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機操戦伎グレニアヴァール  作者: そのえもん


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八幡颯天堕つ④

こちとら未来ある若者を、それぞれ一座から引っ張り出してるんだ。

生かして返すのが軍の使命。

生かして帰すのが俺の役目。

活かして還すのが未来への投資なんですよ。

葵斗の怒りは静かにして熱い。

狂っていることを自覚しているのだ。

八幡颯天堕つ④

是非ご覧ください。

「思いつき?随分な言いぐさじゃないですか、こっちゃ部下の命がかかってんだ。俺ァ寝ても覚めてもそればっかり考えてるんですよ」


 じわりと葵斗から滲んだのは、露骨な不快感であった。それは静かであるが、熱い。一見いつでも笑っているような軽薄な若者であるが、武道に通じる芸を納めているだけあって、薄皮一枚の下には唸る虎にも似た重々しくも巨大で強大な迫力がある。必要とあればいつでも薄皮を食い破って出てくるぞと、明確に断じている。


「中尉こそ考えもしないで諦めないでもらえやしませんかね。あんたが出来ねぇって答えるのは、前線に死ねと言うのとさして変わらんのですよ?

 こちとら未来ある若者を、それぞれ一座から引っ張り出してるんだ、生かして返すのが軍の使命、生かして帰すのが俺の役目、活かして還すのが未来への投資なんですよ。うっすら判ってくれてもバチは当たらんでしょうに、そのためにぐりぐり頭を捻るのが技術畑の仕事でしょうよ」

「少尉のその考えには敬意を表すル。

 しかし、それで無理難題を飲み込ませるのはナンセンスだ、日本帝国軍の頃と本質が変わらなイ」

「あ?扇子がなんだって?大日本帝国のなにが問題があるようじゃござんせんか、お?」


 がたりと乱暴に立ち上がった葵斗少尉。新富一等兵曹が羽交締めにして押し留めなければ、既にタカハシに飛び掛かってぶん殴っていたと確信させる圧が迸っている。


「葵斗少尉……ッ!落ち着いてくださいッ!」

「落ち着いてるさ新富ィ、俺の頭ン中はいつもとなんにも変わっちゃいねえ、冷静そのものさ。冷静なまんま燃え上ってんのさ。

 おうおう半メリさんよ、お忘れか?ここは日本の軍艦だぞ、日本語で喋れよ。日本は別メリケンに負けたわけじゃねえんだからよ、上からモノいうのはあんまり賢くねえぞ?オイコラ」


 葵斗は新富一等兵曹を引き摺りながらタカハシに詰め寄る。彼とて機操戦伎における一端の役者、全身に抵抗がかかる中での身動きは操演で慣れたもの、故にその涼しい顔には汗の一筋すらない。もう二人ほど引き摺っても平気に違いない。隼人はその力を伴う技量の高さに内心、感心していた。。


「少尉!落ち着いてくださいッ!」

「何度も繰り替えすなよ新富ィ、幅が狭いと思われちゃ役者は損だ。役者じゃなくても器用な方がいいだろう?言葉尻でいいから変えんだよ。

 で、だ中尉殿よ。未来ある若者が日本の未来を守るための戦いなのによ。こちとらその若者を危険に晒すなんて本末転倒してんだぞ、見やがれ十代がいて、娘までいるんだぞ。とっくの昔にどうかしてるのは薄々気づいてんだよ。ええ?それでもどうしようもねえから現場で踏ん張るんだよ。これ一人たりとも以上死なせてたまるかって、必死になって当然だろがよ。

 やっぱりあんたアレか?アメリカ本土が安全なったから気楽にやってんのか?」


 葵斗少尉がそう口走った瞬間、宇津木はその肩をぐわしと掴んでいた。葵斗がそれに反応するより早く丸太のような腕がくいっと翻ると、羽交い絞めにしている新富一等兵曹まで巻き込んでねじ伏せた、あまりに軽々と、文字通り赤子のように。次の瞬間葵斗は顔面から机に突っ伏す形で制圧され、文字通り指一本動かせないように極められていた。


「いててて!大佐殿!なんですか急に!折れる折れる!」

「葵斗少尉、貴様の発言は環太平洋連合艦隊の信頼にヒビを入れかねない。気をつけたまえ。我らが守るのは日本の未来だけではない。人類の未来だ。

 君が若者を無事に返すのが君の使命としているように、私はタカハシ中尉が無事に任務を全うし、やがて安全に帰国させることにも使命を感じている。だがそれはもちろん君も、機操戦伎乗り全員も同様である。そこに優劣はない、国籍も階級もないのだ。貴官にもそのように得心せよ。

 鉾蘭上等兵、銃也二等兵、とりあえず今はここで切り上げるとしよう。ご苦労、今日は休め」


 いつの間にか蚊帳の外に追いやられていた二人は、青く引き攣った顔で敬礼。それはそれはとんでもない空気になった作戦室を後にすると、一目散にその場から逃げ去った。


ここまでお読みいただきありがとうございます、感謝感激でございます。

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隼人たちが蚊帳の外だって?

そういうときもあるんです、きっとね。感想コメントお待ちしております。


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