叩き折れ、鼻っ柱⑫
銃が暴発した八幡颯天は絶体絶命。
機体が重い。
全身が重い。
エンジンが鈍い。
それでも戦う、本能が隼人を衝き動かすのだ。
叩き折れ、鼻っ柱⑫
是非ご覧ください。
火薬の炸裂というものに、本来指向性はない。銃や砲というものは全方位に向けて等しく燃え広がり暴力的に弾けるべきものを金属の筒の奥底へ幽閉し、その力が唯一塞がれていない正面へ抜ける勢いで弾を飛ばすのが基本原理という、野蛮にて粗暴な、暴力装置である。そうして内部で暴力が弾けて具現化するからこそ、銃の内部、ましてや銃身に異物があってはならない。そんなものがあれば、炸裂による圧力で銃が壊れてしまうだろう。
それこそ海から取り出したばかりで内部に水が溜まっていようものなら間違いない。だから軍では、正しい銃の扱いを徹底的に教育するのだ。隼人のような「ある程度わかるから」とその期間がすっぱり抜け落ちている人間は、そこが甘い。
ずどむ。とでも言うべきこもった炸裂音と共に、八幡颯天の銃は機構部を大きく破損した。
「うおっ、壊れた!」
「壊したんだよ!バカ!」
それを好機と見たか、銀色の飛竜騎士が懐に飛び込んできた。怪攻撃の閃光に匹敵する素早い刺突が、八幡颯天の背後で粉々になった建物が飛び散る。一瞬でも反応が遅れたら、八幡颯天が同じ目に遭わされていたという確信が、隼人の背筋にツララをぶち込む。ガラクタと成り下がった銃を投げ捨てると刀を抜き、構えた隼人の独白に、日菜が呆れたように呟く。
「クソが、なんで毎回槍や刀でこいつらと戦わなきゃならんのだ」
「自分でぶっ壊したんだろ!」
重く鋭い飛竜騎士の刺突をなんとか刀で弾く。動きが読みにくい分、バカみたいに早く感じる。飛竜と機操戦伎の体格差がなければ、あっという間に弾き飛ばされていたかもしれない。否、幾度か攻撃を裁いたとき、隼人は一つ捉えた。
「こいつ……結構やるな」
銀色の飛竜騎士の力量は、おそらく金色に匹敵するのだろう。飛竜そのものも並のそれより一回り大きく力強いのだが、そこに跨る騎士も只者ではない。怪攻撃の練度とその連携は金色に分があるようだが、格闘戦の重さと鋭さはこちらに軍配が上がる。総合的な厄介さはいい勝負だ。
「野郎、ちょこまかと!」
刺突、薙ぎ払い、打撃と重撃が幾度も襲い来る。格闘戦はやはり向こうに分があるのか、隼人は自分が段々と追いつけなくなっていくのに気が付いた。
「おかしい……ここまで追いつけないもんか?」
おかしい、どうにも体が重い。骨髄の代わりに鉛でも仕込んだかのような体の重さがある。果たして、そこまで体力を消耗していたのだろうか?だとしても……いや、違う。
「日菜ッ!エンジン出力あげろ!」
「やってる!上がらない!」
「なにぃ!」
機体の動きが重い分、全身の鋼線巻き上げの抵抗が強くなる。鈍い体に鞭を撃ってなんとか躱すものの、やがて飛竜騎士の突撃を壊し損ねた八幡颯天は、それと正面からがつんとぶつかりあう。何倍もの体重がある筈なのに、こちらが弾き飛ばされそうになる。
「なんだ?何が起きてるんだ?敵の攻撃か?」
「なんとか堪えろ!」
「堪えろって……無茶言うなよ」
ギリギリと火花を散らして競り合う……その光景に不意にノイズが走る。隼人のつけたゴーグル、その内部の画面の色が飛び、映像が時たま大きく歪んでいく。
「なんだ?何が起きてるんだ?敵の攻撃か?」
土壇場の鉄火場、強敵との戦いの最中に現れた異常。隼人は焦る気持ちをどうにか抑えながら、全力で抵抗を続ける。もはや頭で考える余裕は無い。生きるために、本能が体を衝き動かすのを御するだけだ。
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