第21話:森林退去勧告とドラゴンの投資銀行
ナエル-7は光学メガネのフレームを直し、小さな金属製のドラゴンを胸に抱きしめて一歩後退した。彼の回路に悪意などなかった。そこにあったのはそれ以上にタチの悪いもの——コレクターとしての執着だった。
バルリンは像を奪い返そうとはしなかった。ただ一歩半だけ後退し、ナエルの手を見つめ、それから自動機械が銀のトレイに乗せて差し出し続けているサテン紙の再配置小切手に目を落とした。何らの劇的なドラマも伴わない無機質な動作で、老ドワーフは小切手を受け取ると四つ折りにし、孫たちの待つ車力へと乗り込んだ。二度と振り返ることはなかった。
スイートルームの偏光ガラスの向こう側で、タルゴムは彫刻された骨の万年筆が自分の半透明な指の間で耐えがたいほど重くなるのを感じていた。報告書Aタイプを見つめた。報告書Bタイプを見つめた。そして、冥界で見た鎖に繋がれたボールペンを思い出した。
「仲介者タルゴム。首都行きの陸上輸送車が三分後に出発いたします。ファイル処理の完了手続きのため、レジストリにてご自身の存在を認証してください」
インターホンを通じて、ヴァエル-9の完璧に澄み切った声が室内に届いた。
タルゴムは答えなかった。×印もつけなかった。テーブルの上にペンを落とすことすらしなかった。ただスイートルームの裏扉——凝縮水パイプの点検路に通じる扉——を開け、歩き出した。
誰も彼を追ってこなかった。誰も叫び声を上げなかった。ジェナシの論理においては、事前通知なしに職務を離脱した官僚は、次の課税サイクルで処理される軽微な行政過失を犯しているに過ぎないのだ。タルゴムは何時間も歩き続けた。新しい緑のツタ編みブーツが、砂利の上で一切の音を立てないのを感じながら。紫色の蒸気を吐く煙突も、キャタピラ機械が鉱石を運ぶレールも、エンジンの絶え間ない重低音も、すべて後ろへと過ぎ去っていった。風景は磨かれた灰色の岩から地衣類へ、地衣類から湿った苔へと変わり、北方の冷たい微風は、濡れた樹皮と夏の雨、そして甘い樹脂の匂いが漂う濃密で暖かく柔らかい空気へと移り変わっていった。
森は突然現れたわけではなかった。まるで大地が去っていった金属の存在を少しずつ謝罪するかのように、徐々にその姿を現したのだ。まずは巨大で、決して落ちることのない朝露の滴を蓄えた手のひらのように曲がったシダ植物。次いで樹木——バルリンが三人掛かりでも抱えきれないほど太く、内側から照らされているかのように青々とした苔に覆われた幹。枝の間からは光の糸がほぼ固形の柱となって降り注ぎ、空気そのものが怠惰に息を吐いているかのように、黄金色の花粉がゆっくりと漂っていた。
タルゴムはショーウィンドウのエルフのような新しい脚で、静かに歩を進めた——彼が気をつけていたからではなく、何百年もの松葉の絨毯に覆われた地面が、彼の歩調からあらゆる暴力の意図を吸収してしまうかのようだったからだ。根の間に絡みつく低い霧の向こうに、彼は最初の屋根を目にした。折られた翼のように角が上へと曲がった暗い色の木材。家ではなく、寺院だ。あるいは、この場所では両者に区別がないのかもしれない。
六本の角を持つ鹿が、藪の中から恐れ気もなく彼を観察し、静かに咀嚼を続けていた。どこかで竹の風鈴が小川の水に当たって鳴り、ゼネクスや彼の申請書とは無縁の時間を刻んでいた。
船から落ちて以来初めて、タルゴムは空気が自分に何も求めてこないと感じた。
それも束の間、ぴったり八秒しか持たなかった。
矢が一本、彼の尖った耳のわずか十センチ横の幹に深々と突き刺さり、今なお振動していた。
「あと二歩進んでみなさい。次は外さないわ」
シダの群生の中から、掠めたばかりの矢のように鋭い声が響いた。
タルゴムは両手を挙げて凍りついた——神々や王たち、武装したオルクたちと渡り合ってきた末に、今や自然と出てしまう仕草だった。
「待て! 俺はジェナシじゃない! 本物のエルフですらないんだ、これは変装で……いや変装じゃなくて、もっと話せば長くなるんだが——!」
