表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機操戦伎グレニアヴァール  作者: そのえもん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
81/103

八幡颯天堕つ②

そりゃいいや、一騎打ちに拘ったらぶん殴るところだった。

実戦の乾き方ってもんがが判ってきたじゃないか。

いい傾向だ、俺好みの兵士に仕上がってきてる。意外と順応性が高いな。やっぱ若えや。

隼人の答えに葵斗が笑う。

戦場は思ったより早く隼人を蝕むようだった。

八幡颯天堕つ②是非ご覧ください

「海へ飛び込んだんですカ?

 信じられナイ……どうかしてる。その瞬間に止まってもおかしくないし、多少持っても一酸化炭素中毒で死んでたかもしれない……よく動いたものデス」


 幽霊でも見たような顔で呟くタカハシであるが、隼人は平然と言い返した。なにより無茶があるのは二人とも存分に知っている。


「向こうが火を吐いてきたんです、こうでもしなきゃなければ俺達は黒焦げで死んでました。焼かれて死ぬくらいなら、一秒でも耐えて、一匹でも巻き添えにしたい……いけませんか」

「防水性の向上を希望します。このままパクダが海に隠れるなら、今後も水に潜る可能性もあるかもしれません」


 二人して矢継ぎ早にそう言い返したのは、死にかけた実感がまだ背筋に突き刺さったまま残っているからだ。実際、今日死んでもおかしくなかった場所はそれだけではない。一歩間違えば何度死んでいたことか。今回は隼人と日菜が生き延びるホンが辛うじて通った。ならば次もそのホンが通るようにしたいではないか。死にたくない、それに理屈をつける、生き抜くためなら屁理屈なんぞいくらでも出てくるものだ。


「別に泳げるようにしろとは言いません。三分、いや、一分でも構いません。少しの間耐えられれば、戦える可能性が広がります」

「仮に……八幡颯天が完全防水だったら、銃也は銀色の奴を仕留められたか?」

「可能性はあります」

「そうかい、銃也は?」


 葵斗の質問に力強く即答する日菜であったが、反面隼人は少し考えた。隼人も自身が短慮で悲観的な自覚がある。頭の中身を一度反芻して、勢いとか感情とか鮮度の重要そうな内容を抜く。そうして残ったものを一旦胸の中で平たくしてから口を開く。


「多分……難しいです」

「なぜそう思う?」

「銀色のあいつは強い。怪攻撃は金色の方が上ですが。身のこなしや攻撃の重さは銀色の方が優れていました」


 昨日辛うじて撃退した金色がやたらと強敵と聞いて、隼人は明らかに慢心していた。苦戦したとはいえぶっつけで撃退したのだ、なればと心の底では、自分がこの戦争を終わらせてやれるとさえ思っていた。しかし現実はそうはいかない。儚い妄想であり、細やかな夢想であった。現実世界というものを囲っていたのは、思っていたよりも遥かに分厚い壁。実戦というものは、思っていたよりずっと幅広く、奥深く、根深く、性根が悪く、しんどい。それもそのはず、なにしろ全員が自分の命を賭けた死に物狂い、甘いことで勝ち抜けると思うのが大間違いである。


「金色の強さは……なんというか、賢い匂いがするんです。

 だからやることが幅広くて、色々な怪攻撃や格闘の組み合わせで戦ってくる……んです」


 疲労で回らない頭から懸命に搾り出す言葉はまとまりがない。しかし、それはありのままに一番近い情報でもあった。小突いて止めようとした日菜を掌で制して、葵斗は続きを促す。


「続けてくれ」

「銀色はそういうのとは違う。なんとなく……得意技に絞って磨き上げて、そいつ頼りで押し切ってくる感じです」


 隼人のまとまりない言葉に、葵斗はふぅんと頷く。それでいいのだ、現場から、前線から、戦場から、死地から推敲して練り上げられた結論などが出てくるはずがない。そんなものは指揮官の、指令所の、将校の仕事ではないか。隼人はそう割り切って、腹と頭の内側を洗いざらいぶちまけた。


「次ぶつかったらどう戦う?どうすりゃ勝てそうだ?」

「少なくとも正面からぶつかるのはまずい。別に勝負じゃないんだ、勝つ方法なんかどうでもいいんです。単純だ、複数人で囲んで袋叩きです」


 明確な回答が出せず、窮した隼人が無理に絞り出した返答。花も誉もあったものではない、数と暴力に任せた策ともいえない泥臭い答えであったが、存外葵斗はあっさりと頷いた。なんなら笑っている。この顔に隼人は見覚えがある。子供や孫の奇行にかつての自分を重ね、思わず駆け巡る懐旧と追憶に口の端を吊り上げる、年寄りの笑いによく似ている


「そりゃいいや、一騎打ちに拘ったらぶん殴るところだった。いいね、実戦の乾き方ってもんがが判ってきたじゃないか。よしよし、いい傾向だぜ、俺好みの役者……失礼、兵士に仕上がってきてる。意外と順応性が高いな。やっぱ若えや。そっちはそれでいいだろう。

 そんでだ、防水の件はタカハシ中尉に検討していただくとしましょう。つっても、どうせ一日二日でどうにかなることじゃない。差し当たっては哨戒小隊は頭数を増やしましょう。班が減る分は航空隊で補えませんか?」


ここまでお読みいただきありがとうございます、感謝感激でございます。

気に入っていただけたら、お気に入りやブックマークで応援してもらえると本当に励みになります。

あなたの一言が、次の物語を紡ぐ燃料になります。


今回の先頭で隼人はどう変わっていくのでしょうか?

コメント感想で考えを教えてください。


よろしければ拡散、趣味の合うお友達におススメしていただけると幸いです。

Xで更新情報、他作品の更新なんかも呟いておりますので、よろしければフォローいただければと思います。

https://x.com/YYKDdLD5z64pjhq


※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・出来事とは一切関係ありません。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