復帰⑭
敵は正体不明の怪物ではない。
敵は問答無用の化物ではない。
敵は全知全能の存在ではない。
与り知らぬ理屈で動くただの生物。
そこに勝機がある。
復帰⑭是非ご覧ください。
なぜ撃退できたのか、今でも自分でもわからない。
文字通り魔法のような怪攻撃もさることながら、あの金色は飛竜の肉弾と騎士の槍やらの連携による格闘戦も十分に脅威であった。ただただ生き残るために戦っていたあの状態でなければ、生きては帰ってこれなかったという実感がある。
やはり終盤、向こうが明確な焦りを見せなければ押し切られていた。一体なにに焦ったのか、理由がわからないのだ。構え直すその背に、日菜の声がかかる。
「病院から連絡あったよ。砲園さん、助かったって」
「聞いてる……よかったよ」
喜ばしいことではある。しかし、日菜の前で露骨に喜ぶのはどうにも気が引ける。それを汲み取ったのか、日菜も何も言わない。互にそれを汲めるから、別段ぎこちなくはない、別段気まずくもない、別段疑ってもいない。だが、話題は宙ぶらりんである。そんな暗闇に堆積したぼんやりとした沈黙を、今日は珍しく隼人が破った。
「そういや火、吐かなかったな」
我ながら強引に話題を捻じ曲げる。いつだか見た映像では、飛竜の吐く炎は戦闘機を火だるまにしていたはずだ。今日の戦いでも、至近距離から浴びせられていたらやられていたかもしれない。
「飛竜は火を吐くとしばらく動きが鈍くなる。意外と体力使うのかもしれない」
「へぇ」
「アタシらだって声だって出し続ければ疲れる、ゲロ吐いた直後に全力疾走なんかできねえだろ。きっと同じなんだ、炎なんか吐けば消耗したっておかしくない。ありえる話さ。根拠はないけど、府には落ちる」
「やっぱり日菜は強引だな」
「しょーがねーだろ、アタシだって連中が火を吐くのは殆ど見たことがない。連中にとっても奥の手なのかもしんない。一発きりだって噂もある」
「そうか……何でもありの化け物なんじゃなくて……見たこともない仕組みってだけで、動物なんだな」
「そうさ、殺せば死ぬんだ。上手くやればいいだけの話だ、アタシらならできる」
きっと彼らには、隼人の知らない制約があるのだ。それが連中を焦らせた要因なのだろう。それさえ気付けば、勝つことは不可能ではないはずだ。遠くに見えた光明であるが、手放さず握っておきたくはあった。
「何だろうなぁ……」
ぼんやりと闇の向こうに隼人の考えが吸い込まれてゆく。そいつが何かを形作る直前、大きな拍手が響いて隼人の考えは断ち切られてしまった。
「素晴らしイ。
流石、直接戦ってる人間は情報量が違いますネ」
「誰だ」
闇の更に向こう、調子のおかしな日本語の出所に、隼人は木刀を向ける。敵意があれば殴り掛かる。そんじょそこらのやつならば、一瞬で叩き殺す自信がある。
現れたのは背の高い男。黒髪黒目であるが、どことなく鼻筋が通っており、随分と色が白い。よく見れば、袖を通す開襟シャツの軍服にも、まるで見覚えがない。
「……外人か?軍艦に?」
思わず殺意を膨らませる隼人であったが、打ち込む前に日菜が小突いて止めた。
「落ち着けバカ、アメリカとの戦争は終わったろ。今はもう味方だろが。
と言うか、アタシらはこの人には頭が上がらない。特に隼人は一度お礼を言った方がいい」
「どういう意味だ?」
「この人はアメリカの技術顧問、タカハシ中尉だ。八幡颯天の改修もこの人がやってくれた。
判るか?この人が小型高性能のエンジンに積み替えてくれなかったら、八幡颯天に隼人を乗っける空間が確保できなかったんだ」
それを聞いた隼人は跳び上がる。それが効いた隼人は跳び退く。それはもはや命の恩人に近いではないか。光の速さで木刀を収めると頭を下げ……ようとして、敬礼した。
「……失礼しました、中尉殿。
榊浦銃也二等兵、八幡颯天の人形遣いです」
「よろしく、デヴィッド・タカハシだ。
ところでワタシはホクラン一等兵から、幼馴染の名をハヤトと聞いていたが?シューヤというのはステージネーム……ええと、芸名かナ?」
「そうです。中尉殿、日本語上手いですね」
「そうかい?母が日本人でネ。
しかし、とんでもないモノを隠し持っていたね、日本軍は。機操戦伎、いつ見てもとんでもナイ。
巨大な人型兵器だなんて……敬虔なクリスチャンが見たら卒倒モノだヨ」
「そうなんですか?」
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