彼自身の透明な声で叫ぶ。今の彼にとって、その声はかつてないほど間抜けに思えた。
静寂。小川と、風鈴と、何事もなかったかのように草を喰み続ける鹿の音だけが響いていた。
するとシダの間から、一人の女が現れた。小柄で、土と苔の色に染められた布を何層にも纏い、彫刻された枝で髪を束ねていた。寺院と瞑想の民に対してタルゴムが勝手に抱いていた儀式的な物怠さなど、彼女には欠片もなかった。目の下にはクマがあり、弓は引き絞られたままだ。
「進歩の輪の匂いがするわ。紫の蒸気と、ラベンダーの嘘の匂い」
地面に遠慮なく唾を吐くライラ。
「何者よ? 新しいスパイ? 絹のメジャーで私たちの幹の柔軟性を測りに来た連中の一人?」
「俺は……元は漁師だ。今は借り物の肉体を持った一種の神の使者だ。長い話だし、どこをどう聞いても信じてもらえそうにないがな」
両手をゆっくりと下ろしながら答えるタルゴム。
エルフの女は長い間彼を観察した。弓は下げなかった。
「ジェナシ評議会の嘘はどれも理にかなって聞こえる。だからこそ危険なのよ」
恐れる様子もなく一歩近づく彼女。
「私の兄は床暖房付きの賃貸住宅なんて話を信じたわ。今じゃ首都のガラスの箱の中に住んで、幸せだって手紙を寄こしてくる」
彼女の声は震えなかったが、顎のラインがわずかに硬直した。
「だから、この森があなたをカモミールティーで歓迎しなくても悪く思わないで」
曲がりくねった木造の寺院の間から、タルゴムは動きを感じ取り始めた。予想していた静けさではなく、押し殺された緊迫感だ。布に包まれた荷物を運ぶエルフたち、羊皮紙の棚を解体する者たち、根鉢ごと樹木を掘り起こして鹿の曳く車力に積み込む者たち。彼らは瞑想などしていなかった。誰かに「再配置」される前に、自分たちの故郷から避難していたのだ。
車力には鉄の車輪も金属の軸もなかった。乾燥した葉のベッドの上で地面から一握りほど浮遊し、まるで植物そのものが守護者たちの撤退のショックを和らげようと申し出ているかのように、リズム感のあるささやき音を立てていた。
セレンゾナスの森の甘い空気は、集落の中心へと進むにつれて重みを増していった。磨き抜かれた不妊のジェナシの植民地とは異なり、この場所は大地から直接芽吹いたかのようだった。透明な小川に架かる生きた竹の橋、樹齢数千年の桜の枝の間に浮かぶ和紙の提灯、一本の枝も切ることなく編み込まれた木々の家々。
しかし、景色の詩情は静かな絶望によって打ち砕かれていた。藍染めの絹のタバードを着た老エルフたちが、開花までに三世紀を要する聖なる植物「溜息の木」の芽を、麻布で繊細に包んでいた。若い彫刻家たちは、ヴァエル-9のキャタピラ機械によって「高密度原材料」に変換される前に、クランの刻まれた歴史であるファサードの木製レリーフを解体し、ジュート袋に収めていた。
誰も叫ばなかった。誰も声を上げて泣かなかった。エルフたちの痛みはドワーフのように喧噪を極めるものではなかった。それは朝霧のように濃密で、静かな追悼だった。
「みんな足取りが重いのよ。梱包できないものの重みを背負っているから」
振り返ることもなく、弓をほんのわずかだけ緩めながらライラが言った。
「ジェナシは私たちに三日間の猶予を与えたわ。『情感的所持品』を回収するための『環境的配慮期間』だって。千年の記憶が木製の車力に収まるわけがないでしょう」
「ヴァエル-9は、中央温室に植え替えると言っていた。二十二度の暖房付きでな」
樹齢数百年のオークの幹を抱きしめ、まるで祖父に別れを告げるかのように額を樹皮に押し当てているエルフの子供を見つめながらタルゴムが呟いた。
ライラが足を止めた。しなやかな動作で振り向く。純粋な疲労によって赤い筋の走った彼女の黄金色の瞳に、古の怒りが宿り、地面の葉をかすかに震わせた。
「植え替え?」
彼女の声は擦れたささやきへと落ちた。
