八幡颯天堕つ⑫
「やってやろうじゃねえか。そうだろ、隼人」
「そうだな。お手並み拝見といこうじゃないか」
「?」
甲板に横たわる人型兵器は二台。
どうやら新兵器は単座であるようだ。
八幡颯天堕つ⑫是非ご覧ください。
「マア、好きに取ってくれ。
試作量産型型機操戦伎、ブシドー・ストライカー。八幡颯天の修理まで、君たちが命を預けるのはコイツだ……どうする?怖気づいたカイ?断ってもいいケド?」
そうしてタカハシが薄笑いを浮かべた。見え透いた挑発であるが、日菜には特効があると言っていいだろう。この跳ねっ返り、口も悪く言うことを聞かないが根が単純、制御は難しくない。どうやらタカハシは既にそれを勘づいているようだ。
「やってやろうじゃねえか。そうだろ、隼人」
「そうだな。お手並み拝見といこうじゃないか」
「ソレは楽しみだ。
新しい機操戦伎の実戦が見れるのは楽しみデス」
「新しいねぇ、ただのツナギだろ?アタシにそんな大袈裟なもんには見えないけど……あれ?」
八幡颯天修理の間の繋ぎではないのか?そう思ってまじまじと見つめると……ブシドー・ストライカーとやらの奥に、もう一台同じものがあった。
なんとブシドー・ストライカーは単座であり、隼人と日菜にはそれぞれ用意されていた。
「え?最初から一人乗りで作ったってこと?そんなのアタシ見たことないぞ」
「うわ、アメリカすげえじゃんか」
二人とも稲若丸を一人で動かした経験はあるが、とにかく作業が煩わしい。かつて舞台の上で大役を無理に一人でこなし、ぶっ倒れた経験すらある日菜にとって、最初から単座というのは、隼人以上に大したモノだと思い知ったことだろう。
「……乗ってやろうじゃんか」
すでに興味が抑えられないようである。胴輪で自らを背骨に吊り下げ、手甲、足甲にゴーグルを装着する。ブシドー・ストライカーとやらの基本的な使い勝手は、大概の機操戦伎と違いはない。反面、操演席の内部は大きく違う。今までの機操戦伎のそれが、肋骨のようなものにぐるりと囲われた空間であるのに対して、こちらは金属のつるりとした卵形の空間となっている。
「へえ、新品だ。こりゃまるで魔法瓶の中に入ったみたいだ。これならアタシらいつまでもほっかほかだ」
「日菜は少し覚ましたほうがいいけどな」
「ぶっ飛ばすぞ」
隣の機体から反響する日菜の軽口が遠くから聞こえるようである。色々ある中でも一番新しさを感じさせたのは鼻だ。金属の匂いもそうだが、染み付いた歴史の匂いがない。兵器として、芸として、積み重ねられた人間の執着が詰まっていないのが判る。
多くの機操戦伎は江戸時代、古いものは室町時代から使われてきたものだ。どれだけ改修しても骨格由来のフレームだけは交換のしようがない。そのため、まっさらな新品の機体に乗るというのは、非常に新鮮なものであった。
「始動します」
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