八幡颯天墜つ⑬
隼人とブシドー・ストライカー二号はあっさり立ち上がる。
動きのずれはまずない。軽いのに、肌触りの奥が柔らかい。
反応は繊細。
反応は軽快。
反応は明快。
八幡颯天墜つ⑬是非ご覧ください。
エンジン始動、巨大な躯体の心臓が脈打ち、四肢の末端まで力がいきわたるのが見えるようだ。出力調整やらなんやらの殆どの操作が、左腕の手甲に集められた小さな装置で出来る。よくもまあ詰め込んだものだと、隼人は素直に感心した。指示役の仕事の殆どをここに押し込もうという合理性は、それだけで隼人の心を躍らせる
「どうカナ?二人とも問題はあるカイ?」
随分と性能のいいマイクがついているらしく、隼人の耳にはタカハシの声がはっきり届いた。現代技術の結晶が立ち上がるのが、楽しみで仕方がない。ゴーグルに映るタカハシの顔にそう書いてあるのまで読み取れた。
「問題ナシ。メリケンにしちゃよく出来てらあ。アタシのお墨付きをあげますよ」
「こちらも問題ありません」
二体並んでしゃがむブシドー・ストライカー。それぞれの操演席で、二人はほぼ同時に準備を終えた。機体の塊であるのに、二人の姿勢はどことなく違うのが透けて見える。
「それじゃあ、一号機。肩に赤い線が入ってる方から立ち上がってもらえるカナ?」
「うっす」
日菜である。灰色の巨人はなんの滞りもなくすっくと立ち上がると、ぐいんぐいんと体を捻ってみせた。骨格と筋肉の動きはどこまでも柔らかく、反応は上々であるようだ。
「うん……いい。いいなあ」
日菜は珍しく静かに一言でまとめた。あのやかましいのがこれでは、どうやら本気で感心しているらしい。意外と感心すると口数が減るようだ、コイツ普段はどれだけ感心しないのかと、逆に中身が恐ろしい気もした。
「では、二号機も立ち上がってクレ」
手元の操作で鋼線が巻き上げられ、隼人とブシドー・ストライカー二号機の姿勢が同調する。全身を締め上げられるような感覚は、機操戦伎のそれと全く同じである。
「どれどれ……」
すんなり立ち上がる。なんなら肩透かし気味なくらい、隼人とブシドー・ストライカー二号はあっさりと立ち上がっていた。手のひらを開閉し、その場で何度か跳ねてみるが……動きのずれはまずない。軽いのに、肌触りの奥が柔らかいのが心地よいくらいだ。
反応は繊細。
反応は軽快。
反応は明快。
感想より先に湧き上がる直感は、予想外の完成度であると確信した。
「どうだい?動作に支障はあるカナ?」
「ありません。それに、思ったよりも軽い。
骨が重いと言うから、もっと全身ずっしりくるかと思ってました」
隼人が素直に答えるものだから、タカハシの首肯は見るからに上機嫌であった。暴言を吐けば暴言が返り、素直に言えば素直に返ってくる。なんだか人生の縮図を見たようだと、隼人の脳裏によぎる。
「なにしろ単座だからね、エンジン出力に余裕があるのサ。その分モーションマニューバのサポートに回せるんだ、余裕があるのはいいことダ』
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