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機操戦伎グレニアヴァール  作者: そのえもん


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叩き折れ、鼻っ柱⑩

隼人は戦場の愉悦に酔っていた。

隼人は戦場の高揚に踊っていた。

隼人は戦場の熱に浮いていた。

一匹の猛獣となって戦う二人。

隼人はそれを俯瞰で見下ろしているような感覚すらあった。

「日菜ッ!煽れ!大声で煽り倒せ!全力で煽り倒せ!」


 隼人の声、その意図を即座に拾ったか、日菜がすぐさま怒鳴った。


 「どうしたトカゲ野郎!鉄砲が怖いか?心配しなくても、お前らまとめてぶち抜いてやるからな、覚悟しやがれ!」


 言葉が通じるとは思わないが、日菜の心底バカにした口調は、相手を煽るには十分な効果があるらしい。じわりと殺気が膨れ上がる野が判る。

 それだけではない。先程当てたのは不意打ちとまぐれの合わせ技であったのだが、いきなり目の前で同僚が消し飛ぶ光景は、他の飛竜騎士に恐怖を植え付けたようだ。飛竜騎士は砲口の向く方を露骨に避け始めたようである。この鉄の塊が炎と煙を吹くたびに、その先にいる誰かが死ぬと、飛竜騎士の脳内に焼き付いた、隼人は僅かにほくそ笑む。

 飛竜騎士の多くを煽って引き寄せ、砲口で睨みを効かせながら、隼人は跳び、飛竜騎士を狙い撃つ。


 「おらおら、どうしたァ!撃ち殺されてえのか?

 遠慮すんなよ、吹き飛びてえ奴から一列に並べ。まとめて吹っ飛ばしてやっからよォ!タマは余るほどあんだから、ハチの巣にして今夜のつみれ汁にして食ってやる!」


 日菜の煽りが心地よい。どこまでも強気で傲慢な日菜がいると、自分まで強くなったような錯覚に包まれるようだった。

 たとえ錯覚でも、相手が怯えれば動きが鈍る。

 たとえ僅かでも、相手が焦れば動きが鈍る

 たとえ刹那でも、相手が怒れば動きが読める。

 そして必死に逃げ回れば、自然と動きは単純になる。それは絶好の狙い目であった。当たれば助からないと刻み込むため、とにかく撃つのだ、必殺になり得る至近距離の砲撃を。と、引き金を引いても弾が出ない。


「ちぃっ__クソ、そういや五発しか入らねえんだった」


 舌打ち。ボルトを動かしても弾が装填される手ごたえがない、弾切れである。この巨大な砲弾も、日本軍の小銃と同じく装填数は五発。まとめた弾薬を上から押し込むクリップ装填である。こちらも大体把握しているが、少々もたつく。


「ああもう、めんどくせえな」

「急げ隼人!来てるぞ!」


 給弾の隙を嗅ぎ取ったか、飛竜騎士が頭上から強襲を仕掛けてくる。しかし隼人に気を取られれば、沖から接近してくる駆逐艦と蒼鉄ノ誉、そして上空を飛び回る戦闘機のいい的である。陸海空、三拍子揃ってようやく五分の勝負が見えてきたと言っていいだろう。反撃開始だ。八幡颯天は銃の先端に銃剣を取り付け、低く構えた。

 日本の銃剣術というものは槍術の流れも取り入れたものだと言われている。刃物による刺突、切り払いだけでなく、銃床による打撃などやれることは幅広い。閃光を躱し、雷撃から逃げ、突風を受け流す。怪攻撃の切れ間を嗅ぎつければ嵐のように反撃に転じ、飛竜騎士の真っ只中に飛び込んで暴れ狂う。

 考えていては遅れる。殺気を捉えた次の瞬間、さらなる殺気を暴力に乗せて叩き返す。あるときは銃剣の刺突であり、ある時は砲撃であり、またある時は腕力でねじ伏せ首を踏み抜いていた。

 手段は些事であった。ただ肉体が、相手を殺すためにその瞬間瞬間で最適の手段を取る。積み重ねたのは舞台稽古だが、その源流が戦国時代の兵器であり、殺人術の積み重ねであると証明するように、八幡颯天は戦った。青い血飛沫を浴び、一心不乱に暴れ狂うその姿は、飛竜騎士とどちらが化け物なのか競うさ、文字ばら撒く。

 隼人は戦場の愉悦に酔っていた。

 隼人は戦場の高揚に踊っていた。

 隼人は戦場の熱に浮いていた。

 日菜の咆哮が聞こえるようだ。

 日菜の鼓動が伝わるようだ。

 日菜の高揚が染み込むようだ。

 銃剣を突き出せば飛竜の腹を突き刺し、砲撃をかませば翼をぶち抜く。嵐のような戦いぶりは神仏の加護でも得たようであった。もはや一匹の猛獣となって戦う自分と日菜を、俯瞰で見下ろしているような感覚すらあった。


ここまでお読みいただきありがとうございます、感謝感激でございます。

気に入っていただけたら、お気に入りやブックマークで応援してもらえると本当に励みになります。

あなたの一言が、次の物語を紡ぐ燃料になります。


加速する二人の戦いを見届けてください。

感想コメントお待ちしております。


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