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第6話:ピンクの夢と神々の過失

タルゴムはゴクリと生唾を飲み込んだ。彼が答えようとしたその時、胸元のメダルが小さく重なり合う声とともに脈動し始めた。


(……ろくな給料も出やしない)

(……娘のためにピンクの帽子が必要なんだ)

(……頼むから誰かこのファッション独裁政治から救ってくれ)


脳内に直接響く雑音を無視し、タルゴムはどうにか立ち上がった。

疲弊しきった目で国王をまっすぐ見つめる。だがその瞳には、空から落ちてきて以来、初めて「決意」のようなものが宿っていた。


「俺は神々に遣わされて来た。書籍の神々は……ここで一体何が起きているのか知りたがっている」


ボルヴィル三世は長きにわたり彼を見つめ返した。

そして、宇宙の真理を明かすかのような重々しさで、城の奥を指差した。


「ならば……設計図を見せる必要がありそうだな」


城内へ移動したボルヴィル三世は、巨大な机の上に「狂気の決断を下した至極正気な男」の作戦計画書としか言いようのないものを広げた。

そこには数々の図面、カラーコード、ピンクの点で埋め尽くされたタハマラの地図、アンド今後四十年にわたる「地域別色彩拡大予測」が記されていた。


「……これは、なんというか……ずいぶん綿密ですね」

タルゴムは目を丸くしてそれらを見つめた。


「三ヶ月の集大成だ。あの『夢』を見て以来のな」

国王は我が子を誇る父親のような顔で言った。


「その『夢』というのは……かなり具体的なものでしたか?」

タルゴムはできる限り波風を立てないよう探りを入れる。


「尋常ではないほどにな。私は色を見た。平和を見た。すべての凡夫が同じ色のもとに団結する姿を見たのだ」

国王は荘厳な間を置いた。

中間管理職インターミディエイターよ、ピンクは単なる色ではない。思想なのだ」


タルゴムは国王を見た。図面を見た。地図を見た。そして再び国王へ視線を戻した。

……そして予期せぬことに、彼はこの男のロジックを理解し始めてしまっていた。


「なるほど……構想は理解しました。ですが問題は『ピンク』そのものではなく……それを強制している点にあるのでは?」


ボルヴィル三世は、まるで見たこともない言語を聞いたかのように眉をひそめた。


「任意……? 平和が……任意だと……?」


「人は強制によって団結するんじゃない。……えーっと、信念によって集まるんです!」


「むむむ……」

ボルヴィル三世が思案し始めた。


タルゴムは奇妙な感覚を覚えた。手応えがある。国王が耳を傾けている。もしかしたら、誰も死なずにこの件を解決できるかもしれない。


「もし帽子が自由着用になれば、被っている者たちは誇りを持ってそれを身につけるでしょう。それは押しつけではなく、真の象徴になるはずです」


ボルヴィル三世は沈黙した。色彩拡大地図の上で指をトントンと叩き、帽子の羽飾りを整える。


「……では、こうしてはどうか? 強制にはするが……トーンの選択肢を与えるのだ!」


「いや、それは微妙に話が——」

タルゴムは思わず目を閉じた。


「フューシャピンク、ラズベリー、ペールピンク、ベビーピンク、ショッキングピンク!」

国王は歓喜に満ちて立ち上がった。

「完璧なバリエーションだ! 秩序の中の自由! ピンクの中の秩序!」


「それ、結局強制ですよね?」


「素晴らしい! 名付けて『ピンク多様性令』だ!」

国王はタルゴムのツッコミなど耳に入っていなかった。


——そしてまさにその瞬間、ヴォルスラムの上空が暗転した。


変化は劇的だった。城内の会話がピタリと止まる。広場の民衆が空を見上げ、兵士たちは何に対してかも分からぬまま本能的に直立不動の姿勢をとった。


自ら招集した会議に遅刻してきた者のような悠々しさで、四つの巨大な影が王国の上空に漂っていた。


風の許可を得て髪をなびかせているかのようなアエディ。

直視するのが建築学的に苦痛なほど幾何学的な光を放つゼネクス。

結末をすでに知っている者の表情で目を閉じているドロマ。

そして、どこからか実体化させたピンクの綿菓子をむしゃむしゃと頬張るキキ。色の皮肉さに本人は気づいていないようだ。


広場全体の民衆が膝をついた。


「神々よ……」

ボルヴィル三世が掠れた声で窓の外を覗き込む。


「へえ、あのピンク悪くないじゃん。フューシャ? それともラズベリー?」

上空でキキが綿菓子で国王の帽子を指差した。


ゼネクスは宇宙の裁判所が判決を下すかのごとき威圧感で、すでにアエディへ視線を定めていた。


『夢で見たとな!? 神の啓示だと!?』


「ちょっと、どういうことよ?」

アエディが腕を組む。


「知性的種族が神の啓示を受けたと主張し、我らに無断で行動を起こした場合、それは異端行為……あるいは宇宙的権威の簒奪にあたるわ」

ドロマが静かに告げる。


『誰かが「啓示誘導申請書」を出さずに勝手に行動したのではないだろうな!?』

ゼネクスがアエディを睨みつける。


「……あー」

アエディが呑気な声を漏らした。


「あー? 『あー』だけかよ!?」

キキが意地悪な笑みを浮かべて彼女を振り向く。


「何十年か前にさ……退屈だったから『誰かがピンク色の啓示を受けたらどうなるかしら』って考えたのよ。真に受けた奴がどうなるか見たら面白いかなって」


絶対的な沈黙が流れた。


「……わざと夢を見せたのか?」

キキが目をパチクリさせる。


「それが何か!? 永遠なんて退屈なのよ! 凡夫のくだらない日常に付き合う身にもなりなさい! あいつら、困り果てている時しか面白いアイデアを出さないんだから!」


『神聖なる権威に対するサボタージュだ! 許されざる感情的侵入行為である!』

ゼネクスが宇宙的憤怒で身を震わせる。


その頃、下界ではタルゴムが城を飛び出し、広場の中心へと駆け出していた。


「待ってくれ! うまくいきかけてたんだ! 俺はあの王様を説得しかけてたんだぞー!!」

お読みいただきありがとうございます!


暴動の元凶はまさかのアエディの「退屈しのぎ」!?

せっかく説得しかけていたタルゴムの努力を余所に、上空では神々の不毛な責任転嫁バトルが始まってしまい……!?


【更新情報】

スタートダッシュとして【1日4〜5話ペースで爆速更新中】です!


「神様が元凶なのひどすぎて笑う」「タルゴムの胃孔が心配」「続きが気になる!」と思ってくださった方は、ぜひ作品ページ下の【ブックマーク登録】や【ポイント評価(★★★★★)】で作品を応援していただけると嬉しいです!


第7話もすぐに更新されますので、どうぞお楽しみに!

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