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女子力に優れた俺は、学費が免除されました。  作者: 土星めがね
文化祭

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文化祭➆

 翌日。


 まだ校内に人が少ない時間帯のはずなのだが、校門の前には見たことのある、というか見慣れた二人の少女が立っていた。


「おはようございます」

「おはようございますっす」

「おはよう。ってか、美樹も悠陽も早くないか?」

「すみません。昨日の食事代を払うの忘れてしまったので。できるだけ早く渡さないとなとと」


 美樹は鞄か茶封筒を取り出し、俺に差し出す。悠陽はポケットから小銭をジャラジャラと出し、俺の掌へと押し付けた。


「釣りはいらないっす」

「いや、ちゃんと返すから……って、丁度じゃねぇか」

「あれ、そうっすか?」

「私の方は本当にお釣りいりませんので。昨日立て替えて頂いた利子と思って取っておいてください」


 美樹から受け取った封筒はとても軽く、どうやら紙幣が二枚入っているようだ。


「流石に悪いから返すって」

「いえいえ。昨日は初めてのファミリーレストランということで浮かれてしまいまして。ご迷惑をおかけしましたから」

「いや、マジで。申し訳ないから。とりあえず一枚だけでいいから」


 俺はその場で封筒を開け、紙幣を取り出す。俺の予想だと野口さんが二人いらっしゃる予定だったのだが、そこにいたのは二人の福沢さんだった。


「いやいや、これはお釣りとかそういうくくりじゃないから」

「いえ、本当に。友人と食事に行くことも初めてだったので、すっかりお金を払うのを忘れてしまいました。本当に申し訳ございません……」

「そんなに正式に謝らなくていいから。ほら、とりあえずこれは返す。一〇〇〇円だけでいいから」

「そ、そうですか? ですが……。分かりました。そこまで言うのであれば。……すみません、今は細かいお金がないので……」

「おいおい。一〇〇〇円札を細かいお金と表現するな。なんか悲しくなってくるから」


 とりあえず昨日の代金はお金が崩れたときにという事で決着をつける。まさか、こんなにもナチュラルに美樹がお嬢様であることを見せつけられるとは。


「それで? 俺はこれからうどんのスープを作らなきゃなんだけど……お前らは何かすることあるのか?」

「「志島君(克人さん)の手伝いを……」」

「結構です」

「はやくないですか!?」

「いやいや、どこの馬鹿がお前らに料理を手伝わせるんだよ」

「ちょっと! あたしらも空の鍋を運ぶくらいはできるっすよ!」


 空のと言い切る辺り自分の能力値をしっかりと理解されているようだ。中身が入ったらひっくり返すに決まっている。


 校門前で時間を無駄にするわけにもいかないので、とりあえず俺たち三人は調理室へと向かった。昨日、あれだけの決断を俺に迫っておきながら二人ともいたって冷静。俺の考えすぎなのか、と不安になってくるが取りあえずは今日の仕事を済ませてしまおう。



