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戦神子と六人の彼  作者: 火渡ユウ
二ノ彼 ライヤ
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一話 想うゆえの我儘

「あっ……」


 そこにいたのは、ライヤだった。

 暗い表情を浮かべていた彼は、隠すようにすぐに笑みを浮かべる。

 

「なんじゃ、柚葉か」


 そう言うと、ふとため息をついた。

 自分に会ったことにガッカリされたのかと思うと、ちくりと胸が痛む。

 柚葉の想い人が彼であるから、なおさらだ。


「あのね、私、聞きたいことが――」

「俺もじゃよ」


 柚葉の隣に来ると、寂しげな笑みを向けた。


「他の四護神(やつら)はともかく、俺はお前さんにとって、頼りないんか」

「ふぇ? そんなことないよ、どうしてそう思うの?」


 それは事実で、むしろ頼りにしていたくらいだ。どんな状況でもライヤの余裕を見せる行動に、安心している自分がいた。


「悩み、話してくれんか」


 その言葉に、柚葉は肩をびくつかせた。

 悩みを抱えていることを、どうして知っているのだろうか。

 普段そんな行動をとってはいない自覚があるし、ライヤの方がよっぽど、悩みを示唆する行動をとっている。

 かつ、ライヤは今自分が抱える悩みでいっぱいいっぱいなのだろうと、そう思っていた。


「いや、でもそれは――」


 アゼーレ超大国を救う術が、柚葉の死と聞けば、悲しんでくれるだろうか。

 話してみたい気持ちはあるが、ダメだ、それはできない。

 きっと、何の反応もしてくれないだろう。そんなライヤを思い浮かべるだけで、怖い。

 それしか術がないから、余計に言ってはいけない気がする。

 でも、ライヤにだけは知ってほしいと心の片隅で思っている。

 

「無理か?」

「……ううん、話したい」


 話したって、運命は変わらない。それならせめて、最後のわがままくらい、いいだろう。

 柚葉は泣かないように、深呼吸をして高ぶる心を落ち着かせる。

 それから、死の運命について話した。

 疑うことなく、頷いて相槌を打ちながら、ライヤは真剣に話を聞いてくれた。


「そういうことだけど、でも、不思議と怖くないんだ」


 いいや、怖いに決まってる。いくら覚悟ができていても、死に対する恐怖は消えない。

 だがライヤを心配させないために、嘘をついた。


「俺は、怖かったぜよ」

「え?」


 フレア湖の水面に向けた眼差しは、どこか遠くを見ていた。

 らしくないライヤの言葉に、思わず目を見開いた。


「死の恐怖に晒される毎日は、生きた心地がしなかったぜよ。俺は、国王の座なんて、まったく興味もなかったんじゃ。ただ、奴と仲良くなれればよかったんじゃよ。それなのに、母さんのせいで、あんな――」


 拳を地面に叩きつける。

 それは、怒りや悲しみなど、負の感情がこもっていた。


「すまんな、お前さんの話を聞かなきゃいかんのに、つい」

「ううん、私、ライヤの話を聞きたい。ライヤのこと、もっと知りたいよ」


 ライヤが人の前で過去を、心情を晒したのは、初めてだった。

 どうして、柚葉の前でこんな話をしてしまったのだろうかと考えても、もう遅い。

 だが、彼女は「知りたい」と言ってくれた。それが素直に嬉しいと、思ってしまった。


「とにかく、俺には嘘つかんでほしい。柚葉が笑っていられるよう、俺が守るからの」

「ありがとう、ライヤ。その言葉で、十分だよ」

「なんじゃ、俺は口だけの男か? 他にも、方法はあるはずじゃ」


 ライヤは自分の話を止め、立ちあがった。

 リウム洞窟で誓ったことを、実行するために。

 この力を使って、柚葉を守ると。誰も傷つけない方法は、きっとある。


「……うん、私、我儘だけれど、まだ生きたい」


 涙を流しながら、笑った。

 ライヤがそう言ってくれるから、本当にあると思えてきた。

 一人で悶々と悩んでいた日々が嘘のように、今はポジティブに考えられる。


「もっと我儘に生きんしゃい、柚葉」


 差し伸べる手をとり、片手で尻についた草を払いながら、立ちあがる。

 大げさに頷くと、柚葉はその大きな手を離すことなく、温もりを感じながら皆のもとに戻る。


「あのね、ライヤが笑っていられるように、私も守るから」

「……柚葉、ありがとな」


 結局、ライヤの悩みについては深く聞けなかった。

 聞くのではなく、ライヤが自分から話してくれるの待つことにした。


 柚葉は、あのとき無言でかわした言葉のようになりたいと考えている。

 ライヤと共にいたいと、望んでいる。

 どうなるかはわからないが、どんなときも彼を支えることを、心に誓う。

 

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