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機操戦伎グレニアヴァール  作者: そのえもん


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八幡颯天墜つ⑱

「諸君らは判らんだろう、暴と武の違いが」

二人は顔を見合わせて、やがておずおずと小さく頷いた。

暴力で世界は守れない。

二人の直面した新たな事態であった。

八幡颯天墜つ⑱是非ご覧ください。

「勘違いしてはいけないよ。

 私は……いいや、我が艦隊は君たち二人の戦力が喉から手が出るほど欲しい。

 だが、二人は武人としては随分未熟である。これは目前の戦力に飛びついた我らの短慮が招いた結果だが、目を瞑ることはできん。生憎、近代の軍隊教育というものは兵士を作るものであり、武人を作るものではない。暴に目覚めさせることは出来ても、それを武まで高め、制御することは考えていないのだ。戦争に勝つだけなら、本来それで十分だからな」


 呆気に取られる二人に、宇津木は根気強く、こんこんと語る。そこに怒りはあるが、それが向けられているのは二人ではなく自分だ。未熟な若者を戦争に送り出すという大罪を犯した自分と、この愚かな事態を招いた日本帝国軍上層部の醜態を許せないのだ。


「諸君らは判らんだろう、暴と武の違いが」


 二人は顔を見合わせて、やがておずおずと小さく頷いた。言われた通り、その線引きは見当もつかない。それが、二人の暴走を引き起こしたとでも言うのだろうか?


「私が見るに諸君ら二人の強さは暴力だ。見世物ならそれでも構わんが、暴力で日本は守れない。戦闘とは死闘である、加減などできん。それでは、いかに守るつもりであろうとも、いつか自らの手で壊してしまうだろう。それではダメだ。銃とは桁が違うのだ、暴で扱うのに機操戦伎は強大すぎる。

 武を扱うのであれば、自らは先ず、誇り高くあらねばならん。ただの暴力に未来を背負う資格はないと考える」


 仁王像はいつのまにか、とても渋く厳しい……修行僧のような顔つきになっていた。おそらくこの大男は、自らの怒りを克服しつつあるのだ。ましてや罰してやろうという嗜虐的なものは微塵もない。これは先を行く人間が後続へと手を差し伸べる慈愛、あるいは導きに近い。しかしそれは幼子の手を引くような甘いものではなく、千尋の谷に突き落とす事もいとわない、殺伐としたものであるようだ。


「私が何を言っているか判るか?判らんはずだ、今の諸君らには。

 探してみろ、唯鶴戦隊には暴を武へと昇華させている者がいくらかいる。その違いを掴めたら、その場で出撃を許可する。

 以上だ。一日……いや、一秒でも早くやってみせろ。君たちの戦いはそこからだ。それと……一ヶ月ほど二人は便所掃除でもしてもらうか」


 新兵器の試運転で人為的な暴走、更には母艦の甲板を損傷。大失態などという生易しいものではない、その場で撃ち殺されても文句は言えない大事である。それをこの程度で納めてくれるのであれば、温情にも程がある激甘の沙汰と言えるだろう。

 ぐうの音も出ない二人を尻目に、宇津木は颯爽とその場を後にした。


ここまでお読みいただきありがとうございます、感謝感激でございます。

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