「セレンゾナスの木は鉢植えの植物じゃないのよ、仲介者。その根は深層の源泉と、私たちの先祖の骨と、あなたの幾何学の神々が存在する前から星々がこの谷で歌ってきた歌と繋がっているの。『ガラスの温室』の中で、木は生きないわ。ただ生存するだけ。装飾品になるのよ。会計士たちが小麦粉券を数える間に日陰を作る、緑の操り人形にね」
集落の広大な中央広場へと近づくと、そこでは銀色の葉を持つ巨大な柳が、ターコイズブルーの水池の上に枝を垂らしていた。そこでは、一本の剥き出しになった根の上に腰掛けた、異常に長い眉毛と破れたタバードを纏った老エルフが、木炭の火鉢の上に土瓶を載せていた。彼は何の荷造りもしていなかった。ただ割れた陶器の碗にお茶を注いでいた。
「ああ……絹の服を着て、嵐の心を持った使者殿か。お掛けなさい、旅人よ。松針のお茶はまだ温かい。引越しの最中に清らかな水を無駄にするのは忍びないからね」
湧き立つ湯気越しにタルゴムを見つめ、目元を皺寄せて寂しげに微笑む長老イング。
「おじい様、そんな奴に時間を無駄にしないで。総局からの使者よ。書記官たちのカードを持っているわ」
「ジェナシたちは先週、蓄音機を持ってきたよ、ライラ。葉を渡る風の音を九十九パーセントの再現度で再生する、美しい真鍮の箱じゃった」
孫娘の言葉を無視し、静かにお茶を啜る長老イング。
「住宅セクターに行っても森を恋しく思わないように、とね」
彼は痛切な慈愛を込めてタルゴムを見つめた。
「しかし機械には、乾いた大地に降る雨の匂いを再現することはできん。技術が足りないからではない。機械は『乾き』を知らんからじゃ」
タルゴムは老人の向かいに腰掛けた。彼の新しいスマートな脚は、未だになじまない自然な優雅さで折りたたまれたが、数週間ぶりに圧縮空気のプシューという音もオゾンの匂いも彼の頭から消え去っていた。急須の湯気は樹脂と、野生の松と、彼の肺に染み渡る温かな平和の匂いがした。
「上の世界は機械になりつつある、長老。ゼネクスは詩が何も生み出さないと言って、会計士どもに制御を渡したんだ。芸術は赤字を生むだけだと」
「詩が何も生み出さないというのは、真実じゃ」
微笑みながら、陶器の碗をタルゴムに差し出す長老イング。
「鉄の橋を架けることも、ミスリルを採掘することも、魂の流れを加速させることもできん。詩が役に立つのはたった一つのことだけじゃ、仲介者よ。橋を渡る間、自分がなぜ生きている価値があるのかを思い出すためだけにな」
老人は手で銀の柳を指し示した。幹の高所では、数人の若いエルフたちが、谷を永遠に去る前に樹皮へ最後の刻印を掘り終えようとしていた。抗議ではなかった。脅迫でもなかった。それは春に帰ってくるツバメについての、素朴な韻文だった。
「私たちは明日の日の出とともに出発するわ。車力の準備はできている。長老たちが先頭、若い芽が中央よ。もし竹の図書館から本を回収し終わる前に、ジェナシたちが絹のメジャーを持ってやってきたら……」
水池へと近づき、柳の木に弓を立てかけながらタルゴムをじっと見つめるライラ。
「あなたは報告書Aタイプに署名するつもり、使者さん? 濃縮小麦粉をもらったから笑顔で去っていったという×印をつけるつもり?」
タルゴムは半透明の手の中にあるお茶の碗を見つめた。偏光ガラスのスイートルーム、ヴァエル-9の丁寧な言葉遣い、ゼネクスの宇宙的な冷徹さ、そしてドロマの灰色のキュービクルを思い出した。それからライラを、長老を、そして今もオークの木を抱きしめている子供を見つめた。
ゆっくりと、しかし確かな動作で、タルゴムはタバードの緑の麻帯に手を差し入れた。二つの報告書——AタイプとBタイプ——を、彫刻された骨のペンとともに取り出した。一言も発することなく、彼は両方の羊皮紙を二つに折り、長老の小さな炭火鉢へと近づけ、角から炎を上げさせた。
天界の官僚主義が放つ白い煙がとぐろを巻いて立ち上り、お茶の樹脂の匂いと混ざり合っていった。
「ヴァエル-9には『アルカナ伝送の不具合』で報告書が消失したと伝えてくれ。俺は何も署名しない。今日も、この山々に夜明けが訪れる時もな」
エルフのデザイナーズスキン(新しい肉体)の声でありながら、かつての老漁師の力強さを宿した声で語るタルゴム。
