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機操戦伎グレニアヴァール  作者: そのえもん


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復帰13

飛竜の火炎が隼人を焼く。

飛竜の尻尾が隼人を凪ぐ。

飛竜の爪牙が隼人を裂く。

それが五度目に達したとき、彼女が現れた。

復帰⑫是非ご覧ください。

 金色の飛竜騎士がこちらを威嚇するも、隼人は構えを崩さない。先程の霞崩しに近いが、もっと前傾姿勢で刃は水平に近い、切先は固定せずに飛竜の鼻先を追うようにゆっくりと動き続ける。名のない構えだ。なにしろ剣術というものは、ほぼ全てが対人を想定している。

 当然ながら、既存の武術に飛竜と戦う有効な型は存在しないのではないか。そう考えた隼人がたどり着いた構えだ、効果的かどうかは知らないが、そこに名前のないのは合理的ではないか。

 襲いかかる爪を叩き落とせば火花が散る。噛みつきを逸らせば生臭い呼気がすぐそばをかすめる。身を捩って放たれる尻尾の薙ぎ払いを飛び退いて間合いを外すと、今度は相手が体制を戻す前に、その内側へ飛び込む。

 文字通り飛竜を飛び越え、甲冑姿の騎士へ攻撃を仕掛ける。金色の奴の剣は細く軽い、渾身の打ち込みで迎撃を切り払って叩き折る。そのまま脳天を砕いてやろうとしたが、その隙を狙われた。真横から叩きつけられた翼に撥ね飛ばされ、隼人は甲板を転がった。

 間髪入れず襲いかかる踏みつけを転がって避け、脚を捻った反動で一息に起き上がる。


「まだまだ!」


 起き上がった瞬間に目にしたのは、既に胸を膨らませて大きく息を吸い込む飛竜の姿。次の瞬間、あっと思う間も、身を隠す者を探す余裕もなく、吐き出された炎にまかれて、隼人は燃え尽きる。


「クソっ……死んだな」


 こうして隼人の意識はこちらへ戻る。無論、この甲板に飛竜がいるわけもない。今のは先ほど対峙した記憶から作り上げたイメージ、言わば幻想との戦闘に過ぎない。

 だが、全身には翼で強かに経ね飛ばされた感覚があるし、全身には炎でこんがりと焼き尽くされた感覚がある。短い時間だがそれだけ綿密で、病的なまでに練り上げられた幻ということだ。上々だ。


「五戦全敗か?」


 声をかけられてぎょっと振り向く。どうやら艦橋の影から日菜の声がする。締め出した自分を取り戻すと、段々風と波が、やがて機関の音が聞こえるようになってきた。


「いたのか日菜。どうだい、見えたか?俺と戦う飛竜騎士が」


 すうっと甲板を滑るように歩いてきた日菜は、隼人に手拭いを投げつけた。これを顔面で受け取り、首に巻いたころ、日菜はすぐそばの木箱に腰を下ろしていた。


「見えた。私だってあいつの動きを見たからね、頭に入ってる」

「そうかい。でも、見てたのは途中からだな。七戦全敗だ」


 七度も死闘を繰り返した隼人は、これ以上ない汗だくであった。みるみる手拭いが重くなっていくのがわかる。一度絞ってもう一度拭くが、それでも足りない。


「……そっか」

「なんだ、笑わねえのか」

「笑わないよ。

 あいつと真っ向から戦って生き延びたのは、私たちが最初だ。

 あいつは強い。出てくる度に誰かがやられてた……らしい」


 その中の一人に剣楼が含まれるわけだ。隼人は自分が無神経である自覚はあったが、それを念押しできるほどの人でなしではない。だがそのせいで、なんと返せば良いのかわからない。我ながら不器用なものだと、胸の内で笑う。


「今日だって、隼人がいなかったら……砲園さんも、アタシも死んでた」

「次は……返り討ちにしてやるさ」

「全敗しといてよく言う。やっぱり逃げるしかない」

「……そうかもな」


ここまでお読みいただきありがとうございます、感謝感激でございます。

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