 調理室には既に複数の女子が固まって談笑しており、俺の到着に気が付くとその中から一人の女性が近づいてきた。


「おはよう! 志島君……って、学園のアイドルを二人もつれてどうしたの!?」

「連れて、というか勝手に着いてきたんだよ。あ、こいつはうちのクラスの委員長。松原由紀だ」


 俺の背後に控える美樹と悠陽に軽く松原を紹介する。すると、美樹が先ほどまでのおふざけを忘れたかのような真面目な表情できれいに一礼をした。


「すいません。少し時間ができてしまいまして。微力ですがお手伝いをさせていただければと」

「え、あ、そうな……ですか? ですが、手伝っていただくわけには……」

「同級生なんですからもう少し気楽に話していただけませんか?」

「美樹さんの外面モード久しぶりに見たっす」

「俺もだ」

「え、そう? 分かった。じゃあ普通に話させてもらうね。手伝ってもらうのは悪いから、ゆっくりしていて? 買って来たお菓子もあるし」

「え、そうですか? ではお言葉に甘えて」

「まさかの速さで折れたっすね。まぁ、手伝ってもろくなことにならないのは分かり切ってるっすからね」


 悠陽が俺にだけ聞こえる声で、軽く笑う。悠陽本人も手伝えることはないとわかっているらしく、素直に女子の輪に向かっていった。


「いやぁ、やっぱり緊張しちゃうね。初めて近くで見たけど、青山さんはチョー美人だし、赤坂さんはめっちゃ可愛いし、志島君ってこんな子たちと毎日触れ合ってるんだね」

「触れ合っては無いから」

「男じゃなくても変な気を起こしそうになるね……志島君は大丈夫?」

「安心しろ。俺にそんな度胸はない」

「ほんとかなー?」


 そう言って俺の顔を覗き込んでいる松原を無視して、俺は今日の準備を始めた。


 まずは準備した大鍋にいっぱいの水を入れ、コンロの上に置く。棚から昆布を取り出してきて水に沈めた。このまま十分程度待ち、乾燥した昆布をもどす。こうすることで旨味が出やすくなるのだ。


 少し時間が空くので、俺はうちのクラスメイト達の輪に加わった美樹たちの様子を観察してみることにした。


「青山さん、これ食べますか?」


 俺のクラスメイトである女生徒は、美樹においしいそうな焼き菓子を差し出している。朝からお菓子を食べるということに罪悪感を覚えない訳ではないのだろうが、そんなことくらいでは美樹の食べたい問う欲求は収まらない。


「すいません、突然お邪魔したのにこのようなものまでいただいてしまって」

「大丈夫ですよ」

「ありがとうございます。それと少し不躾なお願いなのですが、砕けた調子で話してはいただけせんか? 私が来る前まではもう少しにぎやかにお話をされていたようなので、気を使っていただいているのであれば申し訳ないなと」

「そ、そう? じゃあ、いつもと同じ感じで話すね。そういう青山さんももう少し気軽に話してもらえると嬉しいな」

「私の口調は癖みたいなものなので。それに、この口調の方が少しお嬢様っぽくはないですか?」

「それはそうかもだけど、っていうか青山さんってそういう冗談を言う人だったんだ。少しびっくりしたよ」


 美樹がそんな冗談を言うとは俺も驚きだ。その感想を抱いたのは俺と同じようで、クラスメイト達もキョトンとした表情を一瞬浮かべた後、すぐに笑顔を携えた。


「確かに、青山さんってもっと怖い人なのかと思ってた」

「うん。なんか、近寄りがたいって言うか……」

「そうですか? そんなつもりはなかったのですけれど、そう感じさせてしまっていたのであればすいません」

「いやいや、私たちが勝手に思ってたことだから、青山さんは悪くないよ!」

「そういっていただけると助かります」


 美樹が近寄りがたい雰囲気を出していたのは、お父さんである茂さんの意向を美樹が忠実に守っていたがためであるので、そんなつもりがなかった訳がないのだが俺がわざわざ水を差す必要もないだろう。


「あたしは怖くないっすよね?」

「うーん、どうだろう。赤坂さんは前から可愛いなーと思ってたよ。でも、やっぱり少し怖かったかな。陸上一本ですごくストイックなイメージがあったから」

「そうっすか? あたしもそんなつもりなかったすけど、もし怖がらせてしまったのだったら申し訳ないっす」

「ううん! 悠陽ちゃんに関しても私たちが勝手に思ってただけだから!」


 悠陽に関しても自分で心のシャッターを閉めていたので、そんなつもりないわけないのだがこちらについても俺は何も言うまい。


 近づいたはいいものの、ずっと空気のような扱いなので俺は早々にスープづくりに戻った。女子陣に手伝って欲しかったのだが、松原一人に頑張ってもらうとしよう。


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