷のオチはちょっとやりすぎだったわ。染料を変えさせるだけで十分だったじゃない」

アエディは隕石から目を離さずに言った。


『染料の問題ではない! 顛覆的な意図が問題なのだ! 貴様は「夢境誘導プロトコル」に違反した! 今すぐ管理室へ行き、ヴォルスラムの修正書類すべてに署名してもらう!!』


ゼネクスはアエディのアストラル衣の首根っこを掴んだ。

知恵の女神は文句ひとつ言わず、学校の職員室へ連行される退屈した青少年のように、虚空を引きずられていく。


「欲望の神には気をつけなさいよ、漁師さん。『ただの実験だから』で始まる提案をされたら……逃げることね」

遠ざかりながら、アエディがタルゴムにチラリと視線を送った。


次元の扉がバタンと音を立てて閉まり、部屋には完全な静寂が訪れた。……まあ、ほぼ完全な、だが。


銀の刺繍が施された服を着たままのタルゴムは、煤で汚れ、仄かに焦げた国王の匂いを漂わせながら硬直していた。

その隣では、キキが逆さまに浮かび、足をバタつかせながら、神聖な幼さの欠如を感じさせる笑みを浮かべて虚空を眺めている。


「やあ……激しい展開だったね? ゼネクスは直線的なものに対して神経質すぎるんだ。カモノハシを作ったときの僕の初期デッサンを見たら、あいつは幾何学的な発作を起こすだろうね」

キキが宙でクルリと回転し、タルゴムと向き合った。


「国王を殺した……仕立て屋たちも殺した……ピンク色を地図から消し去ったんだぞ……」

タルゴムは命綱のように雲にしがみつき、全身を震わせた。


「おいおい、大袈裟だな。ボルヴィル三世はもう高齢だったよ。それに正直なところ、ヴォルスラムの兵士たちにフューシャピンクは似合っていなかった。威厳が損なわれていたしね。根底では、ゼネクスは彼らに美的な情けをかけたのさ」

キキは手を振って一蹴した。


「生きている人間だったんだぞ! あんたらは俺たちを守る存在なんじゃないのか!?」

タルゴムは生ける神を信じられない目で見つめた。


「守っているさ。見なよ、この豊かな生物多様性を。もし守っていなかったら、ゼネクスのマス目みたいに全員を同じ姿にしていただろ。全漁師が君と同じ絶望した顔をしている世界を想像してごらんよ。つまらないだろ?」


キキは宇宙の猫のように身体を伸ばし、頭の後ろで腕を組んで仰向けに浮かんだ。その笑みは相変わらず穏やかで、嘲笑的で、タルゴムに与えたばかりの精神的トラウマなど露ほども気にしていない様子だった。


再び静寂が訪れる。

次元の織り成すかすかな囁きだけが、彼らがはるかに巨大なもの——神聖さと俗世の狭間にいることを思い出させていた。空気には静電気と焦げた綿菓子の匂いが漂っている。


「これでヴォルスラムは『ポスト・帽子時代』に突入するわけだ……どういう意味か分かるかい?」

キキが目を閉じたまま尋ねた。


「……混沌カオスか?」

タルゴムは感情の失われた声で答えた。


「ちがうよ! 創造的自由さ!」

キキが片目を開けた。

「これからは誰もが自分の帽子を自由に選べる。王のルールなしでね。……まあ、どうせつまらない色だからって、黒か暗い茶色に戻るんだろうけどさ」


タルゴムは何も言わず、ただ下を見つめた。

透明な床を通して、永遠の上空からタハマラが見える。ボルヴィル三世が生きていた、あの小さな灰緑色の斑点だ。


タルゴムは雲にしがみついたまま、組み合わせの悪い縁取りのせいで君主を失ったばかりの民衆の「創造的自由」について、キキの言葉を噛み締めていた。

胸元のメダルが最後に小さく明滅し、ヴォルスラムの生存者による精神的な愚痴を吐き出した。


(……けっ、天の邪鬼だから俺はこれからもピンクの帽子を被り続けてやる……)


それを最後に、メダルは静まり返った。


キキが宙で跳ね起きるように体勢を正した。その瞳には、常に最悪のアイデアの前触れとなるハイパーアクティブな輝きが宿っている。


「さあ! 今日の官僚仕事はこれでおしまい! ドロマは魂に印鑑を押しているし、ゼネクスは繊維関連死の申請書4ーBを記入中、アエディは行政拘留中だ。これが何を意味するか分かるかい、僕の愛しい清潔な中間管理職くん?」


「……俺が自分の船に戻れるってことか?」

タルゴムはかすかな声で尋ねた。


「まさか!」

星座を振動させるほどの爆笑をキキが上げた。

「僕たち二人きりってことさ! 監督者なし! 『品質管理』の現地視察に行くには絶好のタイミングだよ。タハマラで最も平和で、洗練されていて、文化的に誤解されている場所へフィールドワークに行こう!」


「ゼネクスは混沌が嫌いだからヴォルスラムを破壊したと言ったな。もし平和な場所に行くなら……なんで俺はまた頭から真っ逆さまに落ちる予感がしているんだ?」

タルゴムは極度の疑心暗鬼で目を細めた。


「君が悲観主義者だからさ、タルゴム。それに今回は『静寂』の任務だよ。福祉の監査さ。『血のオアシス』へ行くんだ」


——血のオアシス。

その名を口に出すだけで、まるで現実そのものが存在をためらうかのように、空気の重みが増した。タルゴムは聞き間違いであってくれと祈りながら二度まばたきをした。


「……なんだって?」

純粋な懐疑心を露わにして尋ねる。


「だから! オークたちの故郷、『血のオアシス』だよ! 素晴らしい場所さ。清らかな水、巨大なヤシの木……そしてピンクの帽子はゼロだ!」

キキは輝く石のコレクションを見せる子供のように興奮して宙で回転した。神聖な指先でラインを描くと、虚空に黄金の線が浮かび上がる。タハマラへと続くルートだ。


「オークって……角が生えた緑色の巨大な奴らで……生の肉を食う奴らじゃないのか?」


「それは人間のプロパガンダさ!」

キキは不満そうに口を尖らせた。

「彼らはとても繊細な生き物だよ。デーツの農園を持ち、薬膳スープを煮込み……カメが書いた詩で満たされた図書館だってあるんだから!」


タルゴムが再び抗議しようと口を開けた瞬間、キキが手を差し伸ばした。


「さあ行こう! オークの情緒的福祉に関する、僕たちの最初の公式監査の始まりだ!」


タルゴムが「一体全体それがどういう意味だ」と尋ねる暇もなく、神聖な疾風が二人を包み込んだ。

お読みいただきありがとうございます!


ゼネクスの雷によって壊滅(?)したヴォルスラムを後にし、監督者不在となった神々の世界。

キキに連れ去られたタルゴムの次なる目的地は……なんとオークたちの棲む「血のオアシス」!?


【更新情報】

スタートダッシュとして【1日4〜5話ペースで爆速更新中】です!


「カモノハシの初期デッサンで草」「カメの書いた詩がある図書館って何!?」「タルゴムの受難が止まらなくて最高」と思ってくださった方は、ぜひ作品ページ下の【ブックマーク登録】や【ポイント評価(★★★★★)】で作品を応援していただけると嬉しいです!


第9話もすぐに更新されますので、どうぞお楽しみに!

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