天界永劫事務総局の金印が炎に呑み込まれていくのを見て、ライラは驚きに目を瞬かせた。初めて、彼女の弓が脅威ではなく、邪魔な装飾品のように見えた。
「で、どうやってその『計算』と戦うつもり? 私たちが戦っているのは血と肉を持った存在じゃないのよ。母親のような声で喋るアルゴリズムが書いた規則と戦っているのよ」
紙が燃えるパチパチという音だけが、夜の静寂を乱していた。焦ることなく季節の誕生と死を見届けてきた古の平静さをもって、長老イングは土瓶を傾け、タルゴムの碗にお茶を注ぎ足した。白い湯気が空気中に渦を描き、銀色の枝の間へと消えていった。
「誰もおのれ一人で計算と戦うわけではないよ、若い使者殿。方程式を壊すには、時に数学を理解しない変数を導入するか……あるいは己の利益のために数学を理解しすぎている変数を導入する必要がある」
老エルフは根のテーブルの上に碗を置き、山々のシルエットが天に聳え立つ北方を見つめた。セレンゾナスの最も高い峰の一つは、雪ではなく、一定の脈動をもって輝く奇妙な赤みがかった霧に覆われていた。
「この世界の怪物がすべて、コインの山の上に築かれた暗い洞窟に隠れているわけではない。真の王国を喰らう者たちは、洞窟に積み上げられた黄金が冷えた石炭に過ぎないことをずっと昔に学んだのじゃ。増えず、何も生み出さず、保管税を取られるだけだと。『刃の頂』のサーペントたちは……童話に出てくるような野蛮な鱗の獣ではない」
「奴らは人間なのか?」
エルフの顔をしかめるタルゴム。
「両方じゃ。ドラゴンの実体を持っておる。凡俗の姿と狡猾さを備えながら、体長は五メートルあり、その爪はオークの木をバターのように切り裂き、その肺には大地の始原の火を宿しておる。しかし奴らの真の強欲は蓄積ではなく、『利回り』にあるのじゃ」
ライラは矢筒のストラップを締め直し、激しい憎悪と諦めが混ざり合った目で輝く山頂を見つめた。
「奴らは私たちの哲学を利用したの。私たちにとって土地は売買するものではなく、私有財産も関税も理解できない。だから奴らは『刃の頂』を管轄外の避難所に変えたのよ。聖なる森の真ん中に作ったタックスヘイブン(租税回避地)にね」
「ゼネクスの規範が届かず、人々の王の法律がジョークと化す場所で、ドラゴンたちは市場を開いた。戦争の債務を買い取り、ジェナシに資金を融資し、人間の未来の収穫を投機対象にし、複利で貸し付ける。住宅ローンと底地権で立ち退かせることができるのに、なぜ村を火で焼き払う必要があるかしら?」
「証券取引所のドラゴン……素晴らしいな。宇宙は留まることなく己の馬鹿馬鹿しさの限界を超えていく」
存在論的な頭痛が戻ってくるのを感じながら、こめかみに手を当てるタルゴム。
「ヴァエル-9のキャタピラ機械の展開を止めたいなら、資金源を断ち切る必要があるわ。ジェナシたちは山頂からの資金なしにはピストン一つ動かせない。行くわよ、仲介者。銀行家どもと話し合いに行きましょう」
お読みいただきありがとうございます!
ジェナシの立ち退き勧告を突っぱね、報告書を炭火で焼き払ったタルゴム!
しかし、アルカナ産業革命の裏でジェナシを資金援助していたのは……なんと「金融取引と複利計算で世界を支配するドラゴン(タックスヘイブン)」だった!?
はたしてタルゴムとライラは、強欲なドラゴンの投資銀行から資金を止めさせることができるのか?
いよいよ物語は、天界の官僚主義 vs 資本主義ドラゴンというカオスな展開へ!
【更新情報】
スタートダッシュとして【1日4〜5話ペースで爆速更新中】です!
「長老のお茶のシーンの詩的な静けさからのドラゴン銀行家というギャップが最高」「タルゴムが男気見せて報告書燃やしたのがカッコいい!」「資本主義ドラゴンというパワーワードすぎる敵」と思ってくださった方は、ぜひ作品ページ下の【ブックマーク登録】や【ポイント評価(★★★★★)】で作品を応援していただけると嬉しいです!
第22話もすぐに更新されますので、どうぞお楽しみに!




